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『王の男』

投稿者: anthoniy_williams 投稿日時: 2009/03/13 22:04 投稿番号: [672 / 768]
今年のアカデミー賞ドキュメンタリー部門を受賞した「マン・オン・ワイヤー」は、あの9・11テロで崩壊したツインタワーをフランス人大道芸人が綱渡りしたという実話ドキュメントである。

30年前の当時、高さ世界一のビルの間の綱渡りを達成するための信念や困難が描かれているとのことだが、それは違法行為でもあるし命綱もなしでなぜそんなことができたのか?

「死を自覚することで人間は死に対して自由になる」と語ったのはハイデガーである。死を逃れられないものとして覚悟をきめることで、人間は目標にむかってその可能性を最大限に引き出せるということなのだろう。

そんな危険を承知で、生と死ぎりぎりの”エッジ”にあえて身をおく人たちがいる。ただ漫然と生きる日常に耐えられず、そのエッジぎりぎりのところまで行ってみなければ気がすまない人たちだ。

現代では冒険家や登山家くらいなものだろうか。   功名心でもなく金銭が目的でもなく、それでもあえて死の入り口まで踏み込んでいくことは常人には理解しがたいことななのだが、そうでもしなければ成し遂げられない成果が人類を進歩させてきた一面があることもたしかだ。



さて、この映画のテーマも死をも恐れぬ芸人の求道心である。

時代は朝鮮の中世、王の悪政により庶民が苦しんでいたころの話だ。大道芸人である主人公の得意の芸は綱渡りであり、王を風刺した寸劇も演じる。

その劇が王の怒りを買い、捕らえられ死刑になるのだが、芸によって王を笑わせたことによって一度は許される。そして王家の専属の芸人となるのだが、それでも芸を求道する心はふたたび王を批判する芸に行き着く。そこには死を覚悟しながらも芸で最高のパフォーマンスを演じようとする主人公の求道心が見事に表現されている。

出演者にとりたてて有名な俳優はいないが、韓国では国民4人に1人が見たという大ヒットになったらしい。韓国人は良いものは良いとわかる人が多いのだろうか?

日本映画「おくりびと」がそれほど話題にもならず観客もガラガラだったのが、アカデミー賞をとったとたんに映画館に行列ができたのと対照的である。


評価   5
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