ヒトES細胞の大量培養に成功
投稿者: baribaripati 投稿日時: 2007/05/28 15:23 投稿番号: [57367 / 230347]
ヒトES細胞の大量培養に成功…理研・神戸研究所
◆再生医療へ前進
体の様々な組織の細胞になる能力がある、
●人の胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を、
●大量に培養し効率よく大脳の細胞にすることに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の笹井芳樹・グループディレクターらの研究チームが成功した。
ES細胞を大量に増やすことができるうえ、脳こうそくや神経難病の治療への応用が期待できるなど、再生医療の実現に大きく近づく成果。27日の科学誌ネイチャー・バイオテクノロジー(電子版)に発表される。
人のES細胞はマウスのES細胞と比べて培養が難しく、実験のため1個ずつに分けると、細胞はほとんどが死んでしまう。十分な細胞量を確保できず、研究や将来の治療に使うのに支障になっていた。
笹井さんらは、ES細胞内に“自殺”を促す物質があるとみて、約40種の候補から原因酵素を突き止めた。この酵素の働きを抑えると、ES細胞はほとんど死なず、1個から大量に増やすことができた。酵素の抑制は、薬で簡単にでき、従来の方法より1か月で100倍以上増やせるという。
増やしたES細胞を、マウスのES細胞と同じ方法で処理したところ、9割以上が神経系の細胞になった。このうち3分の1は、大脳の表面を覆う皮質細胞や、体の動きの調節などをする基底核の神経細胞にすることができた。
再生医療は、ES細胞からつくった神経細胞などを、傷んだ細胞の代わりに移植する治療を目指している。笹井さんは「大量培養で研究のすそ野が飛躍的に広がり、アルツハイマー病など大脳の神経変性疾患の原因解明や治療薬の開発にもつながる」と話している。
■安全基準作り倫理配慮重要■ <解説>
これまで人のES細胞を増やすには、何十枚もの培養皿から生き残ったわずかな細胞を拾い出し育てるという、効率の悪い作業を繰り返さねばならなかった。今回の方法なら、1個のES細胞から確実に増やせる。
がんや遺伝子異常のある細胞を取り除いて増やせるので、将来、治療に使うのにより安全な細胞を提供できる。遺伝子導入も簡単にでき、病気の原因解明にも役立つ。十分な数量が確保できれば、医薬品の毒性試験など幅広く利用することも可能になる。
中内啓光・東京大医科学研究所教授は「医療現場での応用が視野に入ってくる画期的な成果だ」と評価する。
ただ、治療応用までには課題が多い。今回は大脳の細胞をつくることに成功したが、狙った細胞に確実にすることや、移植をした際の安全性、長期的効果の有無などを動物実験で確かめる必要がある。人に使うには、安全基準などのルール作りや倫理面に配慮した取り組みも重要になる。
(科学部 矢沢寛茂)
(2007年5月28日 読売新聞)
◆再生医療へ前進
体の様々な組織の細胞になる能力がある、
●人の胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を、
●大量に培養し効率よく大脳の細胞にすることに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の笹井芳樹・グループディレクターらの研究チームが成功した。
ES細胞を大量に増やすことができるうえ、脳こうそくや神経難病の治療への応用が期待できるなど、再生医療の実現に大きく近づく成果。27日の科学誌ネイチャー・バイオテクノロジー(電子版)に発表される。
人のES細胞はマウスのES細胞と比べて培養が難しく、実験のため1個ずつに分けると、細胞はほとんどが死んでしまう。十分な細胞量を確保できず、研究や将来の治療に使うのに支障になっていた。
笹井さんらは、ES細胞内に“自殺”を促す物質があるとみて、約40種の候補から原因酵素を突き止めた。この酵素の働きを抑えると、ES細胞はほとんど死なず、1個から大量に増やすことができた。酵素の抑制は、薬で簡単にでき、従来の方法より1か月で100倍以上増やせるという。
増やしたES細胞を、マウスのES細胞と同じ方法で処理したところ、9割以上が神経系の細胞になった。このうち3分の1は、大脳の表面を覆う皮質細胞や、体の動きの調節などをする基底核の神経細胞にすることができた。
再生医療は、ES細胞からつくった神経細胞などを、傷んだ細胞の代わりに移植する治療を目指している。笹井さんは「大量培養で研究のすそ野が飛躍的に広がり、アルツハイマー病など大脳の神経変性疾患の原因解明や治療薬の開発にもつながる」と話している。
■安全基準作り倫理配慮重要■ <解説>
これまで人のES細胞を増やすには、何十枚もの培養皿から生き残ったわずかな細胞を拾い出し育てるという、効率の悪い作業を繰り返さねばならなかった。今回の方法なら、1個のES細胞から確実に増やせる。
がんや遺伝子異常のある細胞を取り除いて増やせるので、将来、治療に使うのにより安全な細胞を提供できる。遺伝子導入も簡単にでき、病気の原因解明にも役立つ。十分な数量が確保できれば、医薬品の毒性試験など幅広く利用することも可能になる。
中内啓光・東京大医科学研究所教授は「医療現場での応用が視野に入ってくる画期的な成果だ」と評価する。
ただ、治療応用までには課題が多い。今回は大脳の細胞をつくることに成功したが、狙った細胞に確実にすることや、移植をした際の安全性、長期的効果の有無などを動物実験で確かめる必要がある。人に使うには、安全基準などのルール作りや倫理面に配慮した取り組みも重要になる。
(科学部 矢沢寛茂)
(2007年5月28日 読売新聞)
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