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北朝鮮と「拉致問題」の基礎知識

投稿者: sa_bo_ten_02 投稿日時: 2004/05/18 19:54 投稿番号: [127029 / 232612]
北朝鮮と「拉致問題」の基礎知識

代表   藤岡信勝




  北朝鮮と「日本人拉致問題」は、いずれ将来、学校の教室でも教えなければならない現代史のテーマとなるであろうから、今回は拉致問題の歴史的背景に関する基礎知識を整理することから始めたい。

  まず、次の年表(西暦の上二桁「一九」は省略)に記された九件の出来事をなるべく関連づけて説明することを試みていただきたい。焦点は?横田めぐみさんら日本人の拉致事件であり、この事件がなぜ起こったかということについての、出来事相互の因果関係の説明である。

?四五   ソ連、北朝鮮を占領
?四八   金日成政権樹立
?五〇〜五三   朝鮮戦争
?五五   朝鮮総連結成
?五九 北朝鮮への帰国事業開始
?七〇   よど号ハイジャック事件
?七四 文世光事件
?七七〜七八   横田さんら拉致事件
?八七年   大韓航空機爆破事件

  このうち、文世光事件は知名度が低いと思われるので、簡単に事実を書いておく。一九七四年、北朝鮮の工作員が在日韓国人の文世光という男を洗脳し、韓国の朴正煕大統領を暗殺すれば南北は統一すると信じ込ませ、偽造した日本人パスポートを持たせて韓国に送り込み、朴大統領を狙撃させた事件である。銃弾は大統領には当たらず、そばにいた大統領夫人が犠牲になった。
それでは、以下、私なりの答案のつもりで右の年表の?から?までの出来事のつながりを書いてみる。


日本人はなぜ拉致されたか─その歴史的背景

?   一九四五年八月、ソ連は対日参戦し、朝鮮半島の北半分をたちまち軍事占領した。朝鮮には一九二0年代から民衆の間に語り継がれていた「金日成将軍」という名前で知られる抗日の英雄がいた。ソ連はこの伝説を利用し、北朝鮮の支配に役立てた。すなわち、ソ連軍の大尉であった「キム・ソンジュ」という三十三歳の青年を伝説的な英雄である金日成将軍にすり替えて朝鮮民衆の前に送り出した。

?   朝鮮半島は北緯三十八度線を境に、その南半分をアメリカが、北半分をソ連が占領したが、もともとは一定の期間を経て半島全体を統一した国家にすることが国際的な戦後処理の方針だった。ソ連はその方針に反し、一九四八年、北半分を「朝鮮民主主義人民共和国」として切り離してソ連の傀儡国家をつくり、その首相に金日成を据えた。これによって北朝鮮は共産主義国家としての路線が確定し、朝鮮半島の南北分断は固定化された。

?   一九五〇年六月二十五日、北朝鮮は三十八度線を突破して朝鮮半島南部に武力侵攻した。金日成は、ソ連のスターリンの了解のもとに武力で南進し自らの手による朝鮮半島の統一を果たそうとしたものであった。これに対しアメリカを中心とする国連軍が対抗し、朝鮮戦争となった。戦況は一進一退を繰り返したが、一九五三年、三十八度線を停戦ラインとする停戦協定が結ばれた。以後、朝鮮半島の武力統一が北朝鮮の国是となった。

?   ここまでが、拉致問題にいたる最も基礎的な前提知識である。以上の経過の概略を手軽に知るには、さし当たり、萩原遼『朝鮮戦争』(文春文庫)を参照されたい。


  戦後、日本に残留した在日コリアンの中には、一定数の共産主義者がいた。彼らは当然ながら北朝鮮にアイデンティティーを寄せていたが、「一国一党」という国際共産主義運動の原則に基づき、日本国内で日本共産党員として活動していた。しかし、金日成は一九五〇年頃から、在日朝鮮人は日本革命より朝鮮革命に参加するのが筋であるという主張を在日朝鮮人の中に持ち込んだ。一九五五年、「在日本朝鮮人総連合会」(略称・朝鮮総連)が大衆団体として組織された。これを機に在日朝鮮人の党員は全員が日本共産党から離脱し、金日成の朝鮮労働党の支配下に組み込まれた。

?   そして、金日成は在日朝鮮人の帰国事業を発案した。その目的は、帰国した人々を人質にして、在日朝鮮人六十万人を自らの支配下に置くことだった。そのため、北朝鮮を「地上の楽園」として描き出すプロパガンダ映画がつくられ、盛大な宣伝が展開された。一九五九年を皮切りに、一九八二年に至るまで、九万三千人の在日朝鮮人が北朝鮮に帰国した。しかし、彼らが直面したのは、「地上の楽園」ならぬ「この世の地獄」だった。
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