鬼畜
投稿者: kim_taek_joo 投稿日時: 2006/07/21 22:02 投稿番号: [12485 / 29399]
吉川准尉のいらだった声が耳もとに響くのに、弾丸にあたって死んだ羽田の復仇心が、ムラムラと起こってきた。それよりも、もっと殺意が動いたのは、人殺しを何回となくやっている古兵のくせに、女、子供ぐらい殺すのに躊躇する自分が、意気地なしに思えたことによる。また小隊長の前で、腕のあげどころだと考えた私は、殺す腹がきまると、どのように殺してやろうかという、凶暴な殺気にみなぎっていた。
「どうか許してください……私には子供が…」
目に涙をいっぱいため、拝むようにして、私の足もとににじりよる女は、血を吐く切実な救いを、侵略者の私に求めているのだ。
「あなたには、父もあり母もある、兄妹もあるでしょう」
と、人の子と思えばこそ、人間の顔をしている私に、いたいけない無邪気な、この三人の子を、可憐と思うならと……私の一かけらの良心を求め、とりすがり、哀訴している。にじみ出た母親の涙の訴えを、私には聞き入れる良心の一片すら、どこにも見出せない、けだものだった。
「命令だ!」上官の命令は、天皇陛下の命令だ、と絶対服従の天皇を崇拝した「大和魂」をつけた私は、まさに、血に飢えた獣だった。キバをむいて荒れ狂った。私は女の横腹を思い切りけとばした。そして、母の背に、小さくなってふるえ泣き叫ぶ男の子の襟首をわしづかみに、岩石に叩きつけた。「アイヤァ…小孩子……小孩子!」
母親は、蹴られた痛みをこらえ、狂気のように岩石の上にあおむけに転がった男の子の体にしがみつき、離すまいと、固く胸もとにかばい、必死になって我が子を守ろうとして、突き出した私の銃剣をおさえた。
「クソ!反抗しやがるか!」
いきり立った私は、銃身で母親の顔を力いっぱいなぐりつけた。「あっ…」と、のけぞる女の顔は、皮膚が破れ、真っ赤な血が顔一面に吹き出した。それでもなおも我が子に近よろうと、赤子を胸に抱き、這いよってきた。
「小孩子……小孩子……」と叫ぶ母の声に……
「媽……媽……!」
口から血を吹きだした男の子は、母のもとに四ツ這いににじりよった瞬間、私はその横腹に銃剣を芋刺につきさした。オカッパの女の子が「ワー……」と、顔に小さな両手をあて泣き出すのを、胸もと目がけて芋刺にし、岩石に叩きつけた。
「アイヤァ…ウ…」
母親は悲しみと憤怒に燃え「鬼子!」と叫んだ。そして血みどろの中でもがき、二人の愛児の屍にしがみついた。私は、呪いのこもった女の目に、ギョッとして、ひとかたまりになった母子の体を蹴とばし、女の腹を深く銃剣で突き刺した。
せまい山のほら穴の前の岩壁に囲まれた地点は、母子の血が、岩石の間を流れ出し、血だるまとなった母親は、固く赤子を抱きしめ……二人の子供の屍に重なり合い、苦しみもだえ、屍を抱きしめた。そしてだんだん唇が紫色に変色していく母親は、「オギャア、オギャアー」と泣く赤子の声に、薄く目をあけ、血にドロドロに染まった胸の衣を引き裂き、乳房を赤子の顔にあて、がっくりうっぷしてしまった。万魁のうらみをのんで私に殺された婦人の魂は、永久にその憎しみと呪いは消えない深い深いこのうらみを、中国の六億の同胞に訴えているのだ。
泣き叫ぶ赤ん坊は、冷たくなった母の胸もとに顔をよせ、紅葉のような両手をひろげ乳房を血の中に探し求めていた。
親が殺され、姉兄が殺されたのも知らぬ、無心な赤子は、けがれのない純真無垢な、人間の子として、本能的に母の肉体を求め、愛情を求めている。
血のしたたる銃剣をさげ、荒い息を吐きながら、
突っ立った私のうしろから……
「ウッ……よーし、それで良い、今度はこいつの首斬りの番だ!」
吉川准尉の哄笑する、薄気味の悪い声が響いた。そして、私が縛った男は崖下で、吉川准尉の軍刀で首を斬られて殺された。
私は、今……何の理由もなく、ただ「戦争という、公然な理由をつけ」虐殺した、滔天の罪に深い慙愧と悔悟の念でいっぱいです。
「どうか許してください……私には子供が…」
目に涙をいっぱいため、拝むようにして、私の足もとににじりよる女は、血を吐く切実な救いを、侵略者の私に求めているのだ。
「あなたには、父もあり母もある、兄妹もあるでしょう」
と、人の子と思えばこそ、人間の顔をしている私に、いたいけない無邪気な、この三人の子を、可憐と思うならと……私の一かけらの良心を求め、とりすがり、哀訴している。にじみ出た母親の涙の訴えを、私には聞き入れる良心の一片すら、どこにも見出せない、けだものだった。
「命令だ!」上官の命令は、天皇陛下の命令だ、と絶対服従の天皇を崇拝した「大和魂」をつけた私は、まさに、血に飢えた獣だった。キバをむいて荒れ狂った。私は女の横腹を思い切りけとばした。そして、母の背に、小さくなってふるえ泣き叫ぶ男の子の襟首をわしづかみに、岩石に叩きつけた。「アイヤァ…小孩子……小孩子!」
母親は、蹴られた痛みをこらえ、狂気のように岩石の上にあおむけに転がった男の子の体にしがみつき、離すまいと、固く胸もとにかばい、必死になって我が子を守ろうとして、突き出した私の銃剣をおさえた。
「クソ!反抗しやがるか!」
いきり立った私は、銃身で母親の顔を力いっぱいなぐりつけた。「あっ…」と、のけぞる女の顔は、皮膚が破れ、真っ赤な血が顔一面に吹き出した。それでもなおも我が子に近よろうと、赤子を胸に抱き、這いよってきた。
「小孩子……小孩子……」と叫ぶ母の声に……
「媽……媽……!」
口から血を吹きだした男の子は、母のもとに四ツ這いににじりよった瞬間、私はその横腹に銃剣を芋刺につきさした。オカッパの女の子が「ワー……」と、顔に小さな両手をあて泣き出すのを、胸もと目がけて芋刺にし、岩石に叩きつけた。
「アイヤァ…ウ…」
母親は悲しみと憤怒に燃え「鬼子!」と叫んだ。そして血みどろの中でもがき、二人の愛児の屍にしがみついた。私は、呪いのこもった女の目に、ギョッとして、ひとかたまりになった母子の体を蹴とばし、女の腹を深く銃剣で突き刺した。
せまい山のほら穴の前の岩壁に囲まれた地点は、母子の血が、岩石の間を流れ出し、血だるまとなった母親は、固く赤子を抱きしめ……二人の子供の屍に重なり合い、苦しみもだえ、屍を抱きしめた。そしてだんだん唇が紫色に変色していく母親は、「オギャア、オギャアー」と泣く赤子の声に、薄く目をあけ、血にドロドロに染まった胸の衣を引き裂き、乳房を赤子の顔にあて、がっくりうっぷしてしまった。万魁のうらみをのんで私に殺された婦人の魂は、永久にその憎しみと呪いは消えない深い深いこのうらみを、中国の六億の同胞に訴えているのだ。
泣き叫ぶ赤ん坊は、冷たくなった母の胸もとに顔をよせ、紅葉のような両手をひろげ乳房を血の中に探し求めていた。
親が殺され、姉兄が殺されたのも知らぬ、無心な赤子は、けがれのない純真無垢な、人間の子として、本能的に母の肉体を求め、愛情を求めている。
血のしたたる銃剣をさげ、荒い息を吐きながら、
突っ立った私のうしろから……
「ウッ……よーし、それで良い、今度はこいつの首斬りの番だ!」
吉川准尉の哄笑する、薄気味の悪い声が響いた。そして、私が縛った男は崖下で、吉川准尉の軍刀で首を斬られて殺された。
私は、今……何の理由もなく、ただ「戦争という、公然な理由をつけ」虐殺した、滔天の罪に深い慙愧と悔悟の念でいっぱいです。
これは メッセージ 1 (yuukouheiwa さん)への返信です.