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政治学の食 ブデチゲ

投稿者: guiseinoyuu 投稿日時: 2005/02/15 16:15 投稿番号: [2212 / 15709]
本日版産経新聞コラム
私が敬愛する産経新聞ソウル支局の   黒田勝弘さんです。

米軍がもたらした切ない料理

韓国の庶民料理(?)であるブデチゲは不思議な食べ物だ。まず名前だが、「ブデ」
は漢字の「部隊」で「チゲ」は韓国で煮込み風のナべを意味するから、訳せば「部隊ナべ」となる。
中華風のナべにハムやソーセージ、ミートボール、ネギ、豆腐、モチ、ハルサメ、即席メン
その他にキムチや   真っ赤なトウガラシを加えぐつぐつ煮込んだものだ。
相当な高カロリーで、しかもどこか正体不明の料理という感じがあるので中高年のおじサンにはきつい。
どちらかというと若者に人気だ。
これになぜ「部隊ナベ」なる名前がついたかというと、その由来は朝鮮戦争(一九五○ー五三)
あたりにさかのぼる。戦争の惨禍もあって韓国が相当に貧しかったころ、米軍キャンプから出る
食べ残し、つまり”残飯”を基地周辺の業者が集めて食材にしたのがその始まりである。
とくにハム、ソーセージやハンバーガーの切れ端は動物性タンパク質として貴重だった。
なんとも切ない料理だが、これが後にはちゃんとした材料を使い、とくに韓国軍の基地周辺の
食堂で人気となった。ここで味を覚えた若い兵士たちが、除隊後もその味が忘れられず、
「ブデチゲ」はついにソウルの中心街の食堂にも登場するようになった。
今や韓国料理として立派に”市民権”を得ている。
在韓米軍基地が存在するソウル近郊の議政府市は「ブデチゲ発祥の地」といわれる。
それをウリに市内には「ブデチゲ通り」があって二十数軒のブデチゲ店が軒を連ね
観光客などで繁昌している。
先年、某地では実際に米軍基地流れの食べ残しを食材に使っていた悪徳食堂が当局に摘発される
事件があった。世論は「今ごろ残飯とは何だ!」と大いに怒り嘆いたが、一部は
「それこそ元祖ブデチゲじゃないの」と苦笑していた。
対北朝鮮の安保意識が大幅に後退し、世を挙げて”反・軍事文化”が主張される中で
「ブデチゲの名前はまずいのではないか」との声があり、
一部で発祥地の名前から「議政府ナベ」など改名の動きも出ているがなかなか広がらない。
ブデチゲはやはりブデチゲでないとおいしくないようだ。朝鮮戦争を知る年輩層や
保守派が嘆く”平和ボケ”の中で、ブデチゲに舌鼓を打つ若者たちはもはや名前の由来など誰も知らない。
(ソウル   黒田勝弘)
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