困難克服した医師の生涯
投稿者: elgfare 投稿日時: 2007/12/24 22:53 投稿番号: [80470 / 230347]
http://www.worldtimes.co.jp/syohyou/bk030623-1.html
『許浚』上・下を読む
李恩成著
困難克服した医師の生涯
李朝時代に漢方医学の「東医宝鑑」を集大成した医師、許浚の生涯を描いた大河小説である。韓国ではテレビドラマ化され、視聴率60%という驚異的な数字をたたき出した。
原作名は「小説東医宝鑑」だが、日本になじみがないため、主人公名の「許浚」としてあるが、この名前とて知る人は少ないだろう。ところが、一巻五百四十ページ、二段組で上下の大作のページをめくると一気に読まされる。
主人公の波瀾(はらん)万丈の生涯、過酷な朝鮮の身分制度、王宮で繰り広げられる権謀術数、何度も窮地に追い込まれながら、信念を貫いて困難を克服していく許浚の強さ――。
小説のつぼを心得た構成と展開に読者はぐいぐい引き付けられ、李朝の医師をめぐる世界に引き込まれる。
許浚が医師を目指した強い動機ともなっているのが、すさまじいばかりの身分制度だ。両班(ヤンバン)を頂点とした身分制度の最下層に属すのが「婢(はしため)」であり、それも何種類にも分かれている。
主人公の父は両班でありながら、母親が「婢女(ひじょ)」であったため、その子も生まれながらにして「婢」の身分から抜け出せない。その母親も元はといえば、両班だったが、罪に問われて婢に落とされた者だった。
この身分制度から逃れられる唯一の道が医師となること。許浚は師を得て、医学の道に励み、科挙をはるかに上回る難関の「取才」を突破し、晴れて王宮の内医院の医員となる。
だが、医療は権威でもなければ、財でもない、病人を治す「真心からいたわる心があって」こそ「心医」に至れるとの信念を抱く許浚は、出世争いや医療をめぐるさまざまな対立、騒動、争いに巻き込まれながらも、己の信じる道を行き、ついに内医院の頂点である「御医」に上り詰める。
そして、医療とは万民のためのものとの信念から「東医宝鑑」をまとめるのだ。
本書は原作者急逝のため、未完のままだが、それまでに許浚は十分に描かれており、読後感は読み切った充実感さえある。
最近、朝鮮一の大商人・貿易王となった李尚沃を描いた崔仁浩の「商道」など、韓国の小説が次々に翻訳されている。また韓国映画も日本でヒットしている。
これらの小説や映画は、その国の文化や歴史、常識などを知る上で最も効果的である。韓国では山岡荘八の「徳川家康」がロングセラーである。韓国人は「家康」を通じて日本と日本人の一端を理解する。
最も近い隣国でありながら、日本の韓国理解はといえば「キムチ、ビビンバ、岩のり」の程度を越えていない。文化交流の質をいま一段高めていくには、こうした小説が数多く紹介されることだろう。
岩崎 哲
『許浚』上・下を読む
李恩成著
困難克服した医師の生涯
李朝時代に漢方医学の「東医宝鑑」を集大成した医師、許浚の生涯を描いた大河小説である。韓国ではテレビドラマ化され、視聴率60%という驚異的な数字をたたき出した。
原作名は「小説東医宝鑑」だが、日本になじみがないため、主人公名の「許浚」としてあるが、この名前とて知る人は少ないだろう。ところが、一巻五百四十ページ、二段組で上下の大作のページをめくると一気に読まされる。
主人公の波瀾(はらん)万丈の生涯、過酷な朝鮮の身分制度、王宮で繰り広げられる権謀術数、何度も窮地に追い込まれながら、信念を貫いて困難を克服していく許浚の強さ――。
小説のつぼを心得た構成と展開に読者はぐいぐい引き付けられ、李朝の医師をめぐる世界に引き込まれる。
許浚が医師を目指した強い動機ともなっているのが、すさまじいばかりの身分制度だ。両班(ヤンバン)を頂点とした身分制度の最下層に属すのが「婢(はしため)」であり、それも何種類にも分かれている。
主人公の父は両班でありながら、母親が「婢女(ひじょ)」であったため、その子も生まれながらにして「婢」の身分から抜け出せない。その母親も元はといえば、両班だったが、罪に問われて婢に落とされた者だった。
この身分制度から逃れられる唯一の道が医師となること。許浚は師を得て、医学の道に励み、科挙をはるかに上回る難関の「取才」を突破し、晴れて王宮の内医院の医員となる。
だが、医療は権威でもなければ、財でもない、病人を治す「真心からいたわる心があって」こそ「心医」に至れるとの信念を抱く許浚は、出世争いや医療をめぐるさまざまな対立、騒動、争いに巻き込まれながらも、己の信じる道を行き、ついに内医院の頂点である「御医」に上り詰める。
そして、医療とは万民のためのものとの信念から「東医宝鑑」をまとめるのだ。
本書は原作者急逝のため、未完のままだが、それまでに許浚は十分に描かれており、読後感は読み切った充実感さえある。
最近、朝鮮一の大商人・貿易王となった李尚沃を描いた崔仁浩の「商道」など、韓国の小説が次々に翻訳されている。また韓国映画も日本でヒットしている。
これらの小説や映画は、その国の文化や歴史、常識などを知る上で最も効果的である。韓国では山岡荘八の「徳川家康」がロングセラーである。韓国人は「家康」を通じて日本と日本人の一端を理解する。
最も近い隣国でありながら、日本の韓国理解はといえば「キムチ、ビビンバ、岩のり」の程度を越えていない。文化交流の質をいま一段高めていくには、こうした小説が数多く紹介されることだろう。
岩崎 哲
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