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朝鮮通信使 13

投稿者: hendazo04 投稿日時: 2009/08/17 04:52 投稿番号: [346 / 402]
この日、六月十日は朝鮮人武者の弓技が上野東叡山で披露された。歩射と騎射に分かれ、歩射は百三十歩の距離から立ち居で的を射るもので、七人が各五本の矢を放った。成績は五本全部当たったのが三名、三本が三名、二本は一人だった。
騎射とは流鏑馬のことで八人が参加、馬を疾走させながら藁人形を射る。「・・の三人が三本当て、後の五人はみな五本全部当て、見物の人びとはみな驚嘆したと信使側は自画自賛している。司馬遼太郎氏によると、朝鮮北境守備隊の兵隊クラスの中から、弓の名人を通信使として連れてきたとのことである。」引用本
こういった華やかな行事とは別に将軍家重の「署名問題」は継続した。
「『この上は速やかにご帰国されるように』との対馬藩の願いにもかかわらず、朴上々官は聞き入れず先ず書翰を改めてきますといって帰った。そして夜も更け明け方に今度は洪上々官が書き改めた書簡を持参した。そしてこのままでは明日の饗応は三使とも受けられないといい、いろいろ話し合うが承引せず、暁になり対馬守はお暇の登城が控えており差し支えるので、明日返答することにして洪上々官は帰った。」引用本。

六月十一日、「昨夜の三使からの書翰に対する返事を用人に持たせ東本願寺へ届けさせた。しかし信使側は納得せず、話し合いが延々と続いた。最後に三使は、このことが解決せねば帰国して申し開きができないが、対馬守が公儀に決して取り次がないとのことであれば、いままで隔意なく海陸諸事介添え下さったのに疎意になっては困るので、書翰のやり取りはこれで終わり、いままで往復した書翰はお互い交わさなかったことにしたいという。」引用本

なんのことはない、双方が受け取った書翰をお互いに返し、今までのことはなかったことにしてくれというのだ。改選がなければ帰国できないんじゃないの?と嫌味を言いたくなるが、事実署名問題は帰国後なんら詮議にならなかったことだし、相手の立場迷惑を考慮せず体力の限りを尽くして粘着したのも、我のことは大げさに騒ぎ立てる大陸人固有の権利意識のなせる技だろうか。ほとほと疲れる民族ではある。

先日対馬で船もろとも焼失した荷物の何回目かの補給品が届く。そのなかに一行の衣類もあった。彼らの着替えのほとんども焼けて、いままで幕府から借りていたのだ。さらにこの日幕府は「副使駕船焼失に付き、晒し布三百疋」その他を通信使に届けるが信使側は、「焼失した入用の品々は朝鮮より取り寄せたので、拝領物はお断りいたしますという。」対馬藩は「将軍の下され物を断るとは無礼であろう」と咎め、目録を受け取らせて「今晩本丸の老中方にお礼に回るようにという。」信使は従い、陽が落ちてから酒井雅楽頭・本多伯耆守・松平右近将監・堀田相模守の屋敷をお礼に回った。
これが彼らの最後の抵抗であったようで、その後のツッパリは引用本に書かれていない。

また、通信使は駄々をこねながらもやることだけはやっている。奉使録に、「副使付の軍官にオランダ製の火砲と日本の陣法図を密かに求めさせたが、火砲一基と城池陣法図が手に入り、どちらもかなり良好なものであると記されており、探情使の役目を果たしている。」引用本

しかしこの件はちょっと疑問を感じる。火砲(大砲)は大阪の陣で家康が使用しているが、日本国内においてメジャーな武器ではない。国内の基数も多寡が知れているだろうし、図体もでかい。幕府に内密に調達運搬できるものではないと思うが、この点について引用本はなにも触れていない。

一日置いて六月十三日、五百名近くの通信使がいよいよ帰郷の途につく日だ。国書呈上の日から20日ほど、大役は終えたというものの江戸滞在はいわば敵国の懐に抱かれたようなもの、気の休まるものではなかったろう。「昨日までの雨もあがって、信使一行は欣喜雀躍した」奉使録
帰路のほとんども日本国内の旅程となるが、前途には渇するが如き麗しき故郷がある。思えば故地を出てから半年あまり、そこには妻が居、子どもが居、恋人や親兄弟が待っている。東海道の上りの第一歩は解放への一歩でもあった。彼らの足はレレレのおじさん見たく空回りしたことだろう。

「信使一行は、来た時と同じように大勢の見物人に見送られ、炎暑のなか海岸通りにかかると海風が心地よい。三使は滞在中、公式儀式意外には外出していないので、心身の爽快さは籠から放たれた鳥以上であるといい、市場の店には赤い紙に「清道」と書いた旗や、行列の様子を書いたものが売られており、子どもたちが先を争って買っているなど町の様子を観察している。」引用本

つづく
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