「ロシアの旅」(16) - 嫉妬
投稿者: k_g_y_7_234 投稿日時: 2006/06/25 16:18 投稿番号: [75825 / 95793]
ナターシャの指は、ほっそりと長く、そして真っ白でした。真っ赤なマニキュアだけが昨夜のなごりをとどめています。
ナターシャと軽く握手していると、両手にアイスクリームを持った若い女性が私たちのところにやってきました。ジーンズのミニスカートをはいた栗毛色のボーイッシュな髪の女性です。彼女は、ひとつをナターシャに渡すと、私を怪訝そうにチラッと見てから、何も言わずにイワノフの腕を引っ張って向こうへ行きます。そして、なにやら真剣な顔でイワノフと話しはじめました。
「イワノフのガールフレンドよ。とっても焼餅やき屋さんなのよ」
ナターシャは、私の耳元でそうささやくと、さもうれしそうにニコニコしています。ナターシャのこの言葉に、私は耳元まで赤くなるのを感じました。日舞の発表会でも観客席の級友と目があうと、すぐに顔中ほてってしまいます。そんな心境です。不思議です。剣道の試合では、こうなることはありません。
お話が終わったらしく、二人は私たちのところにやってきて、女性はぎこちなさそうな笑顔で私に握手を求めてきました。
「紹介するよ、友達のアニア」
それからイワノフは、アニアにロシア語で「・・・ナオコ」と言っています。
「ズドラーストヴィ..、ナオコ?」
「Yes.. how do you do..」
私の挨拶もきっとぎこちなかったと思います。アニアは、英語ができないようです。イワノフがまたしきりにロシア語でアニアに説明しています。
「君が高校一年生には見えないって、アニアが言ってるよ..」
イワノフのその説明に、私はわざと日舞で使ういたずらっぽい視線でアニアに会釈しました。するとアニアは、今度は照れくさそうな笑顔を浮かべて私に会釈してくれました。彼女は、ナターシャより背が少しばかり低く、がっしりした体つきですが、ミニスカートから伸びている脚はナターシャに劣らず見事にスラリとしています。二人が並んで歩くと、周囲からひときわうかびあがっていて、すれ違う若い男性たちの視線を集めていました。特にナターシャは、昨夜ホテルのバーで見せていたケバケバしいお化粧の蝋人形さんのような表情とはうってかわって、どことなく気品が漂うすっきりとした笑顔です。「娼婦かしら?」と勝手に想像していた私は、とてもはずかしくなりました。ものすごい変身です。イワノフは、すっかりアニアに捕まっていて、それに気付いたのか、今度はナターシャが私のそばにきて「日本のどこから来たの?」、「イルクーツクにはいつまでいるの?」、「このあとどこへ行くの?」とか、しきりに聞いてきました。
アイスクリームを食べながらひととおりお店を覗いて歩きましたが、結構閉まっているお店があって、私が不思議そうに見ていると、
「夕方になると、ここはもっとにぎやかよ」
ナターシャが説明してくれました。「ああ、まだお昼前だからなんだ..」ふとそう思いながら腕時計を見ると、もう十一時近くです。「大変..」と思って、イワノフに時計を見せると、
「なんだい、ホテルまでまた歩いて帰るのかい?」
「えっ?」
イワノフは、半分からかうような笑顔でそう言うと、
「車で送っていくから心配しないでいいよ。アニアが車で来ているから..」
そう言って、イワノフは私の肩に手を回してポンポンたたきます。でも、そばでアニアがこれをジッと見ておりました。
「これ、日本製?」
「えっ?」
ナターシャが、私の髪留めをしきりに見ているところでした。そんなナターシャにイワノフがロシア語で説明しているらしく、今度はアニアも私のそばにきて髪留めを見ています。
「彼女たちがあの店に行きたいって、帰り道だからいいかい?」
「ええ..」
イワノフは、じゃあ行こうとばかりに彼女たちをうながすと、今来た道を先頭にたって戻りはじめました。
例の黒い歯の男は、数人のお客さんを相手にしていましたが、私たちがやってくるのに気付くと、あわてるようにしてお店の裏戸から出てきました。手にはスケッチブックのようなものを持っています。
<後日に続きます>
直子
ナターシャと軽く握手していると、両手にアイスクリームを持った若い女性が私たちのところにやってきました。ジーンズのミニスカートをはいた栗毛色のボーイッシュな髪の女性です。彼女は、ひとつをナターシャに渡すと、私を怪訝そうにチラッと見てから、何も言わずにイワノフの腕を引っ張って向こうへ行きます。そして、なにやら真剣な顔でイワノフと話しはじめました。
「イワノフのガールフレンドよ。とっても焼餅やき屋さんなのよ」
ナターシャは、私の耳元でそうささやくと、さもうれしそうにニコニコしています。ナターシャのこの言葉に、私は耳元まで赤くなるのを感じました。日舞の発表会でも観客席の級友と目があうと、すぐに顔中ほてってしまいます。そんな心境です。不思議です。剣道の試合では、こうなることはありません。
お話が終わったらしく、二人は私たちのところにやってきて、女性はぎこちなさそうな笑顔で私に握手を求めてきました。
「紹介するよ、友達のアニア」
それからイワノフは、アニアにロシア語で「・・・ナオコ」と言っています。
「ズドラーストヴィ..、ナオコ?」
「Yes.. how do you do..」
私の挨拶もきっとぎこちなかったと思います。アニアは、英語ができないようです。イワノフがまたしきりにロシア語でアニアに説明しています。
「君が高校一年生には見えないって、アニアが言ってるよ..」
イワノフのその説明に、私はわざと日舞で使ういたずらっぽい視線でアニアに会釈しました。するとアニアは、今度は照れくさそうな笑顔を浮かべて私に会釈してくれました。彼女は、ナターシャより背が少しばかり低く、がっしりした体つきですが、ミニスカートから伸びている脚はナターシャに劣らず見事にスラリとしています。二人が並んで歩くと、周囲からひときわうかびあがっていて、すれ違う若い男性たちの視線を集めていました。特にナターシャは、昨夜ホテルのバーで見せていたケバケバしいお化粧の蝋人形さんのような表情とはうってかわって、どことなく気品が漂うすっきりとした笑顔です。「娼婦かしら?」と勝手に想像していた私は、とてもはずかしくなりました。ものすごい変身です。イワノフは、すっかりアニアに捕まっていて、それに気付いたのか、今度はナターシャが私のそばにきて「日本のどこから来たの?」、「イルクーツクにはいつまでいるの?」、「このあとどこへ行くの?」とか、しきりに聞いてきました。
アイスクリームを食べながらひととおりお店を覗いて歩きましたが、結構閉まっているお店があって、私が不思議そうに見ていると、
「夕方になると、ここはもっとにぎやかよ」
ナターシャが説明してくれました。「ああ、まだお昼前だからなんだ..」ふとそう思いながら腕時計を見ると、もう十一時近くです。「大変..」と思って、イワノフに時計を見せると、
「なんだい、ホテルまでまた歩いて帰るのかい?」
「えっ?」
イワノフは、半分からかうような笑顔でそう言うと、
「車で送っていくから心配しないでいいよ。アニアが車で来ているから..」
そう言って、イワノフは私の肩に手を回してポンポンたたきます。でも、そばでアニアがこれをジッと見ておりました。
「これ、日本製?」
「えっ?」
ナターシャが、私の髪留めをしきりに見ているところでした。そんなナターシャにイワノフがロシア語で説明しているらしく、今度はアニアも私のそばにきて髪留めを見ています。
「彼女たちがあの店に行きたいって、帰り道だからいいかい?」
「ええ..」
イワノフは、じゃあ行こうとばかりに彼女たちをうながすと、今来た道を先頭にたって戻りはじめました。
例の黒い歯の男は、数人のお客さんを相手にしていましたが、私たちがやってくるのに気付くと、あわてるようにしてお店の裏戸から出てきました。手にはスケッチブックのようなものを持っています。
<後日に続きます>
直子
これは メッセージ 75430 (k_g_y_7_234 さん)への返信です.
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