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伊藤博文

投稿者: hendazo04 投稿日時: 2009/11/28 13:22 投稿番号: [158 / 178]
「伊藤博文は普通、その追悼文の中で、日本のもっとも偉大な政治家の一人であったと称えられている。しかし、このような見方は、故人にとって正しいものではない。もっとも偉大なうちの一人ではなく、かれこそは、その国で比肩するもののない、最大の政治家なのである。(中略)
彼は天性目立たない、落ち着いた人柄であった。彼が、高位高官の金ピカ服を身につけるのは、本当に止むを得ないときだけで、すぐさまそれを、くつろいだ和服か背広に着替えてしまうのであった。事実、彼の幾多の言動から、彼が外見的なもの一さい無頓着であったことは、疑う余地がない。それならばこそ、自国や諸外国から数多く受けた名誉表彰も、彼の人柄にはなんら影響を及ぼさなかった。侯爵としての伊藤も、個人的な交際では、筆者が三十年前に初めて知ったときの平民伊藤と全く同じで、素朴な、いつも機嫌の良い人物であった。
しかも、彼はこの幸せな気質、その平静さを、どんな場合でも決して失うことはなかった。

日清戦争の最中の、責任の重い日々であろうと、日露開戦前の、苦悩に満ちた交渉時代であろうと、あるいはまた官職を離れた当時であろうと、かれはいつ会っても、まるで心配を知らない人間のように、微笑をたたえて、冗談をとばすのであった。かれは酒と、女と、タバコを好んだ。しかもかれは、あえてそれを隠そうとはしなかった。かれは言ったー一体君たちは、わしにどうしろというのだ?日々のめんどうな政務をおえた後で、頭ががんがんするとき、しゃちほこ張った召使よりも、きれいな「芸者」の手から傾ける晩酌は、わしにとって、はるかにうまいではないかーと」

エルヴィン・ベルツ   「伊藤博文をしのぶ」   岩沼文庫1955
ドイツの医学者。「日本近代医学の父」といわれた。
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