【早紀江さん、めぐみさんを抱きしめる…】
投稿者: tommy39deo3 投稿日時: 2005/10/05 20:57 投稿番号: [219221 / 232612]
「めぐみ――」
およそ早紀江さんらしからぬ行動だった。タラップを、ゆっくりゆっくりと踏みしめるように降りてくる我が娘に向かい、思わず駆けだしたのである。
それを、我が娘めぐみさんは、一瞬、戸惑ったように脚をとめ、その駆け寄ってくる白髪の老女を見やった。
「あ――」
すぐに気づいた。めぐみさんは思わず顔を手で覆い、
「お母さん」
小さく叫んだ。
「めぐみ――」
タラップに駆けあがった早紀江さんはそのままめぐみさんの躯を抱きしめた。なでるように全身をくまなく抱きしめた。
遅れて、滋さんが二人の息子に支えられながら、笑っているのか泣いているのか判らぬ表情でトコトコと走りだした。報道各社のTVカメラが、しきりとフラッシュをたきながら争うようにそれを追う。
タラップの途中では、阿倍幹事長代理が「さ、どうぞこちらへ」と懸命に早紀江さんとめぐみさんを日本の地上まで誘導しようとしている。が、早紀江さんは動かない。顔を、ずっとめぐみさんの躯に押しつけている。28年の空白――。それを必死で埋めようとしている。
ようやく顔をあげた母親に、めぐみさんは、
「お母さん、すっかり白くなって――」
言って、今度はめぐみさんが泣きだし、その顔を早紀江さんの肩に埋めた。
滋さんはただ、おどおどしたように相変わらず笑っているのか泣いているのか判らぬ顔で、手にしたハンカチをしきりと眼許まで運んでいる。
早紀江さんも、ようやく自分ひとりが娘を独占していることに気づいたのか、
「お父さんよ――」
めぐみさんから離れ、静かに滋さんを振り返った。
めぐみさんが滋さんを見つめる。しばらく見つめ合ったあと、滋さんは、まるで照れ隠しのようにまたハンカチを眼許にあてた。
「お父さんも――」
めぐみさんは、母親と同じくすっかりと白くなってしまった父親の髪を見た。そして、父母に気をつかって後方に立ち止まっている弟らを見た。
「哲ちゃん、拓ちゃん――」
あとは誰も言葉にならない。
遠い遠い家路に、ようやくたどりついた。
(tommy編集長)
これは メッセージ 219217 (tommy39deo3 さん)への返信です.
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