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『敗戦への三つの思いこみ』

投稿者: hangyosyufu 投稿日時: 2005/06/03 02:55 投稿番号: [205382 / 232612]
山口洋一(頸草書房)

日本外交のおかしさについて率直に意見を開陳されている。

東京裁判と欧米の価値観への絶対視は誤謬に満ちた思いこみである、という観点から論が展開される。
 
三つの思いこみとは、

(1)軍部主導の日本政府の政策方針決定に関して、常にその根底にあった発想、

(2)マインドコントロールに陥った日本国民の心理、

(3)有色人種蔑視に根ざした欧米人の思考形態、であるとされる。
 
本書が最後に付録として掲載している「機密文書」が重要である。
 
昭和26年に外務省内で秘密会がもたれ、日本外交が満州事変以降、軍縮会議脱退、シナ事変、日ソ不可侵条約の締結、日独伊三国同盟、日米交渉へといたる日本外交の「過誤」についての外務省調書(貴重な歴史資料でもある)が巻末に掲載されている。
 
この調書はながく飯倉公館に眠っていたが、情報公開法にもとづいて閲覧可能となったのはつい最近のことである。

「満州事変の勃発以来、太平洋戦争における敗戦に至るまでの一連の事象も、いわば必然の運命」

というのも直前までの日本の経済的苦境「社会不安が瀰漫していた」が「政党は腐敗していた」

そのため「国家革新を唱える一部の勢力に政治進出の機会をあたえた」と時代背景が総括されている。
 
これは左翼史観が入り交じった考え方で、「太平洋戦争」というタームを昭和26年にはやくも外務省エリートが躊躇なく使用していることからも窺える。

「太平洋戦争」は、言うまでもなくGHQ占領中にアメリカが強要した連合国一辺倒の改竄史観、日本人ならば「大東亜戦争」を使用すべきである。
 
「関東軍の強硬派」「他動的に戦争にはいった」「松岡外相は独自のグランドデザインをもっていた」

(ノモンハン直後からの)「外交のイニシアティブは常にソ連の手中にあった」

「大東亜共栄圏の夢におぼれて」、敵の「戦意、底力を過小評価し、情勢判断を根本的に誤った」「誇大妄想」
 
ようするに軍が悪いとする総括のなかで外務省の反省が微塵もないのである。
 
この文書のなかで鮮明に外務省が自省した箇所は「ソ連による中立条約の廃棄の重大さを自覚もせず、またかりに自覚していたにしても、これを終戦をもたらす上に国内的に利用しようとはしなかった」とした箇所だけである。
 
しかし戦後外交の出発点に際して、当時の外務省エリートがいかなる世界観で望んでいたか、時代的ニュアンスが了解できて参考になった。
 
山口元大使が、この機密文書を巻末にかかげて現代の外交を対比させる、或いは固定的なイメージと重複させる意図は奈辺にあるのか。
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