アーミテージ・ドクトリン
投稿者: kuecoe 投稿日時: 2004/02/05 20:02 投稿番号: [105094 / 232612]
http://www.asahi.com/column/funabashi/ja/TKY200402050130.html
船橋洋一
リチャード・アーミテージ米国務副長官は、2日の日本記者クラブでの記者会見で、「日米安保条約では日本の施政の下にある領域への攻撃があれば、それは米国への攻撃と見なされる」と述べた。
同条約第5条(共同防衛)の内容を述べたまでで、別に目新しいことでも何でもない。
しかし、事情に通じた米国務省の東アジア専門家はアーミテージ氏が「日本」とか「日本の領土」ではなく「日本の施政の下にある領域」(administrative territories)という表現を使ったことに言及し、その含意は尖閣諸島(中国名、釣魚島)を想定しての発言であることに注意を促した。
その上で、「かつての米政権のこの問題に対するあいまいな姿勢を修正したものだ」とも付け加えた。
「かつての米政権の姿勢」とは、尖閣諸島をめぐる日中間の領有権問題に関して米国は「中立」姿勢を維持し、ここでは安保条約上の防衛義務を必ずしも負わないとするクリントン政権の方針のことだ。アーミテージ氏は、それを修正し、「日本の施政の下」にある尖閣諸島が攻撃されれば、米国は防衛義務を負うことを明確にした、というのだ。アーミテージ・ドクトリンの誕生と言ってもよい。
先月も、中国の100トン級の漁船2隻が、尖閣諸島の日本の領海内に侵入した。
福建省で発行されている中国の「海峡都市報」(1月15、18日付)は、次のように記している。
活動家たちは、中国政府の「無居民海島保護及び利用管理規定」の公布、施行に伴って「釣魚島」の開発が「日程」に上ってきたとして、「調査船」を現地に送った。「領土主権」を内外に示すとともに観光旅行開発に向けた実地調査を意図したものだ。「調査隊員」たちは、上陸に成功すれば「中国領土釣魚島」と記した石碑を20本、島上に建てる予定だったが、日本の海上保安庁の巡視船に阻まれ、上陸は断念。石碑1本を領海内海底に沈め、中国の主権を宣言した。2隻とも福建省アモイに寄港した。活動家たちは、国家海洋局に「調査報告」を提出し、政府に「釣魚島租借」を申請する手続きを進める方針である。
中国の海洋攻勢は尖閣諸島の領有権にとどまらない。国連海洋法条約に基づく大陸棚の外側限界線画定を有利にしようと精力的に海洋データを集めている。そのこと自体は問題ないが、中国の海洋調査船はしばしば日本の領海と排他的経済水域(EEZ)で通常の航海以外の活動を行っている。日中間で合意された東シナ海での科学調査についての相互事前通報の通知範囲を逸脱した活動もある。
中には潜水艦の航行のための情報収集もあると見られている。潜水艦は他国の領海内でも浮上、旗を掲げて航行すれば国際法違反ではないし、中国がそれに違反したわけではない。だが、日本の南西の海での中国の潜水艦の活動は日本の安全保障上の関心を呼ばざるを得ない。おそらくそれは台湾海峡緊張の際、米空母に対する脅威感を高め、米国を牽制(けんせい)するためだろう。
もっとも、防衛庁海上幕僚監部将官は「中国のやり方は、大陸棚のための調査も潜水艦のための調査も、国としてシステマティックに行っていると見るべきだ」と言う。中国は黄海、東シナ海、南シナ海の三つを「海洋国土」と形容し、中国海軍はこれらの海域での海洋権益の防衛を主要任務の一つと位置づけている。最近は、この海域での海軍と空軍への資源配分に重点を置き始めている、と分析する。
米側はアーミテージ・ドクトリンをメガホンでがなり立てる気はないようだ。それが賢明である。静かに執拗(しつよう)に日米でそれを維持していけばいい。
北朝鮮の核問題解決に向けて6者協議を進めている時だ。中国を下手に刺激するべきではない。
しかし、そうした節度を十分わきまえた上で、日本は海洋国家として何を守り、何を譲るのか、将来、中国とどのように海洋での共存の構想を描くのかを、国益と安全保障の観点から明確にし、覚悟を決めなければならない。そして、中国には日本の譲れない一線をくどいくらい伝え、行動で示すことだ。「以心伝心」も「惻隠(そくいん)の情」も逆効果である。中国は日本の意思の強さを試しているのだ。
まず、中国の尖閣諸島の領海突入を含め、海洋調査面での違反、問題事例を公表するべきだ。それから、中国政府に誠意ある回答と善処を求める。
それでも、このような状況が続くようなら、尖閣諸島に不法上陸を試みる外国船舶は拿捕(だほ)する方針で臨む。その旨を中国政府に通知する。
(2004/02
船橋洋一
リチャード・アーミテージ米国務副長官は、2日の日本記者クラブでの記者会見で、「日米安保条約では日本の施政の下にある領域への攻撃があれば、それは米国への攻撃と見なされる」と述べた。
同条約第5条(共同防衛)の内容を述べたまでで、別に目新しいことでも何でもない。
しかし、事情に通じた米国務省の東アジア専門家はアーミテージ氏が「日本」とか「日本の領土」ではなく「日本の施政の下にある領域」(administrative territories)という表現を使ったことに言及し、その含意は尖閣諸島(中国名、釣魚島)を想定しての発言であることに注意を促した。
その上で、「かつての米政権のこの問題に対するあいまいな姿勢を修正したものだ」とも付け加えた。
「かつての米政権の姿勢」とは、尖閣諸島をめぐる日中間の領有権問題に関して米国は「中立」姿勢を維持し、ここでは安保条約上の防衛義務を必ずしも負わないとするクリントン政権の方針のことだ。アーミテージ氏は、それを修正し、「日本の施政の下」にある尖閣諸島が攻撃されれば、米国は防衛義務を負うことを明確にした、というのだ。アーミテージ・ドクトリンの誕生と言ってもよい。
先月も、中国の100トン級の漁船2隻が、尖閣諸島の日本の領海内に侵入した。
福建省で発行されている中国の「海峡都市報」(1月15、18日付)は、次のように記している。
活動家たちは、中国政府の「無居民海島保護及び利用管理規定」の公布、施行に伴って「釣魚島」の開発が「日程」に上ってきたとして、「調査船」を現地に送った。「領土主権」を内外に示すとともに観光旅行開発に向けた実地調査を意図したものだ。「調査隊員」たちは、上陸に成功すれば「中国領土釣魚島」と記した石碑を20本、島上に建てる予定だったが、日本の海上保安庁の巡視船に阻まれ、上陸は断念。石碑1本を領海内海底に沈め、中国の主権を宣言した。2隻とも福建省アモイに寄港した。活動家たちは、国家海洋局に「調査報告」を提出し、政府に「釣魚島租借」を申請する手続きを進める方針である。
中国の海洋攻勢は尖閣諸島の領有権にとどまらない。国連海洋法条約に基づく大陸棚の外側限界線画定を有利にしようと精力的に海洋データを集めている。そのこと自体は問題ないが、中国の海洋調査船はしばしば日本の領海と排他的経済水域(EEZ)で通常の航海以外の活動を行っている。日中間で合意された東シナ海での科学調査についての相互事前通報の通知範囲を逸脱した活動もある。
中には潜水艦の航行のための情報収集もあると見られている。潜水艦は他国の領海内でも浮上、旗を掲げて航行すれば国際法違反ではないし、中国がそれに違反したわけではない。だが、日本の南西の海での中国の潜水艦の活動は日本の安全保障上の関心を呼ばざるを得ない。おそらくそれは台湾海峡緊張の際、米空母に対する脅威感を高め、米国を牽制(けんせい)するためだろう。
もっとも、防衛庁海上幕僚監部将官は「中国のやり方は、大陸棚のための調査も潜水艦のための調査も、国としてシステマティックに行っていると見るべきだ」と言う。中国は黄海、東シナ海、南シナ海の三つを「海洋国土」と形容し、中国海軍はこれらの海域での海洋権益の防衛を主要任務の一つと位置づけている。最近は、この海域での海軍と空軍への資源配分に重点を置き始めている、と分析する。
米側はアーミテージ・ドクトリンをメガホンでがなり立てる気はないようだ。それが賢明である。静かに執拗(しつよう)に日米でそれを維持していけばいい。
北朝鮮の核問題解決に向けて6者協議を進めている時だ。中国を下手に刺激するべきではない。
しかし、そうした節度を十分わきまえた上で、日本は海洋国家として何を守り、何を譲るのか、将来、中国とどのように海洋での共存の構想を描くのかを、国益と安全保障の観点から明確にし、覚悟を決めなければならない。そして、中国には日本の譲れない一線をくどいくらい伝え、行動で示すことだ。「以心伝心」も「惻隠(そくいん)の情」も逆効果である。中国は日本の意思の強さを試しているのだ。
まず、中国の尖閣諸島の領海突入を含め、海洋調査面での違反、問題事例を公表するべきだ。それから、中国政府に誠意ある回答と善処を求める。
それでも、このような状況が続くようなら、尖閣諸島に不法上陸を試みる外国船舶は拿捕(だほ)する方針で臨む。その旨を中国政府に通知する。
(2004/02
これは メッセージ 1 (mitokoumon_2002 さん)への返信です.