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斎藤貴男・サンデー毎日書評

投稿者: r13812 投稿日時: 2011/07/28 13:27 投稿番号: [55249 / 62227]
・水産庁を中心とした捕鯨サークルの真の目的は限られた利害関係者の既得権益の維持であり、そのためにこそ南氷洋での調査捕鯨をナショナリズムのシンボルとする演出がなされてきた




サンデーらいぶらりぃ:斎藤   貴男・評『解体新書「捕鯨論争」』石井 敦/編著
http://mainichi.jp/enta/book/review/news/20110728org00m040004000c.html

◆ややこしい問題のどうややこしいかが分かる

◇『解体新書「捕鯨論争」』石井 敦/編著(新評論/税込み3150円)

  捕鯨論争は古くて新しい問題だ。日本文化としての側面を強調する捕鯨推進派と、環境保護団体など反捕鯨派との対立ばかりが

クローズアップされがちだが、実態はそれほど単純な図式ではないらしい。

  たとえば地球温暖化をめぐる国際会議とIWC(国際捕鯨委員会)とでは、まるで雰囲気が違うという。参加者の誰もが懸命に

合意を図る前者に対し、後者は感情的な非難合戦に終始するのが常態化してしまった。

  −−なぜなのか?   儀式的に対立すること自体がIWCの目的になっているのではないか?

  市民オンブズマンのような立場から、捕鯨問題のタテマエとホンネを捉え直した本書が、そんな問題意識に応えてくれる。科学

技術社会学および国際関係論の研究者として外交に影響力を発揮できる科学のあり方を提唱している編著者による構成は中身が濃

い。捕鯨問題の全体像、その国際政治史上の位置づけ、日本の調査捕鯨の妥当性をどう評価するか、マスコミ報道の問題点……と

いった、それぞれに複雑な議論が、並び順の妙もあって相互に補完し合い、実に理解しやすいのだ。

  白眉はやはり、日本の捕鯨外交を検証した最終章だろう。水産庁を中心とした捕鯨サークルの真の目的は限られた利害関係者の

既得権益の維持であり、そのためにこそ南氷洋での調査捕鯨をナショナリズムのシンボルとする演出がなされてきたとの分析が鋭

い。

  もちろん反捕鯨の側にも、日本をはじめとする捕鯨国を叩くことによって利益を得る構造があった。国際環境NGO「グリーン

ピース」日本支部の元スタッフによる、古巣への経験論的批判が特に興味深かった。

<サンデー毎日 2011年8月7日号より>
http://mainichi.jp/enta/book/sunday/news/20110723org00m100008000c.html
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