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「一心不乱の危うさ」田辺聖子

投稿者: rykutukgi 投稿日時: 2002/01/22 02:40 投稿番号: [2707 / 28311]
2002/1/20 日経新聞21面 半歩遅れの読書術 より
「一心不乱の危うさ」田辺聖子

  私は<新聞代好き少女>で、五紙をとっている。私はその中の<一紙>に、中国のある政治的行為についてごく庶民的な感想を述べたことがある。ところが、それに対し、読者から猛烈な反駁(はんばく)、弾劾(だんがい)のFAXや手紙が舞いこんだ。
  それはおのずと、その<一紙>の政治的主張をなぞる結果になっていた。つまり投書者らは、はからずもその<一紙>の熱烈な心酔者であり、純粋培養であることを告白しているわけだ。ところが、私の物した<かんそう>の如きは、<他の一紙>には、常時、のべつに寄せられている読者の声で、別に珍しくもないものなのだ。

五紙を毎日読みくらべている私は、読みすれて<新聞読みすれっからし少女>になっている。そんなすれっからしからみると純粋培養はコワイ。むかし、堅忍不抜(けんにんふばつ)の信念、などという言葉がもてはやされ、一心不乱が、あるべき人間の理想の姿、と思われた時代があった。今にして思えば<一心不乱>はコワイ。国挙げてその隘路になだれこむ危険あり。−−というところで、<一心不乱>派におすすめしたい、と思ったのは、古森義久さんの『日中再考』(扶桑社、二〇〇一年)である。

古森さんは産経新聞の記者で、初代の中国総局長として二年間、北京に駐在した。周知の如く、産経新聞は三十一年間も、北京に駐在員をおくことを中国側に拒否されていた。それゆえ、古森さんは初めて北京に来て「文字通りの白紙からのスタート」を切り、日中関係の「奇妙な倒錯」に健全な常識からびっくりする。たとえば中国がいつまでも日本の侵略や残虐を非難してやまぬ点については、AP通信の英文報道の解説を見よう。(マーティン・ファクラー記者。本書第一部)「中国共産党は、日本軍への抗戦を主導したことを統一の正当性(レジティマシー)の支えとし、そのために日本軍の残虐行為などに関する記憶を国家が管理するメディアの頻繁な報道で、いつまでも生き生きとさせておこうとする」
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