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「ロシアの旅」(11) 廃墟の教会

投稿者: k_g_y_007_naoko 投稿日時: 2009/02/08 21:40 投稿番号: [48963 / 73791]
「ロシアの旅」(11)   廃墟の教会

また、赤煉瓦の建物が両側に続く通りにでました。人けのない通りは、ひっそりと静まりかえっていて、くすんだ赤煉瓦と並木の緑がしっとりとした雰囲気を漂わせています。「異国に来たんだ。ロシアの街を歩いているんだ」という旅情が私の心にふたたびよみがえってきました。

しばらく歩くと、ひときわ高くそびえる木造の建物が見えてきました。てっぺんが葱坊主みたいな、玉葱みたいな大小の塔がいくつかある建物でした。高い板塀に囲まれてひっそりとたたずんでいます。古い教会のようです。

写真やテレビで見たことがあるロシア正教の教会のようでしたが、でも色彩がまったくなく、古ぼけたむくの木肌をさらしていて、ところどころ朽ちています。塔の屋根の鈴なりに貼り付いている小さな板片も、いくつかはがれています。敷地を囲っている板塀の一枚がゆるくなって隙間が空いていたので、私はそこから中をのぞき込んで唖然としてしまいました。建物の周囲には雑草が生い茂り、ゴミもいたるところに散乱していたのです。そして、入口らしき箇所は板で厳重に閉鎖されています。

「誰も手入れしてないのかしら...。日本ならさしずめ文化財として管理するのに...」
と思いながら、しばらく中を覗いておりましたが、急に写真が撮りたくなって塀の隙間をこじ開けて中へ入り込もうとしたら、彼に止められました。
「お願い、写真を撮るだけだから...」
そう言って彼にカメラを見せると、両手をおおげさに広げて「しかたがない」といった表情です。

何枚か写真を撮って戻ると、彼は塀の外で誰かこないか見張るように立っておりました。私たちはまた歩き出しましたが、彼はいかにもつまらなそうです。どうしてこんなところを歩かなきゃいけないんだ、とでも言いたげな顔です。
「ごめんなさい。観光の名所や有名な建物も見たいんですけど、私、こいうところも好きなんです。生活の臭いがするところが好きなんです」
「へえ〜、変わってるね」
彼が不思議そうな顔してそう言ったので、
「だって、あなたにとっては普段生活しているところだから、何も特別じゃないでしょ。でも、私には特別なの。私の町、日本とはまったく違うんですからね!」
わざと半分怒ったような口調でそう言うと、
「ごめん、ごめん、そうだったね」
彼は、照れ笑いを浮かべました。

「そうだ、ちょっとこっちへ行ってみないかい?」
彼は思い出したかのようにそう言うと、私を反対側の脇道へと誘いました。

<続きます>

直子
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