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鼻持ちならない朝日報道

投稿者: yohei_bonobo 投稿日時: 2007/05/01 00:57 投稿番号: [35094 / 52541]
高山正之帝京大学教授


昔、羽田の記者クラブにいたころの話だ。真昼間に全日空羽田発札幌行きのジャンボ機が若い男にハイジャックされた。

男はズボンのポケットに手を入れて何か武器を持っているかのように装って操縦席に入り込んだ。今みたいに操縦席のドアに鍵もかけていない、警官も添乗していない時代の話だ。

ジャンボ機は羽田に引き返す。警備員を装った警官が機内に入り、あっけなく犯人を取り押さえた。それも当然というか、男は母親と二人暮らしの高校生で、ズボンのポケットには菓子パンが入っていただけだった。事件は正味二時間で終わった。

しかしハイジャックはハイジャックだ。運輸省も全日空も安全管理に一層の努力を約束し、さらに全日空は再発防止の一環として犯人に約七百万円の賠償を請求することに決めた。請求額は事件でキャンセルされた便の保障など直接出費に限り、それも「取り立てる気はない。ただ犯罪がいかに間尺に合わないか、どんな痛いしっぺ返しがくるか、それを世間に知らせたい、そういう趣旨です」と全日空は記者会見で説明した。

あれぐらいの騒ぎでも結構、多くの人が迷惑を蒙り大きな経済負担があるものだ。その驚き分で三十行ほど記事を書いた。翌日の社会面に二段見出しで載った。いいサイズだ。

しかし朝日新聞(昭和五十九年九月二日)は違った。社会面のトップで「ハイジャックみせしめ 694万円」ときた。

記事もすごい。見せしめのための損害賠償は議論を呼びそうとか二人の識者を使って「防止効果には疑問」「親苦しめるのは酷」のどうのこうの。

読めばわかるようにこれは黒を白といっている。真っ当ではない。ただ腹立たしいことにどこがいんちきかというと意図がへんなだけ個々の事実に嘘はない。

確かにかたや可哀相な母子家庭で、かたや大航空会社で営利追求はする。だからといってスターリンの粛清文句ではあるまいし、全日空が阿漕に母子家庭に差し押さえかけたじゃない。

しかし文意はそう受け取れ、朝日はそういう全日空を厳しくたしなめる。実に鼻持ちならない。

朝日新聞は「まさか」ではなく、やはりおかしい、異常だという確信がこのとき生まれた。それからまるまる三十年。残念ながら「確信」は裏切られることなく、むしろより異常さが増幅しているように思う。


※暇を見て、この続きも紹介するつもりです。
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