★神戸事件をご存知でしょうか?第4号
投稿者: jaf71381 投稿日時: 2010/11/11 19:24 投稿番号: [16540 / 17704]
第3号の続きです。
「再び丁重なる辞儀(じぎ)をなしたるのち、滝善三郎、その声には痛ましき告白をなす人から期待されるべき程度の感情と躊躇(ちゅうちょ)が現われたが、顔色、態度、ごうも変ずることなく語りいずるよう、「拙者(せっしゃ)ただ1人、無分別にも誤って神戸なる外国人に対して発砲の命令を下し、その逃(のが)れんとするを見て、再び撃ちかけしめ候。拙者その罪を負いて切腹致す。おのおの方、検視のお役目ご苦労に存知候」またもや一礼終わって、善三郎は上衣を帯元まで脱ぎ下げ、腰の辺まで露わし、仰向(あおむ)けに倒れることなきよう、型のごとく注意深く両袖を膝の下に敷き入れた。高貴なる日本士人は、前に伏して死ぬべきものとされたからである。彼は思い入れあって、前なる短刀をしかと取り上げ、嬉しげに、さも愛着するばかりこれを眺め、しばらく最期(さいご)の観念を集中すると見えた、やがて左の腹を深く刺して、静かに右に引き回し、また元に返して少し切り上げた。このすさまじくも痛ましい動作の間、彼は顔の筋一つ動かさなかった。彼は短刀を引き抜き、前にかがみ首を差し伸べた。苦痛の表情が始めて彼の顔をよぎったが、少しも音声に現われない。この時まで側にうずくまり、彼の一挙一道を身じろぎもせずうち守っていた介錯は、やおら立ち上がり、一瞬大刀を空にふりあげた。秋水一閃(しゅうすいいっせん)、物すごき音、どうと倒れる響き、一撃の下に首体はたちまち、所を異にした。場内、寂として死せるがごとく、ただわずかに、われらの前なる死首よりほとばしりでる血のすさまじい音のみが聞こえた。この首の主こそ、今の今まで勇邁剛毅(ゆうまいごうき)の丈夫だった。介錯は平伏して礼をなし、かねてより用意した白紙を出して刀をぬぐい、高座より降りた。・・・滝善三郎の処刑、とどこおりなく相済みたり、検視せられよと言った。儀式はこれで終わり、我らは寺院を去った。」
完
これは メッセージ 16527 (jaf71381 さん)への返信です.
固定リンク:https://yarchive.emmanuelc.dix.asia/200000210/c0m3ua5sa5ga5aayoutubea4knaebdpa4ab_1/16540.html