イラク外国軍撤退の効用は
投稿者: dorawasabi5001 投稿日時: 2006/11/27 00:35 投稿番号: [98714 / 118550]
朝日新聞から〜
★「国際情勢】外国軍撤退の効用は
酒井啓子(東京外語大学大学院教授)
ブッシュ政権のイラク戦争の失敗を追及して、中間選挙に勝った米民主党。「イラクはチョー悲惨」と、戦後イラクの混乱を認めたブレア首相。何を今さら、自分のことを棚に上げて他人事みたいによく言うよ――。
そう怒り呆(あき)れ果てるのが、戦後のイラクに対する米英の無責任姿勢だ。
撤退論が出ると必ず反論として指摘されるのが、「でも外国軍がいなくなったらイラクは宗派、民族間が無差別に殺しあって、もっと悲惨になるのでは」論だ。本当にそうなのか。
外国軍がいても、宗派対立を止められていない。
それにイラク国内の衝突を見ると、実は無差別に殺しあっているのでもなさそうだ。
イラク戦争以来、イラク人民間人の被害をこつこつと数えているNGO「イラク・ボディカウント」によれば、今年になって11月初めまでに発生したイラク人死亡事件は、約2200件ある。もちろん、報道などで確認されたものだけなので、実態は何倍、何十倍にものぼる。
そのうち、明らかに米軍をターゲットにした事件は5%強で、去年以前と比較して減っていることは確かだ。
その分宗派対立が増えていて、だからイラクはほっといたら宗派対立が激化するのだ、という議論になりがちだが、実は「シーア派」とか「スンニ派」とかを前面に押し出した攻撃は、増えた今でもそれぞれ全体の5%弱でしかない。
【実は攻撃対象として一番多いのはイラク警察で、全事件の3割弱を占める。】
攻撃方法を見ても、「イラク=自爆テロ」のイメージがあるが、実は自爆はせいぜい4%程度で、件数としては少ない。
逆に圧倒的に多いのが、銃殺や銃撃。最近は身元不明の銃殺死体が発見されることが増えているが、銃撃事件の多くは対象がはっきりしている。
そこで被害にあうのは、対立する政党の幹部だったり政府職員、旧バース党員など。
アルコールを販売する店や床屋が襲撃されるのは、イスラム系民兵の「風紀取り締まり」だ。
銃撃に続いて多いのは、路上などへの仕掛け爆弾だが、こちらは専ら米兵、イラク治安警察を狙う。
つまり、無差別テロが横行すると見えるイラクでも、よく見るとそれぞれ攻撃対象をきちんと絞っていて政治権力を巡る対立が複数交錯している。
【イラクで荒れ狂っているのは、「政府」対「反政府」の戦闘なのだ。】
その根幹にあるのは、いまだに「米軍とそれが支えるイラク政府・軍」という構造である。
マリキ政権は既に、外国軍からの早期の治安権限移譲を主張している。外国勢力から距離を置かなければ反政府側からの攻撃をやめさせられないからだ。
外国軍撤退で、すぐ事態がよくなるとは思えない。
だが、反政府側の攻撃理由を減らす環境ぐらいは作れるだろう。イラクの内戦は、イラク人のDNAに組み込まれたものではなく、政治環境によって変わりうる対立なのだ。だから他人事じゃないのよ。
http://www.be.asahi.com/20061125/W12/20061120TBEH0011A.html
★「国際情勢】外国軍撤退の効用は
酒井啓子(東京外語大学大学院教授)
ブッシュ政権のイラク戦争の失敗を追及して、中間選挙に勝った米民主党。「イラクはチョー悲惨」と、戦後イラクの混乱を認めたブレア首相。何を今さら、自分のことを棚に上げて他人事みたいによく言うよ――。
そう怒り呆(あき)れ果てるのが、戦後のイラクに対する米英の無責任姿勢だ。
撤退論が出ると必ず反論として指摘されるのが、「でも外国軍がいなくなったらイラクは宗派、民族間が無差別に殺しあって、もっと悲惨になるのでは」論だ。本当にそうなのか。
外国軍がいても、宗派対立を止められていない。
それにイラク国内の衝突を見ると、実は無差別に殺しあっているのでもなさそうだ。
イラク戦争以来、イラク人民間人の被害をこつこつと数えているNGO「イラク・ボディカウント」によれば、今年になって11月初めまでに発生したイラク人死亡事件は、約2200件ある。もちろん、報道などで確認されたものだけなので、実態は何倍、何十倍にものぼる。
そのうち、明らかに米軍をターゲットにした事件は5%強で、去年以前と比較して減っていることは確かだ。
その分宗派対立が増えていて、だからイラクはほっといたら宗派対立が激化するのだ、という議論になりがちだが、実は「シーア派」とか「スンニ派」とかを前面に押し出した攻撃は、増えた今でもそれぞれ全体の5%弱でしかない。
【実は攻撃対象として一番多いのはイラク警察で、全事件の3割弱を占める。】
攻撃方法を見ても、「イラク=自爆テロ」のイメージがあるが、実は自爆はせいぜい4%程度で、件数としては少ない。
逆に圧倒的に多いのが、銃殺や銃撃。最近は身元不明の銃殺死体が発見されることが増えているが、銃撃事件の多くは対象がはっきりしている。
そこで被害にあうのは、対立する政党の幹部だったり政府職員、旧バース党員など。
アルコールを販売する店や床屋が襲撃されるのは、イスラム系民兵の「風紀取り締まり」だ。
銃撃に続いて多いのは、路上などへの仕掛け爆弾だが、こちらは専ら米兵、イラク治安警察を狙う。
つまり、無差別テロが横行すると見えるイラクでも、よく見るとそれぞれ攻撃対象をきちんと絞っていて政治権力を巡る対立が複数交錯している。
【イラクで荒れ狂っているのは、「政府」対「反政府」の戦闘なのだ。】
その根幹にあるのは、いまだに「米軍とそれが支えるイラク政府・軍」という構造である。
マリキ政権は既に、外国軍からの早期の治安権限移譲を主張している。外国勢力から距離を置かなければ反政府側からの攻撃をやめさせられないからだ。
外国軍撤退で、すぐ事態がよくなるとは思えない。
だが、反政府側の攻撃理由を減らす環境ぐらいは作れるだろう。イラクの内戦は、イラク人のDNAに組み込まれたものではなく、政治環境によって変わりうる対立なのだ。だから他人事じゃないのよ。
http://www.be.asahi.com/20061125/W12/20061120TBEH0011A.html
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