捕鯨とクジラ保護

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間引き必要説の大ウソ

投稿者: capt_paul_watson 投稿日時: 2008/05/26 12:21 投稿番号: [28260 / 63339]
日本では、南極海でいつまでたっても個体数が増加に転じる兆しが見えないシロナガスクジラなどの大型ヒゲクジラ類を回復させるためには、ミンククジラを間引かなければならないということがまことしやかに喧伝されています。
  この仮説は、大型鯨類の減少によって生じたニッチの空白がミンククジラによって占められたという前提に基づいています。が、果たして実際のところはどうなのでしょうか?
  まず、それぞれの種の増減の因果関係を具体的に立証するのは非常に困難です。主にコンピューター技術の飛躍的な向上に伴い、今日では数理生態学の分野が目覚しい進歩を遂げ、生物種の動態に関する各種の数理モデルが扱われるようになりました。しかし、これらは扱うパラメーターを少数種間の捕食・競合関係に絞った近似的シミュレーションであって、現実の生態系については多少もっともらしい説明がつけられるようになったというレベルに過ぎず、将来予測・野生生物の保護管理への応用が可能な段階には至っていません。生態系の変動に関して考慮すべき要素はあまりに複雑なうえに未解明な部分も多く、化学や工学、あるいは気象学・地震学の分野におけるコンピューター・シミュレーションと同水準の結果と精度を求めることは無理な相談なのです。
  南半球産ミンククジラの個体数については、IDCR(国際鯨類探査十ヵ年計画)によって1990年までに導き出された76万頭という数字がありますが、前後で統計的に増減を比較できるデータがありません。カドミウム汚染の項でも触れた性成熟年齢の低下というのは一種の状況証拠ですが、ミンククジラのほか、個体数が大幅に減少したナガスクジラなどでも報告されています(注:この"状況証拠"については1997年度のIWC科学委においても一応認められています)。また、オキアミにもいくつか種類があり、カイアシ類など他の動物プランクトンも含め、ヒゲクジラ類の中でもそれぞれの種によって対象となる餌の種類に差があります。同じオキアミの捕食者でも、鰭脚類や海鳥類は増加した一方、魚類は若干減少したとみられ、これはオキアミ以外に魚も捕食するこれらの大型捕食者の増加に起因すると考えられます。
  もう一つ、この仮説にまったく欠けているのは、大型ヒゲクジラ類の減少がどのようにしてもたらされたのか?という視点と説明です。そこにはむしろ因果関係の転倒さえうかがえます。事実をいえば、シロナガスクジラなどを減少させたのはあくまでも商業捕鯨による乱獲です。ミンククジラではありません。"海のゴキブリ"などという呼称まで持ち出して、商業捕鯨の適正管理に対して責を負っていたはずの鯨類学界の無能を一切省みることなく、あたかもミンククジラが悪者であるかのように吹聴する姿勢には憤りを覚えずにはいられません。性成熟年齢に達するまでに少なくとも七年以上、一産一子で繁殖サイクルも最低一年のゴキブリなどどこにもいやしませんからね。そんなこといったら、哺乳類の99%はゴキブリ以上(ノミ並?)になっちゃいますよ(汗)   そんなことを言う輩は生物学者の風上にも置けません。
  因果関係に関する正しい説明を続けましょう。シロナガスクジラなどが捕鯨によって壊滅的な打撃を受け、回復がほとんど不可能なまでに個体数を激減させられたがために、空白となったニッチがミンククジラ(一部イワシクジラなども)、カニクイアザラシやミナミオットセイなどの鰭脚類、ペンギン、魚類その他のオキアミ捕食者(この下線の部分が捕鯨擁護派の主張では"省略"されているところがポイントです)によって、埋め合わされたと考えられるのです(ミンクを含めあくまで証明はできませんが)。逆ではありません。南半球のシロナガスクジラは、南極の海に捕鯨船が闖入してくるわずか一世紀前までは少なくとも現在のミンククジラと等しい(バイオマスで見ればはるかに多い)ケタの個体数が生息していました。人間の管理がなければ回復できないのであれば、過去百万年の間にとっくに激減・絶滅していたはずですが、実際には、ミンククジラや他の繁殖力の高い競合種の海棲動物と間違いなく共存できていたのです。にもかかわらず、現在回復がままならないのは、そもそも個体数の大幅な減少そのものが繁殖に著しい支障をきたしているからだと推測できます(前項で述べたとおり、陸上の大型哺乳類において知られているように、繁殖に関わる密度依存的な社会行動の変調がその大きな理由だと考えられます)。そのような状態にまでクジラたちを追い詰めた人間が「南極海の生態系を管理できる/しなければならない」などと嘯くのはおこがましいにもほどがあります。
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