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『力道山』

投稿者: anthoniy_williams 投稿日時: 2009/02/24 22:41 投稿番号: [626 / 768]
美空ひばりは昭和の芸能界最大のスターといえるだろうが、田岡一雄、山口組三代目組長の力添えが大きかったことはつとに知られるところである。   芸能界、スポーツ界などの興行の発展にとって、裏社会との関わりが切っても切れないものであったこともたしかで、それが必要悪といえるかどうかの判断はわかれるところだろう。   そして戦後間もない日本のもう一人のスーパースターが力道山であった。

戦後の焼け野原、自信を失った日本人にとって、欧米のレスラーをつぎつぎとなぎ倒す力道山の姿はテレビ中継がはじまったばかりの日本を熱狂の渦に巻き込み、日本の復興と経済発展における精神的な支えとしての役割を果たしたといわれる。

さて映画のほうだが、まずキャバレーでの力道山の不可解な言動が伏線として提示される。   そして相撲部屋へ入門するのだが、朝鮮人であるがゆえに壮絶ないじめに遭う。それに耐えに耐えて、有力なタニマチをつけて関脇にまでのぼりつめるが、ふたたび差別のために大関昇進を果たせず、やがてプロレスラーに転向、朝鮮人であることを隠し日本のスーパースターとなる。

その「栄光と破滅」がこの映画のテーマである。

「人は完全な理想の存在になりたいと願っている」とプラトンは言ったが、完全さを求めれば求めるほど失うものも多いのだとこの映画は教えてくれる。力道山も完全を求めすぎた。「絶対に負けない力道山、力道山こそがプロレスであり、力道山のないプロレスはない」と。八百長の要求にただ一度の負けさえも受け入れず、気づいたときに周りは敵だらけ。やがて後援会会長にも見放され、キャバレーでの刺殺シーンへ。

実際に体をつくって力道山になりきる主演のソル・ギョングの演技の素晴しさ、そしてそれ以上の演技を見せたのが後援会会長を演じた藤竜也であり、中谷美紀、萩原聖人の助演も光る。

戦後日本の時代背景のビジュアル的な演出も完璧であるし、娯楽性のなかに差別という社会性の織り込みかたなども見事だ。


評価   5
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