捕鯨と汚染_1
投稿者: capt_paul_watson 投稿日時: 2008/05/23 08:48 投稿番号: [27584 / 63339]
「捕鯨と汚染」といえば、沿岸の捕鯨基地での解体によって流れ出る血液が内湾の汚染や富栄養化によって漁場環境の悪化を呼んだり、解体後の骨や内臓の一部などを海中に不法投棄したり、捕鯨母船の解体処理に伴う同様の汚染などもありますが、ここで採り上げるのはそれらとはまた別の問題です。
大型種を次々と獲り尽くしていった商業捕鯨の最後のターゲットとなり、現在日本が調査捕鯨の形で捕獲を進めている南半球産ミンククジラから、高濃度のカドミウムが検出され、その年級群別の汚染濃度の推移が興味深い観測を呼んでいます。
まず、人為的な汚染の度合が低いはずの南極海のヒゲクジラで高濃度の汚染が発覚した背景には、カドミウムの生物蓄積の特異性があります。南極海は、深層に溜まった高カドミウム水が巻き上げられる湧昇流域であり、ミンククジラがほぼ100 %依存している餌生物のナンキョクオキアミはカドミウムを高度に蓄積します。環境からの摂取が一定の割合であれば、鯨類のカドミウムの体内濃度は年齢とともに増加していくはずですが、南氷洋ミンククジラの場合だけ、15〜20齢(捕獲時)以後のあたりで濃度の減少が見られます。つまり、この年齢より若い年級群から重金属の蓄積率がそれ以前より上昇したことがわかります。生物中の重金属の代謝に関しては、一定濃度に達すると腎臓での処理能力の限界を越え腎障害につながることがわかっています。現実に、肝臓のカドミウム濃度が20ppm 以上で腎臓のそれを上回っている個体が見つかっており、腎障害に至っていた疑いが持たれています。
汚染源として挙げられるのは、まず南極大陸上の設営基地での有害物質を含む未処理廃水の垂れ流しやゴミ焼却です。中には、自国の基準値をはるかに上回る濃度の有害物質が排出されていたケースもあったようです。南極での越冬は19世紀末に始まりましたが、戦後各国の基地建設が大陸沿岸を中心に次々と進み、現在では20ヵ国が常設、夏季のみ、閉鎖中を合わせ百ほどの基地を設けています。越冬する研究者の人数も千人を越え、最大の米国マクマード基地は一都市並の規模を呈しています。監視の目が届かない状態で、生体中へ移行しやすいカドミウムの排出が何年もずっと継続され、もともと高水準にある南極海の生物圏へ付加されていたとしたら、それがミンククジラの体内蓄積に拍車をかけて障害を引き起こすレベルに至ったということも考えられなくはありません。(注:'91年以降は一応「南極環境議定書」により、南極における基地活動に関する制限や環境アセスメント、損害賠償等について規定が設けられています)
もうひとつは、人為的な排出が原因なのではなく、商業捕鯨による生態系のかく乱が汚染と同等の効果をもたらしたというものです。ちょうどこの年級の前後からミンククジラの摂餌量が増加したため、餌生物中に含まれる重金属の蓄積量の増加を招いたのではないかとの推測も成り立ちます。これは、餌のオキアミ中のカドミウム含有量が変わらないと仮定した場合、濃度から逆算して、体重当り摂餌率が1.5 倍に増加したと考えれば説明がつくといいます。南半球産ミンククジラに関しては、性成熟年齢の低下(雌で1940年代の12歳から70年代の7〜8歳へ)と成熟体長の大型化傾向が示されています。商業捕鯨により大型ヒゲクジラ類が壊滅的な打撃を受けたため、2億トンはあったと考えられる年間のオキアミ摂餌量は1/5ほどに減少し、余剰分が他のオキアミ捕食者群:鰭脚類やペンギンを含む海鳥類、頭足類などに分配されたと考えられます。実際、ミナミオットセイやカニクイアザラシなどの個体数は明らかに増加しました。捕鯨によるダメージの比較的少なかったミンククジラにとっても摂餌環境が良好化した可能性はあります。しかし・・・競合相手がいなくなって餌を入手しやすくなったとしても、そのために有害物質の蓄積が速まって障害に結びついていたとすれば、とうてい環境が"良好化"したとはいえません。
大型種を次々と獲り尽くしていった商業捕鯨の最後のターゲットとなり、現在日本が調査捕鯨の形で捕獲を進めている南半球産ミンククジラから、高濃度のカドミウムが検出され、その年級群別の汚染濃度の推移が興味深い観測を呼んでいます。
まず、人為的な汚染の度合が低いはずの南極海のヒゲクジラで高濃度の汚染が発覚した背景には、カドミウムの生物蓄積の特異性があります。南極海は、深層に溜まった高カドミウム水が巻き上げられる湧昇流域であり、ミンククジラがほぼ100 %依存している餌生物のナンキョクオキアミはカドミウムを高度に蓄積します。環境からの摂取が一定の割合であれば、鯨類のカドミウムの体内濃度は年齢とともに増加していくはずですが、南氷洋ミンククジラの場合だけ、15〜20齢(捕獲時)以後のあたりで濃度の減少が見られます。つまり、この年齢より若い年級群から重金属の蓄積率がそれ以前より上昇したことがわかります。生物中の重金属の代謝に関しては、一定濃度に達すると腎臓での処理能力の限界を越え腎障害につながることがわかっています。現実に、肝臓のカドミウム濃度が20ppm 以上で腎臓のそれを上回っている個体が見つかっており、腎障害に至っていた疑いが持たれています。
汚染源として挙げられるのは、まず南極大陸上の設営基地での有害物質を含む未処理廃水の垂れ流しやゴミ焼却です。中には、自国の基準値をはるかに上回る濃度の有害物質が排出されていたケースもあったようです。南極での越冬は19世紀末に始まりましたが、戦後各国の基地建設が大陸沿岸を中心に次々と進み、現在では20ヵ国が常設、夏季のみ、閉鎖中を合わせ百ほどの基地を設けています。越冬する研究者の人数も千人を越え、最大の米国マクマード基地は一都市並の規模を呈しています。監視の目が届かない状態で、生体中へ移行しやすいカドミウムの排出が何年もずっと継続され、もともと高水準にある南極海の生物圏へ付加されていたとしたら、それがミンククジラの体内蓄積に拍車をかけて障害を引き起こすレベルに至ったということも考えられなくはありません。(注:'91年以降は一応「南極環境議定書」により、南極における基地活動に関する制限や環境アセスメント、損害賠償等について規定が設けられています)
もうひとつは、人為的な排出が原因なのではなく、商業捕鯨による生態系のかく乱が汚染と同等の効果をもたらしたというものです。ちょうどこの年級の前後からミンククジラの摂餌量が増加したため、餌生物中に含まれる重金属の蓄積量の増加を招いたのではないかとの推測も成り立ちます。これは、餌のオキアミ中のカドミウム含有量が変わらないと仮定した場合、濃度から逆算して、体重当り摂餌率が1.5 倍に増加したと考えれば説明がつくといいます。南半球産ミンククジラに関しては、性成熟年齢の低下(雌で1940年代の12歳から70年代の7〜8歳へ)と成熟体長の大型化傾向が示されています。商業捕鯨により大型ヒゲクジラ類が壊滅的な打撃を受けたため、2億トンはあったと考えられる年間のオキアミ摂餌量は1/5ほどに減少し、余剰分が他のオキアミ捕食者群:鰭脚類やペンギンを含む海鳥類、頭足類などに分配されたと考えられます。実際、ミナミオットセイやカニクイアザラシなどの個体数は明らかに増加しました。捕鯨によるダメージの比較的少なかったミンククジラにとっても摂餌環境が良好化した可能性はあります。しかし・・・競合相手がいなくなって餌を入手しやすくなったとしても、そのために有害物質の蓄積が速まって障害に結びついていたとすれば、とうてい環境が"良好化"したとはいえません。
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