弱者への優しさどこへ
投稿者: japanese_chosun 投稿日時: 2007/05/07 22:28 投稿番号: [34400 / 35788]
つばを吐きかけられる。
「邪魔だ。あっちへ行け」とどなられる。
東京・上野公園。その片隅でホームレスの人たちに炊き出しのご飯を配っている韓国人宣教師、黄永国さん(54)の表情が曇った。
標的は黄さんと支援者たちだ。
上野駅で、弱っていたホームレスに助けを求められ、おにぎりを手渡したことがある。だが翌朝、男性は死んでいた。継続的に支援しないと彼らは救えない。その思いから週一回の炊き出しを始めて12年になる。
初めのうちは「大変ですね」と声をかけてくれる人がすくなくなかった。千円ほどのお金を置いていってくれる人もいた。
そうした人がほとんどいなくなったのは6〜7年前からだ。
一方的な施しは自立を妨げるという考え方があることも知っている。みんなに協力してくれと言うつもりはない。しかし、度々投げつけられる「そいつらは死んでもいいんだ」という言葉には、納得できない。
黄さんは問いかける。「弱い人たちへの思いやりを日本の人はなくしてしまったのでしょうか」
利己とは逆に、他人の幸福を願う利他の精神。東洋大の中里至正名誉教授が手がけてきた日本人の利他心に関する調査の一つに、小学生にゲームをさせ、勝った子が、もらったチップをどう使うかで思いやりの度合いを測るという実験がある。1980年代半ばまでは、余ったチップを負けた子に分け与える子の割合は約80%に上がったが80年代後半に突如40%台に下がってしまった。
「ここで手を打たなければ殺伐とした社会が到来するという当時の懸念が、現実のものになりつつある」。中里至正名誉教授は警告する。
東大の黒住真教授にわれば、他者への優しさは本来、日本人の重要な特性の一つだったという。「その根底には、草木など万物に霊魂が宿ると考えるアニミズムの伝統がある。それが、人間を含む命あるものへの優しさをはぐくんできた」。
明治以降の近代化の過程においても、アニミズムは日本人の精神の根底に位置し続けた。それが20年ほど前から、コンピューターを中心とする機械化システムが生活全般のを覆い尽くすようになり、自然とのつながりが完全に断ち切られた。黒住教授はそう見る。
作家のマークス寿子さんは3年前に東京の地下鉄で体験した出来事が忘れられない。
足が悪かったマークスさんに席を譲ろうと、前に座っていた男児が腰を浮かした。すると隣の父親がぴしゃりと言った。「お前も疲れているんだから余計なことはしなくていい」。
71年から20年間、英国に滞在したマークスさんは、70年代以前の日本を思い返して、こう言う。
「相互扶助がなければ生きていけなかった貧しい時代には、弱い立場の人を助ける利他の精神が、当然の規範として人々の心に根付いていた。急激な経済成長を遂げた後も、ある時期までは、親から子へその精神が引き継がれていた」
しかし、豊かな時代しか知らない世代が親になり、そうした親子間の規範が途絶えて。「過去に体験していない豊かさの中で、それにふさわしい社会規範をみつけられないまま、日本人はここまで来てしまったのではないか」
・・・ ・・・・
5月五日読売新聞より転載
http://blog.goo.ne.jp/hakhon/e/cbae827be1cf858ff02b0dabb64c22e8
「邪魔だ。あっちへ行け」とどなられる。
東京・上野公園。その片隅でホームレスの人たちに炊き出しのご飯を配っている韓国人宣教師、黄永国さん(54)の表情が曇った。
標的は黄さんと支援者たちだ。
上野駅で、弱っていたホームレスに助けを求められ、おにぎりを手渡したことがある。だが翌朝、男性は死んでいた。継続的に支援しないと彼らは救えない。その思いから週一回の炊き出しを始めて12年になる。
初めのうちは「大変ですね」と声をかけてくれる人がすくなくなかった。千円ほどのお金を置いていってくれる人もいた。
そうした人がほとんどいなくなったのは6〜7年前からだ。
一方的な施しは自立を妨げるという考え方があることも知っている。みんなに協力してくれと言うつもりはない。しかし、度々投げつけられる「そいつらは死んでもいいんだ」という言葉には、納得できない。
黄さんは問いかける。「弱い人たちへの思いやりを日本の人はなくしてしまったのでしょうか」
利己とは逆に、他人の幸福を願う利他の精神。東洋大の中里至正名誉教授が手がけてきた日本人の利他心に関する調査の一つに、小学生にゲームをさせ、勝った子が、もらったチップをどう使うかで思いやりの度合いを測るという実験がある。1980年代半ばまでは、余ったチップを負けた子に分け与える子の割合は約80%に上がったが80年代後半に突如40%台に下がってしまった。
「ここで手を打たなければ殺伐とした社会が到来するという当時の懸念が、現実のものになりつつある」。中里至正名誉教授は警告する。
東大の黒住真教授にわれば、他者への優しさは本来、日本人の重要な特性の一つだったという。「その根底には、草木など万物に霊魂が宿ると考えるアニミズムの伝統がある。それが、人間を含む命あるものへの優しさをはぐくんできた」。
明治以降の近代化の過程においても、アニミズムは日本人の精神の根底に位置し続けた。それが20年ほど前から、コンピューターを中心とする機械化システムが生活全般のを覆い尽くすようになり、自然とのつながりが完全に断ち切られた。黒住教授はそう見る。
作家のマークス寿子さんは3年前に東京の地下鉄で体験した出来事が忘れられない。
足が悪かったマークスさんに席を譲ろうと、前に座っていた男児が腰を浮かした。すると隣の父親がぴしゃりと言った。「お前も疲れているんだから余計なことはしなくていい」。
71年から20年間、英国に滞在したマークスさんは、70年代以前の日本を思い返して、こう言う。
「相互扶助がなければ生きていけなかった貧しい時代には、弱い立場の人を助ける利他の精神が、当然の規範として人々の心に根付いていた。急激な経済成長を遂げた後も、ある時期までは、親から子へその精神が引き継がれていた」
しかし、豊かな時代しか知らない世代が親になり、そうした親子間の規範が途絶えて。「過去に体験していない豊かさの中で、それにふさわしい社会規範をみつけられないまま、日本人はここまで来てしまったのではないか」
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5月五日読売新聞より転載
http://blog.goo.ne.jp/hakhon/e/cbae827be1cf858ff02b0dabb64c22e8