菅さんの「初心」、何ですか?
投稿者: jgeilsbandfreak 投稿日時: 2010/11/30 10:53 投稿番号: [674 / 1181]
【言(こと)のついでに】論説委員・清湖口敏
菅さんの「初心」、何ですか?
2010.11.30 04:05
JR東日本や西日本のホームページを見ると、ロゴ文字の「旅客鉄道株式会社」の「鉄」の字が「金偏(かねへん)に矢」となっている。巷説(こうせつ)では「金を失う」のを嫌ったためだそうだが、私の子供のころ、近所にあった近鉄百貨店阿倍野店(大阪市)でも同じ形の字が使われていた。
「失」と「矢」。4画目をわずかに上に突き出すか出さないかに、企業人は社運をかけたのかもしれない。性質は異なるが、漢字学で欠画や欠筆などと呼ばれるものがある。皇帝や聖賢といった高貴な人物の名前を書き表す際、漢字の一部の筆画を省略する習わしがあり、中国ではきわめて重要視されてきた。
例えば孔子の諱(いみな)が「丘」であることから、過去の中国では「丘」は大抵、4画目の縦棒を省いた字で書かれたという(阿辻哲次『タブーの漢字学』)。また清代の康煕(こうき)帝の勅命により編纂(へんさん)された康煕字典では、「玄」の字が最終画を省略した形で示されていた。康煕帝の名は「玄●(げんよう)」というからである。
字典でありながら正しい字形を示さなかったことも驚きだが、このような文字を欠画にしなかったため斬首刑に処せられた人物もいたというから、なおさら驚く。
ところでわが国で文字の点画を欠いた例として有名なのは京の都の應天門(おうてんもん)の額で、門に掲げた後で「應」の初めの点が落ち失(う)せているのに気づいた弘法大師が、額めがけて筆を投げ、見事、点を付けたという伝説が今昔物語に紹介されている。
現代に例をとるなら、さしずめ東大野球部合宿所「一誠寮」の看板だろうか。野球部長で総長だった長与又郎が揮毫(きごう)した看板では、「誠」の右側のたすき(ノ)が欠けていた。長与が「優勝したら『ノ』を書き加えよう」と言ったと語り継がれているが、いまだ悲願は達成されておらず、寮に飾られている額の「誠」は「ノ」がないままだという。
外国人初の横綱となった曙は反対に、大関昇進を機に「曙」の「者」に点をつけて「曙」へと“改名”した。点と「天」を重ね、天下を手に入れるとの思いからだといい、東大野球部同様、わずかの点画にも強い決意を込めたのだった。
以下は「ついで」の話である。今ではもう旧聞ながら、小沢一郎元代表と争った先の民主党代表選のさなか、菅直人首相は色紙に「初心を貫く」と揮毫して記者に示した。
その日の夜も更け、日付がかわったころ。わが社の編集局は最終版の制作にとりかかっていた。と、政治部が突然、「色紙の字が変だ」と騒ぎ始めた。撮影された字をつくづく眺めてみると確かに変で、「初」の衣偏が示偏(ネ)になっている! 点が1つ欠けていたのである。
菅首相の揮毫を報じた全国紙で、「初」の字の誤りに触れていたのは産経だけだった。いえ、別に産経の記者が優秀だとか、菅首相の漢字力が劣っているとか言うつもりは毛頭ありません。弘法にも筆の誤り、誰だって間違いはあります。だいいち首相には漢字力がなくても政治力があればよいのですから。
もしやそれとも、菅首相も長与総長らに倣(なら)って何か心に秘めるものがあってわざと点を抜いたのでしょうか。もしそうなら伺(うかが)いたいのです。民主党の「初心」(政権公約)の虚妄が次々と明らかになるなかで、菅首相、あなたの「初心」とは一体、具体的に何なのですか?
●=火へんに華
こんなのが日本の頂点だもんなあ。
2010.11.30 04:05
JR東日本や西日本のホームページを見ると、ロゴ文字の「旅客鉄道株式会社」の「鉄」の字が「金偏(かねへん)に矢」となっている。巷説(こうせつ)では「金を失う」のを嫌ったためだそうだが、私の子供のころ、近所にあった近鉄百貨店阿倍野店(大阪市)でも同じ形の字が使われていた。
「失」と「矢」。4画目をわずかに上に突き出すか出さないかに、企業人は社運をかけたのかもしれない。性質は異なるが、漢字学で欠画や欠筆などと呼ばれるものがある。皇帝や聖賢といった高貴な人物の名前を書き表す際、漢字の一部の筆画を省略する習わしがあり、中国ではきわめて重要視されてきた。
例えば孔子の諱(いみな)が「丘」であることから、過去の中国では「丘」は大抵、4画目の縦棒を省いた字で書かれたという(阿辻哲次『タブーの漢字学』)。また清代の康煕(こうき)帝の勅命により編纂(へんさん)された康煕字典では、「玄」の字が最終画を省略した形で示されていた。康煕帝の名は「玄●(げんよう)」というからである。
字典でありながら正しい字形を示さなかったことも驚きだが、このような文字を欠画にしなかったため斬首刑に処せられた人物もいたというから、なおさら驚く。
ところでわが国で文字の点画を欠いた例として有名なのは京の都の應天門(おうてんもん)の額で、門に掲げた後で「應」の初めの点が落ち失(う)せているのに気づいた弘法大師が、額めがけて筆を投げ、見事、点を付けたという伝説が今昔物語に紹介されている。
現代に例をとるなら、さしずめ東大野球部合宿所「一誠寮」の看板だろうか。野球部長で総長だった長与又郎が揮毫(きごう)した看板では、「誠」の右側のたすき(ノ)が欠けていた。長与が「優勝したら『ノ』を書き加えよう」と言ったと語り継がれているが、いまだ悲願は達成されておらず、寮に飾られている額の「誠」は「ノ」がないままだという。
外国人初の横綱となった曙は反対に、大関昇進を機に「曙」の「者」に点をつけて「曙」へと“改名”した。点と「天」を重ね、天下を手に入れるとの思いからだといい、東大野球部同様、わずかの点画にも強い決意を込めたのだった。
以下は「ついで」の話である。今ではもう旧聞ながら、小沢一郎元代表と争った先の民主党代表選のさなか、菅直人首相は色紙に「初心を貫く」と揮毫して記者に示した。
その日の夜も更け、日付がかわったころ。わが社の編集局は最終版の制作にとりかかっていた。と、政治部が突然、「色紙の字が変だ」と騒ぎ始めた。撮影された字をつくづく眺めてみると確かに変で、「初」の衣偏が示偏(ネ)になっている! 点が1つ欠けていたのである。
菅首相の揮毫を報じた全国紙で、「初」の字の誤りに触れていたのは産経だけだった。いえ、別に産経の記者が優秀だとか、菅首相の漢字力が劣っているとか言うつもりは毛頭ありません。弘法にも筆の誤り、誰だって間違いはあります。だいいち首相には漢字力がなくても政治力があればよいのですから。
もしやそれとも、菅首相も長与総長らに倣(なら)って何か心に秘めるものがあってわざと点を抜いたのでしょうか。もしそうなら伺(うかが)いたいのです。民主党の「初心」(政権公約)の虚妄が次々と明らかになるなかで、菅首相、あなたの「初心」とは一体、具体的に何なのですか?
●=火へんに華
こんなのが日本の頂点だもんなあ。
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