世論の熱病
投稿者: fuyusonape 投稿日時: 2005/02/15 11:40 投稿番号: [4417 / 43252]
戦争の責任者の問題
伊丹万作
『映画春秋』
昭和21年8月号より抜粋
多くの人が、今度の戦争で騙されていたという。皆が皆口を揃えて騙されていたという。私の知っている範囲ではおれが騙したのだといった人間はまだ一人もいない。ここらあたりがよくわからない。多くの人は騙したものと騙されたものとの区別は、はっきりしていると思っているようであるが、それが実は錯覚らしいのである。たとえば、民間のものは軍や官に騙されたと思っているが、軍や官の中へ入ればみな上のほうをさして、上から騙されたと言うだろう。上のほうへ行けば、さらにもっと上のほうから騙されたというにきまっている。すると、最後にはたった一人か二人の人間が残る勘定になるが、いくら何でも、わずか一人や二人の智慧で一億の人間が騙せるわけのものではない。
すなわち、騙していた人間の数は、一般に考えられているよりもはるかに多かったに違いないのである。しかもそれは、「騙し」の専門家と「騙され」の専門家とに劃然と分れていたわけではなく、いま、一人の人間がだれかに騙されると、次の瞬間には、もうその男が別のだれかをつかまえて騙すというようなことを際限なくくりかえしていたので、つまり日本人全体が夢中になつて互に騙したり騙されたりしていたのだろうと思う。
もしも我々が、真に良心的に、かつ厳粛に考えるならば、戦争責任とは、そういうものであろうと思う。私はその騙した人間の範囲を最小限に見積もったらどういう結果になるかを考えてみたい。
騙されたということは、不正者による被害を意味するが、しかし騙されたものは正しいとは、古来いかなる辞書にも決して書いてはないのである。「騙された」とさえいえば、一切の責任から解放され、無条件で正義派になれるように勘ちがいしている人は、もう一度よく顔を洗い直さなければならぬ。「騙されるということ自体がすでに一つの悪である」ことを主張したいのである。
―以下省略―
http://homepage.mac.com/ehara_gen/jealous_gay/itami_mansaku.html
今、「北」が悪い→「北」に圧力をかけろ→「北」の脅しに対抗して軍備を、といった単線思考が大流行の兆しである。安倍や中川、石破、山本といった「オボッチャマ」政治家が何の躊躇もなしに対抗意欲を亢進させている。団塊の世代より若い戦争体験のない世代の若者が彼らを心情的に支持している。戦中世代でありながら特権的な苦労知らずで育った学者たちもやたらに好戦的な言辞を吐いている。戦場経験を持たない者の戦闘意欲には歯止めがないのである。
多くの人が、今度の戦争で騙されていたという。皆が皆口を揃えて騙されていたという。私の知っている範囲ではおれが騙したのだといった人間はまだ一人もいない。ここらあたりがよくわからない。多くの人は騙したものと騙されたものとの区別は、はっきりしていると思っているようであるが、それが実は錯覚らしいのである。たとえば、民間のものは軍や官に騙されたと思っているが、軍や官の中へ入ればみな上のほうをさして、上から騙されたと言うだろう。上のほうへ行けば、さらにもっと上のほうから騙されたというにきまっている。すると、最後にはたった一人か二人の人間が残る勘定になるが、いくら何でも、わずか一人や二人の智慧で一億の人間が騙せるわけのものではない。
すなわち、騙していた人間の数は、一般に考えられているよりもはるかに多かったに違いないのである。しかもそれは、「騙し」の専門家と「騙され」の専門家とに劃然と分れていたわけではなく、いま、一人の人間がだれかに騙されると、次の瞬間には、もうその男が別のだれかをつかまえて騙すというようなことを際限なくくりかえしていたので、つまり日本人全体が夢中になつて互に騙したり騙されたりしていたのだろうと思う。
もしも我々が、真に良心的に、かつ厳粛に考えるならば、戦争責任とは、そういうものであろうと思う。私はその騙した人間の範囲を最小限に見積もったらどういう結果になるかを考えてみたい。
騙されたということは、不正者による被害を意味するが、しかし騙されたものは正しいとは、古来いかなる辞書にも決して書いてはないのである。「騙された」とさえいえば、一切の責任から解放され、無条件で正義派になれるように勘ちがいしている人は、もう一度よく顔を洗い直さなければならぬ。「騙されるということ自体がすでに一つの悪である」ことを主張したいのである。
―以下省略―
http://homepage.mac.com/ehara_gen/jealous_gay/itami_mansaku.html
今、「北」が悪い→「北」に圧力をかけろ→「北」の脅しに対抗して軍備を、といった単線思考が大流行の兆しである。安倍や中川、石破、山本といった「オボッチャマ」政治家が何の躊躇もなしに対抗意欲を亢進させている。団塊の世代より若い戦争体験のない世代の若者が彼らを心情的に支持している。戦中世代でありながら特権的な苦労知らずで育った学者たちもやたらに好戦的な言辞を吐いている。戦場経験を持たない者の戦闘意欲には歯止めがないのである。
これは メッセージ 1 (topics_editor さん)への返信です.
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