桜井よしこ「感情的反捕鯨論との闘い方」
投稿者: ichiro_55a 投稿日時: 2009/10/17 20:33 投稿番号: [1097 / 4377]
『週刊新潮』
2009年2月19日号
日本ルネッサンス
第350回
桜井よしこブログ「感情的反捕鯨論との闘い方」
IWC脱退を示した日本
今年、IWCの議長国は米国だ。反捕鯨の米国出身の議長が日本の沿岸捕鯨を認めると提案したのは、捕鯨賛成派と反対派が拮抗し、機能停止に陥ったIWCの亀裂の修復を目指すからだ。この妥協案も、日本の主張ゆえに生まれたと中田氏は語る。
07年5月、IWC年次総会が開かれ、日本は同総会に向けて沿岸小型捕鯨に関する提案をした。提案は日本が沿岸で捕獲する鯨の頭数を遠洋での調査捕鯨頭数から差し引くことでミンク鯨の捕獲頭数は増やさない、捕獲枠については交渉に応ずる、監視取締については議長提案を受け入れ、さらに透明性確保のためにオーバーサイト委員会を設けるという内容だった。だが、IWCはこれを拒否した。反発した日本政府は以下のように演説した。
①沿岸小型捕鯨は、鯨資源の持続的利用の観点から問題がないことが明らかにされている②IWC自身が鯨食の文化的価値と鯨産業の経済的窮状を認め、「迅速な」救済を繰り返し決議した
③にも拘らず、「控えめかつ正当な」日本案を拒否したのは極めて遺憾だ、と。
いつもは大人しい政府が日本案否定の論理的理由は一切ないと断じ、米国が少数民族に先住民生存のためとして捕鯨を認める一方で、日本の文化である沿岸捕鯨に反対したことを以て、米国を「ダブルスタンダード」だと非難したのだ。
日本政府はこのとき、①IWCからの脱退、②新組織の立ち上げ、③沿岸捕鯨の自主的再開も念頭に政策の根本的見直し、を示唆した。この日本の主張に、IWC側が譲歩の姿勢をみせたのだと中田氏は解説する。
「日本の科学調査は、漁業資源保護のためにも高く評価されています。IWCの科学委員会は勿論、政治的色彩の強い本会議でも約半数が日本支持です。にも拘らず、日本国内から調査捕鯨中止論が出るのはどうしたことでしょうか」
水産ジャーナリストの会の会長で約30年間も鯨問題を取材してきた梅崎義人氏が指摘した。
「日本捕鯨協会の依頼でレスポンシブ・マネジメント社が行った国際世論調査で興味深いことが判明しています。日本が捕っているミンク鯨について、必要情報を与えたうえで質問すると、強力な反捕鯨国である米豪仏英のいずれにおいても、捕鯨への賛成が反対を上回ったのです」
調査対象に与えた情報は、ミンク鯨は100万頭が生息すること、捕鯨は特定の国や民族にとっては文化であること、捕獲鯨は食用されていること、捕獲はIWCの規制下で行われていることの4点だった。
その結果、捕鯨に「強く賛成する」「賛成する」の合計は米豪仏英で各々71、53、63、61%、「強く反対する」「反対する」は各々19、40、27、31%だった。この結果は、客観情報を知らせれば国際社会の感情論の抑制は可能だと示している。但し、反捕鯨感情は根強い。日本は余程、注意しなければならない。
世界は情報で動く
奇妙に思われるかもしれないが、私には捕鯨問題と満州事変がつながってみえる。事変に至る過程で、日本がどれだけ国際条約やルールを守ろうとしたか、反対に中国がどれほど条約破りをし、日本を挑発し続けたかは、リットン報告書など、種々の資料で指摘されている。結果は、しかし、事変を起こした日本が一方的に非難され、“原因を作った”と国際社会が分析した中国は゛善意の被害者〟と位置づけられた。政治は結果によって評価されるのであり、その点で、忍耐出来ずに行動を起こした日本は外交で失敗したのだ。
今回、日本は「忍耐の限界」などと言ってIWCを脱退する代わりに、情報を世界に広めることだ。米国の衛星チャンネル「アニマル・プラネット」は昨年末から7週にわたってSSの活動を伝えた。彼らの活動を美化し、日本を貶める内容だ。一方的な情報が世界中に報じられるのに対して、日本側は官民あげて、日本の主張と正確な情報を発信し返すのがよい。摩擦を生むからといって、対中政策に見られるように、正しい主張を引っ込めてはならない。鯨問題に限らず、日本は国家として、情報発信予算をもっと割くべきだ。世界は情報で動く。国益を守るも損ねるも、情報戦略が基本であることを忘れたままでいてはならない。
桜井よしこブログ「感情的反捕鯨論との闘い方」
IWC脱退を示した日本
今年、IWCの議長国は米国だ。反捕鯨の米国出身の議長が日本の沿岸捕鯨を認めると提案したのは、捕鯨賛成派と反対派が拮抗し、機能停止に陥ったIWCの亀裂の修復を目指すからだ。この妥協案も、日本の主張ゆえに生まれたと中田氏は語る。
07年5月、IWC年次総会が開かれ、日本は同総会に向けて沿岸小型捕鯨に関する提案をした。提案は日本が沿岸で捕獲する鯨の頭数を遠洋での調査捕鯨頭数から差し引くことでミンク鯨の捕獲頭数は増やさない、捕獲枠については交渉に応ずる、監視取締については議長提案を受け入れ、さらに透明性確保のためにオーバーサイト委員会を設けるという内容だった。だが、IWCはこれを拒否した。反発した日本政府は以下のように演説した。
①沿岸小型捕鯨は、鯨資源の持続的利用の観点から問題がないことが明らかにされている②IWC自身が鯨食の文化的価値と鯨産業の経済的窮状を認め、「迅速な」救済を繰り返し決議した
③にも拘らず、「控えめかつ正当な」日本案を拒否したのは極めて遺憾だ、と。
いつもは大人しい政府が日本案否定の論理的理由は一切ないと断じ、米国が少数民族に先住民生存のためとして捕鯨を認める一方で、日本の文化である沿岸捕鯨に反対したことを以て、米国を「ダブルスタンダード」だと非難したのだ。
日本政府はこのとき、①IWCからの脱退、②新組織の立ち上げ、③沿岸捕鯨の自主的再開も念頭に政策の根本的見直し、を示唆した。この日本の主張に、IWC側が譲歩の姿勢をみせたのだと中田氏は解説する。
「日本の科学調査は、漁業資源保護のためにも高く評価されています。IWCの科学委員会は勿論、政治的色彩の強い本会議でも約半数が日本支持です。にも拘らず、日本国内から調査捕鯨中止論が出るのはどうしたことでしょうか」
水産ジャーナリストの会の会長で約30年間も鯨問題を取材してきた梅崎義人氏が指摘した。
「日本捕鯨協会の依頼でレスポンシブ・マネジメント社が行った国際世論調査で興味深いことが判明しています。日本が捕っているミンク鯨について、必要情報を与えたうえで質問すると、強力な反捕鯨国である米豪仏英のいずれにおいても、捕鯨への賛成が反対を上回ったのです」
調査対象に与えた情報は、ミンク鯨は100万頭が生息すること、捕鯨は特定の国や民族にとっては文化であること、捕獲鯨は食用されていること、捕獲はIWCの規制下で行われていることの4点だった。
その結果、捕鯨に「強く賛成する」「賛成する」の合計は米豪仏英で各々71、53、63、61%、「強く反対する」「反対する」は各々19、40、27、31%だった。この結果は、客観情報を知らせれば国際社会の感情論の抑制は可能だと示している。但し、反捕鯨感情は根強い。日本は余程、注意しなければならない。
世界は情報で動く
奇妙に思われるかもしれないが、私には捕鯨問題と満州事変がつながってみえる。事変に至る過程で、日本がどれだけ国際条約やルールを守ろうとしたか、反対に中国がどれほど条約破りをし、日本を挑発し続けたかは、リットン報告書など、種々の資料で指摘されている。結果は、しかし、事変を起こした日本が一方的に非難され、“原因を作った”と国際社会が分析した中国は゛善意の被害者〟と位置づけられた。政治は結果によって評価されるのであり、その点で、忍耐出来ずに行動を起こした日本は外交で失敗したのだ。
今回、日本は「忍耐の限界」などと言ってIWCを脱退する代わりに、情報を世界に広めることだ。米国の衛星チャンネル「アニマル・プラネット」は昨年末から7週にわたってSSの活動を伝えた。彼らの活動を美化し、日本を貶める内容だ。一方的な情報が世界中に報じられるのに対して、日本側は官民あげて、日本の主張と正確な情報を発信し返すのがよい。摩擦を生むからといって、対中政策に見られるように、正しい主張を引っ込めてはならない。鯨問題に限らず、日本は国家として、情報発信予算をもっと割くべきだ。世界は情報で動く。国益を守るも損ねるも、情報戦略が基本であることを忘れたままでいてはならない。
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