小泉首相の訪朝と課題について☆☆☆☆☆

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「弟の姿見るまで耐える」

投稿者: sa_bo_ten_02 投稿日時: 2003/09/11 13:35 投稿番号: [86248 / 232612]
「拉致」壊れた人生設計

「弟の姿見るまで耐える」
  史上初の日朝首脳会談から、十七日で丸一年が過ぎようとしている。金正日総書記が小泉首相に拉致を認めて謝罪したにもかかわらず、五人の被害者が帰国した以外は、大きな進展は見られない。そして、運命を変えられた人たちにとっては、あの日の後も、時の流れは止まったままだ――。


札幌市郊外のアパートの一室。一九八〇年に拉致された石岡亨さん(当時二十二歳)の兄、章さん(48)が、居間のパソコンに向かい、キーボードをたたく。
  「ごめんね」。これは亨さんに向けた言葉。三年前に亡くなった母親へは「悪いね」。
「考えると頭がおかしくなる」   「それでも頑張らなければならないのにね」   「これを書いて少しさっばりした」――。心の中に浮かんだ言葉や時々の心境を、そのまま打ち込んでいく。何時間もかけて、結局A4判の紙にして一校か、多くても一校半しか埋まらない。液晶画面に最後に浮かび上がる文章はいつも一緒だ。
  「明日からもまた、頑張ろう」
  この儀式を終えると、ようやく眠りに入ることができる。「いつかは亨と生きて会えるかもしれない」「いい夢が見られるかもしれない」。そう自分に言い聞かせながら。
    ☆      ☆
  今年四月、測量士として十年近く勤務した会社を辞めた。北朝鮮が拉致を認めて以来、政府や北海道庁との連絡、殺到する報道陣の対応に追われ、会社に顔を出せない日々が続いた。経済状況が特に厳しい北海道。従業員数人の小さな会社に、社員を“遊ばせておく”余裕はないことは分かっていた。上司は「悪いけど切るよ」と通告した。事実上の解雇だった。
 
実家で同居していた姉に負担を掛けまいと、常に一人で取材に応じ続けていた。何をどう答えればいいのか迷い、電話がなるたび、心臓がドキドキして止まらない。ノイローゼ気味になり、病院の神経科通いは今も続く。「もう仕事のストレスに耐えられない」。解雇の通告を黙って受け入れた。
 
章さんが、三歳下の亨さんと最後に会ったのは、渡欧直前の八〇年三月。実家に立ち寄った亨さんと、健在だった両親を交えて、一家そろってにぎやかに食事を取った。日大で食品の勉強をした亨さんは、ピレネー山脈のふもとでパンやチーズ職人の技術を学びたい、と希望していた。海外へと旅立つ弟の姿を頼もしく思った。
 
職を失い実家に一日中いると、当時の記憶が鮮明によみがえってくる。間もなくアパートで一人暮らしを始めた。保険を解約し、貯金を取り崩す日々。「くよくよしても始まらない」。
  大きなハイビジョンテレビを買った。映画のソフトもそろえた。
  だが結局、その大画面で見るのは折々のニュースだけだ。帰国した五人の動向が嫌でも目に飛び込んでくる。「あの人たちは笑って見せているけど、毎日毎日、針のむしろだ。
ものすごい、つらい思いをしているはずだ」。北朝鮮に向かって心の中で叫ぶ。「弟を若いころの姿に戻して返せ」

    ☆      ☆
  「声高に帰国を訴えれば、北朝鮮で生きている弟がかえって危険にさらされる」と考えていた章さんは、今も表だって活動することは控えている。家族連絡会や救う会とは距離を置いているが、亨さんと同時期、やはりスペインで拉致された松木薫さん(当時二十六歳)の弟、信宏さん(30)とはよく話をする間柄だ。

 
昨年九月以来、信宏さんは集会に参加したり、街頭に立ったりして、積極的に救援活動に取り組むようになった。それまで、新聞販売店従業員としてセールスに明け暮れてきた信宏さんから、「仕事以外の時間は、ほとんど拉致のために割いているので、私生活のことは考えられない。結婚を考える余裕もない」と聞かされ、思わず深くうなずいた。

「拉致に巻き込まれたら、いや応なしに人生設計を放棄しなければならない。私と同じだ」
将来が見えず、押しっぶされそうな気持ちに襲われ、また、パソコンの前に座って、「泣き言」をつづる。
  「弟の姿を見るまでは、待つしかない。耐えるしかない」


石岡亨さん拉致事件
北朝鮮側によると1980年6月、特殊機関工作員が日本語教育に引き入れる目的でスペインから平壌へ拉致した。日本の警察当局は、よど号グループが関与した疑いが濃厚とみている。亨さんについて、北朝鮮側は「85年12月、有本恵子さんと結婚し、子どもが生まれたが、88年11月4日、石炭ガス中毒で家族全員が死亡した」としている。


http://nyt.trycomp.com:8080/modules/news/article.php?storyid=986
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