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人間の、この地球上のサバイバルの可能性

投稿者: discover_300 投稿日時: 2008/05/23 01:29 投稿番号: [27559 / 63339]
http://www.animismonline.com/2007/01/post_23.html

イルカ博士として高名なジョン・C・リリィ博士ではあるが、残念なことに博士のイルカ博士たる著作を目にするためには古書店に足しげく通うか、原書にあたるしかなかった。(もっとも博士の人間追及の著作「サイエンティスト」、「意識の中心」などからある程度垣間見ることはできた。)。この「イルカと話す日」は今から16年前、1978年に出版された「Communication Between Man & Dolphin」の待望の邦訳である。イルカとの異種間コミュニケーションを謳った「Man and Dolphin」(1961年、学習研究社・絶版)、姉妹篇「The Mind of the Dolphin:A Nonhuman Intelligence」(1967年、未邦訳)に続いて出版されたこの一冊は、1955年から始められた、博士の膨大なイルカ研究の実態を具体的に知ることができる歴史的な著作といえる。本書に収められた豊富で貴重な図版やデータは我々の常識をいとも簡単に覆してしまう。イルカ・クジラを「脳」を手がかりに認識しようという博士の試みは、科学者、研究者の資質や資格、心構え(=生態系の一員としての自覚を持った科学的観察者)やイルカ・クジラをも範疇に加えた新しい法律の制定、イルカ・クジラの権利、イルカ・クジラとのコミュニケーション成功後の社会、産業にまで広がりを見せる。多くの哲学者や詩人、ナチュラリストが試みたアプローチを、あくまでも科学者という立場で貫こうとした博士の意気込みが今なお感じとれる。出版当時に博士が確信した異種間コミュニケーションは現時点では未だ現実のものとはいえないが、博士が今なおゆるぎない確信を持ち続け、その実現に楽観的な見通しを持ち続けていることにこそ、この「イルカと話す日」という著作の今における真価がある。博士は本書の中で、きわめて科学的=論理的(まるでバルカン人のよう)に、「脳」を手がかりにイルカ・クジラを追及し、人間とのコミュニケーションについて探求している。言い換えれば、そのことはそのまま、人間を追及することであり、生命を追及することでもある。本書の中で博士が繰り広げている異生物と人間(他者と自己)に関する展開は、「イルカ・クジラは賢い」「イルカ・クジラは可愛い」といった簡単な感想を持たせてはくれない。現在巷間を賑わしている、いわゆる「イルカ・ブーム」とは本質的に異なる、より求心的なベクトルが本書の中にはある。我々は自己に対して、また同様に他者に対して、もはや「他力本願」ではいられない。LSDに代表される向精神薬における体験や、野性生物との遭遇、信じられないような自然体験、伝統宗教における身体行、ビジョン・クエストなどのネイティブ・ピープルの儀式などは本来、「自分がこの宇宙の中で決して特別ではなく、他の生命とまったく等しい一つの生命である」ことを知るための技法だったはずである。しかし、そういった体験が逆に「自分は特別である」という思いを強くさせてしまいかねない恐れのある今こそ、こういった一冊が広く読まれることを願う。博士は本書の中で、「人間がついにブレークスルー(限界の打破)を達成し、高度な知性を持つ、地球上の別の生命とコミュニケーションを交わすようになった」近未来を想定している。そのわくわくするような未来は、まさしく全員が勝者のゲームのように思える。イルカ・クジラも、人間も、他のすべての生物も、環境も、精神も、すべてにとって有益な未来のように私には思える。続けて博士は言う、「人間の将来像と、この地球上のサバイバルの可能性については、以上述べたような未来像が、もっとも実現の可能性が高いと著者には思えるのである。こうした構想を持たないかぎり、人間は現在の生き方を改めることができないだろう。人間の科学、技術、社会はますます独善的な傾向を強め、自分以外の生物や、現在の生き方以外の生き方について考えなくなるだろう。人間が空の星に目を向けるようになり、地球上の人間以外の生物に注目するようになれば、視野が広がり、その科学はいっそう充実し、その哲学は、本来の宇宙と調和したものになるだろう。」と。この言葉こそがすべてを語っているように私には思える。地球は決して人間のものなどではないし、イルカ・クジラも人間にとっての海洋資源、観光資源などではない。博士の描く近未来は、生命の輝きに溢れたネオ・アニミズムともいえるような時代なのではないかと、私は思う。(スタジオヴォイスVOL227   1994)
Posted at 2007年01月22日 21:18
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