(つづき)
欧州連合では、特にイタリアの伝統的小規模マグロ漁に対して、
アラスカやロシア、グリーンランド・イヌイットに対する
原住民生存捕鯨のような特別枠を設けなかったのですね。
理由は簡単です。他に食べ物はいくらでもあるからです。
今でもクロマグロを大量捕獲しているスペインやモロッコに
したところで、他の大型魚種やタコ等、大型水産資源が次々に
壊滅し、値段の安いイカぐらいしか獲れなくなってるという
漁村がいくらでもあるわけで、イタリア離島部のマッタンザ
だけを特別扱いすることはできないです。
マッタンザを残酷と見なす人が多いから離島漁業の伝統保存に
配慮が無かったのではかと考えてみると、欧州共同体の政策
決定過程を見ればほとんどありそうもないことだという結論が
出ます。反対側から、伝統漁法、離島の食文化(マグロの卵、
白子で和えたパスタ)だから保護しようという世論が起らな
かったのも事実ですね。
マグロもイルカも、国連海洋法附属書1に定める高度回遊種
だから漁獲規制は国際協調によるものとし、植物のほとんど
生えないような極端な地域以外は基本的に例外は認めない、
で法的には筋の通った話です。
太地のイルカ漁問題の核心も、「残酷だから」vs.「伝統文化だから」
という問題ではなく、これまでの水産庁、各道府県の捕獲許可枠
が、現代の資源管理論にもとずく算出法ではなく、かなりいい
加減に決められていたというところにあります。この問題は
水産庁系の独立行政法人、水研(総合センター?)も認めています。
(「現代の資源管理論」というとたとえばIWCの改訂管理
方式<RMP>のような確率論的手法によるものが代表的です。
RMP自体はヒゲクジラ類専用に開発されたものですが、
同じような手法は一般の漁業でも適用されています。
#そもそも太地はヒゲクジラ類の捕鯨の伝統はあるけれど、イルカ
歯鯨類の捕獲伝統はないはずですね。)
というわけで、1990年代末あたりから雨後のタケノコのように
増えたディベート好きの一知半解ジャーナリスト様に、
一般論、原則論で対応した岡田氏は正解でしょう。
水産庁、水研内部から、こういうディベート屋が横行すること
を排し、まともな水産管理論を一般にわかりやすく解説する
人々が出てこなければならないというのが、今後の課題ですね。
ある意味では「官僚答弁」が必要です。与党議員に実力が
付いてくるまでは。
http://www.flickr.com/photos/el_gaucho_ledesma/3073526057/マグロがいなくなったから人間がかわりにやってるマッタンザの
祭り/儀式。