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>>>河童五つ目

投稿者: peekaboofrom8jo 投稿日時: 2004/09/24 01:34 投稿番号: [118 / 3394]
  チャックは一日に二三度は必ず僕を診察にきました。また三日に一度ぐらいは僕の最初に見かけた河童、――バッグという漁夫も尋ねてきました。河童は我々人間が河童のことを知っているよりもはるかに人間のことを知っています。それは我々人間が河童を捕獲することよりもずっと河童が人間を捕獲することが多いためでしょう。捕獲というのは当たらないまでも、我々人間は僕の前にもたびたび河童の国へ来ているのです。のみならず一生河童の国に住んでいたものも多かったのです。なぜと言ってごらんなさい。僕らはただ河童ではない、人間であるという特権のために働かずに食っていられるのです。現にバッグの話によれば、ある若い道路|工夫などはやはり偶然この国へ来た後、雌の河童を妻にめとり、死ぬまで住んでいたということです。もっともそのまた雌の河童はこの国第一の美人だった上、夫の道路工夫をごまかすのにも妙をきわめていたということです。
  僕は一週間ばかりたった後、この国の法律の定めるところにより、「特別保護住民」としてチャックの隣に住むことになりました。僕の家は小さい割にいかにも瀟洒とできあがっていました。もちろんこの国の文明は我々人間の国の文明――少なくとも日本の文明などとあまり大差はありません。往来に面した客間の隅には小さいピアノが一台あり、それからまた壁には額縁へ入れたエッティングなども懸っていました。ただ肝腎の家をはじめ、テエブルや椅子の寸法も河童の身長に合わせてありますから、子どもの部屋に入れられたようにそれだけは不便に思いました。
  僕はいつも日暮れがたになると、この部屋にチャックやバッグを迎え、河童の言葉を習いました。いや、彼らばかりではありません。特別保護住民だった僕にだれも皆好奇心を持っていましたから、毎日血圧を調べてもらいに、わざわざチャックを呼び寄せるゲエルという硝子会社の社長などもやはりこの部屋へ顔を出したものです。しかし最初の半月ほどの間に一番僕と親しくしたのはやはりあのバッグという漁夫だったのです。
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