菜食主義の猫(村上春樹1Q84より)
投稿者: akkxgfm55f 投稿日時: 2009/07/25 16:12 投稿番号: [57906 / 63339]
一匹のネズミが屋根裏で、大きな雄猫に出くわした。ネズミは逃げ場のない片隅に追いつめられた。ネズミは震えながら言った、「猫さんお願いです。私を食べ ないで下さい。家族のところに帰らなくちゃならないんです。子供たちがお腹をすかせて待っています。どうか見逃して下さい」。猫は言った、「心配しなくて いいよ。おまえを食べたりしない。実を言うと、大きな声じゃ言えないが、俺は菜食主義なんだ。肉はいっさい食べない。だから俺に出会ったのは、幸運だった よ」。ネズミは言った、「ああ、なんて素晴らしい日なんだろう。なんて僕は幸運なネズミなんだろう。菜食主義の猫さんに出会うなって」。しかし次の瞬間、 猫はネズミに襲いかかり、爪でしっかりと身体を押さえつけ、鋭い歯をその喉に食い込ませた。ネズミは苦しみながら最後の息で猫に尋ねた、「だって、あなた は菜食主義で肉はいっさい食べないって言ったじゃありませんか。あれは嘘だったんですか」。猫は舌なめずりをしながら言った、「ああ、俺は肉は食べない よ。そいつは嘘じゃない。だからおまえをくわえて連れて帰って、レタスと交換するんだ」。
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