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Re: 戦前の朝鮮人について

投稿者: toapanlang 投稿日時: 2010/05/23 21:19 投稿番号: [41938 / 43168]
少しまとめ。んー、「渡航制限」とか「自由渡航」って表現は妥当じゃないかもしれないですね。「許可制渡航」の強化と緩和とでも言った方が穏当かも。

1919年 4月15日   朝鮮総督府警務総監部令第3号「朝鮮人旅行取締に関する件」:渡航証明書による渡航開始
1922年12月15日   朝鮮総督府令第153号「朝鮮人旅行取締に関する件廃止」:警務総監部令第3号を廃止
1923年 9月   関東大震災後の事態により、渡航証明書による渡航を再開
1924年 6月   渡航証明書の廃止
1927年 7月   各道知事宛警務局長通牒「渡航阻止と渡航者に戸籍謄本裏書証明書発給に関する件」:居住地警察より発給の証明書と戸籍謄本を必要とする渡航制度開始
1929年 8月   内地渡航の朝鮮人労働者に対して帰郷する際に「一時帰鮮証明書」を発給する制度開始
1934年   内地移住対策の件   閣議決定   確たる就職先もなく漫然と内地に渡航する者を阻止する旨と、渡航に際しては奥書紹介状が必要であり渡航先の警察に照会すべき旨をあらためて徹底することを確認

24年6月の渡航証明書廃止の件については鄭大均の記述をもとにしているので、一次史料にじかにあたって完全把握できているわけじゃないです。
ただし34年の閣議決定を読めば、この時点で渡航に際しては奥書紹介状が必要でしかも渡航先の警察に照会しなくてはならないという制度が施行されていたことはわかります。(アジア歴史資料センター『公文別録・内務省・大蔵省・陸軍省・海軍省・商工省・逓信省・大東亜省・昭和六年〜昭和十八年・第一巻/朝鮮人移住対策ノ件   レファレンスコード:A03023591400)

1.朝鮮内に於ける内地渡航熱を抑制すること。
(イ) 漫然渡航は勿論、譬へ一時就職の見込ある場合と雖、早晩失業困窮するものなること及苦学は不可能なることを朝鮮内に徹底せしむると共に、内地渡航に付ては奥書紹介状を必要とすることを充分周知せしむること

3.朝鮮内に於ける地元諭止を一層強化する。
内地渡航出願者に付、必ず其の渡航先内地警察官署へ渡航を認むべきや否やを照会し、其の回答を俟って奥書紹介を与ふること。
但し、左に該当する者に対しては、之を除外す。
(イ) 官公吏
(ロ) 著名の人士
(ハ) 新聞記者
(ニ) 学生 <在学証明書の発給に付、文部省に於て従前より一層適切なる措置を講ずること>
(ホ) 商用の為の一時旅行者
(ヘ) 其の他右に準ずる者

「内地に行けばなんとかなる」ってのは阻止しましょうと。なんか「東京に行けばなんとかなる」って上京する地方人みたいなもんですな。ちょうど満洲事変による軍需景気で、第1次世界大戦後、昭和初期の不況が拭われようとしていた時期ですし、変に内地ずれしていない安価な労働力は内地資本家の待望するものでしたし。
第1次大戦中の好景気・戦後の不況と内地(特に大阪)に渡航した朝鮮人の状況、朝鮮総督府のとった政策と大阪府の調査を合わせて見るとかなりおもしろいんですが今回は割愛。
そうそう、麻布十番の在日韓人歴史資料館にいけば、旧制高校受験のため内地に来航する朝鮮人受験生が大阪市浪速区の某を保証人とした渡航証明書の展示があったはずです。ま、あの施設は管理者の意図とは別の意味を訴えてしまうような興味深い展示が多いんで楽しい所なんです。

正規の手続を経た朝鮮人の渡航が存在することは、うるるさんのあげた新聞記事でも十分うかがえるんですけどネェ。

・『鮮人の密航続出/行啓を控へた山口県三百名(東宮行啓を控え県警察部は漫然渡航者を乗船地で阻止しているが、密航を企てる者も増加。近頃も大津郡深川村に60名上陸)』 京都日出 1926/4/30 〔〕 長門・山口 【渡航】
・『怪しまれた密航の鮮人/手続不備と判る』 神戸又新日報 1928/9/29 〔5/8〕 神戸・兵庫 【渡航】
・『密航者と/誤られて/福岡県から釜山へ送還さる』 大阪朝日 1929/5/28 南鮮 〔〕 前原・福岡 【渡航】
・『四十二名の鮮人密航団/鮮魚運搬船へ潜伏/下関署に発見さる(川尻町で漁業従業のため雇入れて来たものと訂正あり、三月一日付け記事)』 中国 1931/2/27 〔〕下関・山口 【渡航】
・『証明書を偽造/鮮人の密航』 門司新報 1933/2/3 〔1/5〕 下関・福岡 【渡航】

先述の史料と合わせれば、1番目の記事からは漫然渡航は阻止されるものであったこと、3、4番目の記事からは正当な朝鮮人労働者がいたこと、2、5番目の記事からは朝鮮人渡航には何らかの手続、証明書が必要であったことが読み取れます。

疑問を持ったら調べてみるって大切なことですよねぇと。
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