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1923年のソウルの風景

投稿者: monjujz 投稿日時: 2007/09/17 07:47 投稿番号: [68012 / 230347]
http://www.wao.or.jp/library/nakajima/junsa.htm

上のリンクで中島敦の短編小説「巡査の居る風景」が読めます。
副題に「一九二三年の一つのスケッチ」とあるように、1923年当時の京城の日常を一朝鮮人巡査の目を通して描いています。
当時の京城で朝鮮人、日本人がどのように暮らしていたか、スケッチを見るように浮かんでくる一品です。

さわりの部分だけ紹介します。

巡査の居る風景           中島敦

―   一九二三年の一つのスケッチ   ―



  甃石には凍った猫の死骸が牡蠣のようにへばりついた。その上を赤い甘栗屋の広告が風に千切れて狂いながら走った。
  町角には飲食店の屋台が五つ六つかたまって盛に白い湯気を立てて居た。赤黒くカチカチに固くなった乳房を汚れたツルマキの上から出した女が一人、その前に立って湯気を吹きながら真赤に唐辛子をかけた饂飩を啜って居た。
  署から帰ろうとして巡査の趙教英は電車を待ちながら、それをぼんやり眺めて居た。彼の前を急いで二人の浅黄服を着た支那人が、天秤棒をかついで過ぎて行った。彼等の籠の中には売れ残りの大根が白く光って居た。そろそろ潮の様に人混みが出始める頃であった。薄氷を張った様な暮方の空の下で、仏蘭西教会の鐘が寒む寒むと響き出した。
  趙教英は寒そうに鼻をすすって首を縮めると、制服の詰め襟の前を一度かけなおして電線の青白い火花を見上げた。その電車が行って了った後の線路を背の高い男が一人大股に歩いて来た。彼の署の課長であった。彼が恭しく敬礼すると、其男も鷹揚に一寸手を挙げて、又人混みの中に紛れ込んで了った。


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