「クジラ摩擦」(朝日新聞社説3月14日)
投稿者: r13812 投稿日時: 2010/03/14 07:08 投稿番号: [42962 / 62227]
クジラ摩擦―食文化の対立にするな
http://www.asahi.com/paper/editorial20100314.html#Edit2
売られたケンカは買うべきか。
しかし、買えば挑発に乗ることになる。シー・シェパード(SS)はまったく困った連中である。
海上保安庁が、オーストラリアを拠点に日本の調査捕鯨活動の妨害を繰り返してきたこの反捕鯨団体の活動家を逮捕した。南極海で活動中の日本の船に乗り込んだ艦船侵入容疑である。
法的にきちんと対応することは当然だ。しかし、この活動家が多くの国で「英雄」としてもてはやされ、日本に照準を合わせた反捕鯨世論をあおる材料にされてはたまらない。
捕鯨問題は海洋資源の活用と保護を目標に、科学的な論拠に基づいて論じられなければならない。文化や価値観が対立点になれば議論は迷走する。
豪州や欧米の国々の食事は肉食中心だが、多くの人々がクジラは保護、救済の対象と考えている。SSを含め、反捕鯨の主張の中には、クジラは高い知性を持つ動物だから殺すのは残酷だ、といった価値観に根ざした部分も小さくない。
だが、そもそも日本人はたいして鯨肉を食べていない。鯨と関係の深い食文化を持つ地方は別だが、各種の調査によると国民の平均的な消費量は、牛肉や豚肉、鶏肉の100分の1以下の水準だ。たいていの人は年に一度とか数年に一度味わうだけだろう。
海外では日本人が日常的に鯨肉を食べているかのような印象が広がって、日本への非難の原因にもなっている。誤解である。SSなどの活動がメディアで繰り返し報じられ、日本と鯨肉のつながりを実際以上に印象づけることになったのだろう。
ただ一方で、日本側にも鯨肉を日本の食文化のシンボルだと主張し、ナショナリズムの舞台に上げようとする動きがある。どんな問題も文化の衝突に持ち込むと解決はきわめて難しくなる。捕鯨を環境保護の問題ととらえる欧米の視点への理解も必要だ。
ほかの動物の肉を食べる人たちが鯨食を残酷と非難し、実際にはあまり食べていない日本人が鯨食を日本の食文化だと言いつのる。それは奇妙な光景である。文化摩擦というふくらし粉で問題が異常に大きくなっている。
SSの活動に感情的に反応するより、冷静に解決策を模索すべきだ。
豪州のラッド首相は、日本が11月までに調査捕鯨をやめなければ国際司法裁判所へ提訴する考えを表明した。反捕鯨の世論は、近づく総選挙を前に政治が軽視できないほど高まっている。
捕鯨問題は、国際捕鯨委員会で粘り強い合意作りへの努力を重ねることがなにより大事だ。
日本側も食文化の議論にはまれば解決の出口を失う。問題を解決することと留飲を下げることは、しばしば別のことである。
http://www.asahi.com/paper/editorial20100314.html#Edit2
売られたケンカは買うべきか。
しかし、買えば挑発に乗ることになる。シー・シェパード(SS)はまったく困った連中である。
海上保安庁が、オーストラリアを拠点に日本の調査捕鯨活動の妨害を繰り返してきたこの反捕鯨団体の活動家を逮捕した。南極海で活動中の日本の船に乗り込んだ艦船侵入容疑である。
法的にきちんと対応することは当然だ。しかし、この活動家が多くの国で「英雄」としてもてはやされ、日本に照準を合わせた反捕鯨世論をあおる材料にされてはたまらない。
捕鯨問題は海洋資源の活用と保護を目標に、科学的な論拠に基づいて論じられなければならない。文化や価値観が対立点になれば議論は迷走する。
豪州や欧米の国々の食事は肉食中心だが、多くの人々がクジラは保護、救済の対象と考えている。SSを含め、反捕鯨の主張の中には、クジラは高い知性を持つ動物だから殺すのは残酷だ、といった価値観に根ざした部分も小さくない。
だが、そもそも日本人はたいして鯨肉を食べていない。鯨と関係の深い食文化を持つ地方は別だが、各種の調査によると国民の平均的な消費量は、牛肉や豚肉、鶏肉の100分の1以下の水準だ。たいていの人は年に一度とか数年に一度味わうだけだろう。
海外では日本人が日常的に鯨肉を食べているかのような印象が広がって、日本への非難の原因にもなっている。誤解である。SSなどの活動がメディアで繰り返し報じられ、日本と鯨肉のつながりを実際以上に印象づけることになったのだろう。
ただ一方で、日本側にも鯨肉を日本の食文化のシンボルだと主張し、ナショナリズムの舞台に上げようとする動きがある。どんな問題も文化の衝突に持ち込むと解決はきわめて難しくなる。捕鯨を環境保護の問題ととらえる欧米の視点への理解も必要だ。
ほかの動物の肉を食べる人たちが鯨食を残酷と非難し、実際にはあまり食べていない日本人が鯨食を日本の食文化だと言いつのる。それは奇妙な光景である。文化摩擦というふくらし粉で問題が異常に大きくなっている。
SSの活動に感情的に反応するより、冷静に解決策を模索すべきだ。
豪州のラッド首相は、日本が11月までに調査捕鯨をやめなければ国際司法裁判所へ提訴する考えを表明した。反捕鯨の世論は、近づく総選挙を前に政治が軽視できないほど高まっている。
捕鯨問題は、国際捕鯨委員会で粘り強い合意作りへの努力を重ねることがなにより大事だ。
日本側も食文化の議論にはまれば解決の出口を失う。問題を解決することと留飲を下げることは、しばしば別のことである。
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