「拉致処分」から①
投稿者: komash0427 投稿日時: 2006/01/04 22:39 投稿番号: [224611 / 232612]
正月休みに「拉致処分」(青木直人著)を読みました。
中国専門家としてその立場から中朝、米中、日中、そして日朝という多国間の複雑な絡み合いを一つ一つの海外ニュースを集積して考察しています。
経済成長著しいといわれる中国も、東北三省(遼寧省、吉林省、黒龍江省)は北京、上海に大きく遅れを取っていて、この地域の再開発が中国政府の急務とされています。
この、東北三省はロシア、北朝鮮と国境を接し、それらの国を経て日本海へ通じています。
東北三省の成長には北朝鮮の正常安定、経済成長がどうしても必要であり、そのためには日朝国交樹立と日本から北朝鮮への経済復興資金の流入が、中国政府はのどから手が出るほど渇望していると、著者は指摘しています。
中国政府にとって日本人拉致事件などどうでもよく、中国の国益にとって日朝国交樹立と北朝鮮の復興が大きな関心事。
そうした思惑に対して、日本政府の現在の海外援助がどのような動きをしようとしているかを、アジア開発銀行に焦点を当てて解明しています。
以下は同書、第6章の中の
「5 対中ODA減少の肩代わりをするアジア開発銀行」と
「6 アジア開発銀行に『東北北朝鮮開発援助』セクション誕生」」からの抜粋。
5 対中ODA減少の肩代わりをするアジア開発銀行
アジア開発銀行(ADB)は北朝鮮への「人道援助」以上に、すでに北朝鮮プラス中国東北地方、それにロシアの極東、韓国など、6カ国協議の参加国が対象となる地域開発構想に前のめりである。
*アジア開発銀行と世界銀行は代表的な国際援助団体で、日本と米国が最大の出資国で(日本の出資比率はADBが16%)、日本は強い影響力を持っている。
東北アジア地域に、今後膨大なインフラ開発支援を予定している。これはもちろん北朝鮮への2カ国支援とはまったく別の援助になる。繰り返すが拉致問題は未解決なまま、援助へのシフト体制だけは着々と進んでいるのだ。国民はこうした事実をまったく知らない。
政府開発援助(ODA)が私たち国民の血税であるように、日本政府がこれまでADBに対して行った膨大な財政支援の出所は日本国民の税金や財政投融資なのである。そればかりかADBの総裁ポストは創設以来一貫して日本の財務省(旧・大蔵省)の高官が就任している。「財務省の植民地」というのが霞ヶ関の陰の声なのだ。
2003年末現在でADBの通常資本財源(応募済み資本ベース)520億ドルのうち、日本の出資額は82億ドル(9020億円、1ドル=110円計算)で、これはシェアで15.8%を占め、米国と共に加盟国中第1位である。
またこれとは別に内部にあるアジア開発基金201億ドルのうち、日本の拠出額は75億ドル(8250億円・シェア37.3%)で、これも加盟国中No.1の金額である。アジア開発基金というのはアジア各国の中でもバングラディシュなど最貧国を対象にした人道援助資金のことである。北朝鮮の崩壊寸前の経済状況を見れば、日朝平壌宣言にある「国際機関からの人道援助」とは具体的にはこのADBのアジア開発基金を指すと思われる。
そうなると北朝鮮には日本の円借款や無償援助に加えて、日本が最大の影響力を持つADBから最貧国への融資としてアジア開発基金からも支援が実行されるわけだ。当然ここにも日本人の血税と財政投融資が投じられるのである。
ADBの融資で気になるのは、近年の中国向け融資の異常なまでの突出ぶりにある。しかも知れは日本政府が中国の経済成長を理由に、中国向けODA、なかでも90%を円借款を減らしはじめた2000年ごろを契機に急増しているのだ。つまり外務省主導のODAは減っているのだが、財務省が影響力を持つADBからの迂回融資は逆にうなぎのぼりなのである。
具体的に数字をあげておくと(外務省主導の中国向け)円借款が2000年の2143億円をピークにして、03年度が967億円、04年度が859億円と一時の半分以下に縮小しているにもかかわらず、ADBの対中融資は今後、05年から07年までの3年間で毎年15億ドル(約1650億円)、年間で合計45億ドル(約4950億円)もの融資が決定している。毎年1650億円といえば、04年度の対中円借款のおおよそ2倍にあたる数字である。
(つづく)
中国専門家としてその立場から中朝、米中、日中、そして日朝という多国間の複雑な絡み合いを一つ一つの海外ニュースを集積して考察しています。
経済成長著しいといわれる中国も、東北三省(遼寧省、吉林省、黒龍江省)は北京、上海に大きく遅れを取っていて、この地域の再開発が中国政府の急務とされています。
この、東北三省はロシア、北朝鮮と国境を接し、それらの国を経て日本海へ通じています。
東北三省の成長には北朝鮮の正常安定、経済成長がどうしても必要であり、そのためには日朝国交樹立と日本から北朝鮮への経済復興資金の流入が、中国政府はのどから手が出るほど渇望していると、著者は指摘しています。
中国政府にとって日本人拉致事件などどうでもよく、中国の国益にとって日朝国交樹立と北朝鮮の復興が大きな関心事。
そうした思惑に対して、日本政府の現在の海外援助がどのような動きをしようとしているかを、アジア開発銀行に焦点を当てて解明しています。
以下は同書、第6章の中の
「5 対中ODA減少の肩代わりをするアジア開発銀行」と
「6 アジア開発銀行に『東北北朝鮮開発援助』セクション誕生」」からの抜粋。
5 対中ODA減少の肩代わりをするアジア開発銀行
アジア開発銀行(ADB)は北朝鮮への「人道援助」以上に、すでに北朝鮮プラス中国東北地方、それにロシアの極東、韓国など、6カ国協議の参加国が対象となる地域開発構想に前のめりである。
*アジア開発銀行と世界銀行は代表的な国際援助団体で、日本と米国が最大の出資国で(日本の出資比率はADBが16%)、日本は強い影響力を持っている。
東北アジア地域に、今後膨大なインフラ開発支援を予定している。これはもちろん北朝鮮への2カ国支援とはまったく別の援助になる。繰り返すが拉致問題は未解決なまま、援助へのシフト体制だけは着々と進んでいるのだ。国民はこうした事実をまったく知らない。
政府開発援助(ODA)が私たち国民の血税であるように、日本政府がこれまでADBに対して行った膨大な財政支援の出所は日本国民の税金や財政投融資なのである。そればかりかADBの総裁ポストは創設以来一貫して日本の財務省(旧・大蔵省)の高官が就任している。「財務省の植民地」というのが霞ヶ関の陰の声なのだ。
2003年末現在でADBの通常資本財源(応募済み資本ベース)520億ドルのうち、日本の出資額は82億ドル(9020億円、1ドル=110円計算)で、これはシェアで15.8%を占め、米国と共に加盟国中第1位である。
またこれとは別に内部にあるアジア開発基金201億ドルのうち、日本の拠出額は75億ドル(8250億円・シェア37.3%)で、これも加盟国中No.1の金額である。アジア開発基金というのはアジア各国の中でもバングラディシュなど最貧国を対象にした人道援助資金のことである。北朝鮮の崩壊寸前の経済状況を見れば、日朝平壌宣言にある「国際機関からの人道援助」とは具体的にはこのADBのアジア開発基金を指すと思われる。
そうなると北朝鮮には日本の円借款や無償援助に加えて、日本が最大の影響力を持つADBから最貧国への融資としてアジア開発基金からも支援が実行されるわけだ。当然ここにも日本人の血税と財政投融資が投じられるのである。
ADBの融資で気になるのは、近年の中国向け融資の異常なまでの突出ぶりにある。しかも知れは日本政府が中国の経済成長を理由に、中国向けODA、なかでも90%を円借款を減らしはじめた2000年ごろを契機に急増しているのだ。つまり外務省主導のODAは減っているのだが、財務省が影響力を持つADBからの迂回融資は逆にうなぎのぼりなのである。
具体的に数字をあげておくと(外務省主導の中国向け)円借款が2000年の2143億円をピークにして、03年度が967億円、04年度が859億円と一時の半分以下に縮小しているにもかかわらず、ADBの対中融資は今後、05年から07年までの3年間で毎年15億ドル(約1650億円)、年間で合計45億ドル(約4950億円)もの融資が決定している。毎年1650億円といえば、04年度の対中円借款のおおよそ2倍にあたる数字である。
(つづく)