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聖火よりも人権が神聖だ 北京五輪

投稿者: lighthouse118118 投稿日時: 2008/04/04 16:59 投稿番号: [4583 / 30899]
近代五輪を提唱したクーベルタンの心臓は、五輪発祥の地であるギリシャのオリンピアに眠っている。

  そのオリンピアで、北京五輪の聖火が採火された。国家や民族を超えた「友好と平和の祭典」の始まりにもかかわらず、会場は厳戒態勢が敷かれた。

  式典の最中に、ジャーナリスト団体「国境なき記者団」(本部・パリ)のメンバー2人が乱入する騒ぎまで起きた。

  同記者団は「聖火が神聖なら、人権はもっと神聖だ」と訴え、北京五輪開会式のボイコットを各国に呼び掛けている。

  どうしてこんなことになったのか。

  発端は中国チベット自治区で起きた暴動だ。政府の統治に反対する僧侶や住民が治安部隊と衝突し、多数の死傷者が出た。騒乱は周辺の省にも広がった。

  中国政府は「国家分裂を図る企て」とし、徹底的に取り締まる構えだ。チベット仏教最高指導者のダライ・ラマ14世一派が扇動したと決めつけた。

  ダライ・ラマは、独立を求めず、文化や宗教の自由など「高度な自治」を要求しているが、中国政府は対話に応じようとしない。これに反発し、在外チベット人らが世界各地で抗議行動を起こしている。国際世論の批判も高まった。

  もともと、住民が大量に虐殺されたダルフール紛争への対応などで、人権をめぐる中国への批判はくすぶっていた。チベット暴動は、五輪ボイコット論に火が付くきっかけとなったにすぎない。

  五大陸融和を願って、5つの輪が結び合った五輪マークを考案したクーベルタンも、泉下で胸を痛めていよう。

  もちろん、採火式に乱入する無法は許されないし、抗議行動が暴力や略奪にエスカレートしてはならない。ダライ・ラマにノーベル平和賞が贈られたのは、非暴力の独立運動を貫いたからだ。

  だが、記者団のメンバーは、荒っぽい手段をとってでも、世界に知らせるべきだと考えたのだろう。それだけ、中国政府の姿勢はかたくなだということだ。

  人権に敏感な欧州では、ポーランドのトゥスク首相やドイツのメルケル首相が開会式不参加の方針だ。クーベルタンの母国フランスのサルコジ大統領も、ボイコットの可能性を示唆し、ベルギーも不参加を検討している。今後の中国の対応次第で、この動きはさらに広がろう。

  中国は「五輪の政治化」と反発する。しかし、聖火は、チベット民族の聖地チョモランマに登頂したり、独立志向が強い新疆ウイグル自治区を通ったりする。聖火リレーのテーマは「調和の旅」だ。「民族融和」を演出するための政治ショーそのものである。

  55の少数民族を抱える中国は、チベットに妥協すれば独立運動が燎原(りょうげん)の火と化すことを恐れている。だが、五輪は宣伝装置ではなく、法治と人権を尊重する「普通の国」であることを試される舞台だということを忘れてはならない。

=2008/03/31付 西日本新聞朝刊=
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