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>ベルリンに虐殺ユダヤ人の慰霊碑

投稿者: apoxy7 投稿日時: 2005/05/10 19:55 投稿番号: [76717 / 196466]
http://www.meinde.com/tagebuch/c_note.cgi?v=46
加害の記憶

  「テロルのトポグラフィー」から、今度はポツダム広場を抜けて、ブランデンブルク門の方へと北に向って歩いていくと、右手に「ヨーロッパの虐殺されたユダヤ人のための記念碑」(Denkmal fuer ermordete Juden Europas)、通称「ホロコースト銘記碑」(Holocaust-Mahnmal)が見えてくる。第二次世界大戦敗戦から60年後の今年5月10日に予定されている公開に向けて、今は最後の仕上げを行っている。

  ブランデンブルク門まではあと100メートルほどだ。北隣ではアメリカ大使館が建設を始めた。周囲には主要政府機関、各国大使館が散らばり、すぐ南には、連邦を構成する州のうちのいくつかの代表部が並び、東には、総統府などナチ政権の中枢があった跡地に東独時代の集合住宅が聳え、北には、1999年から連邦議会が開かれるようになった帝国議会議事堂が見える。
そこに濃灰色をした直方体の角柱が、次第に高さを変え、その傾きもわずかにずらしながら、立ち並ぶ。墓石を思わせるそれらは、棺桶のようでもある。設計はユダヤ系アメリカ人のアイゼンマンだ。

  記念碑の一角の地下には「情報の場」が設けられている。そこには、ホロコーストの犠牲になった600万と言われるユダヤ人の名前が、できるかぎり多く刻み込まれるという。抽象的な記念碑を補う具体的な情報は、抑圧と虐殺を、抽象的なものではなく、具体的で個人的な苦しみと恐怖を伴ったものとして想起するための手がかりなのだ。

  犠牲者を忍び殺戮の事実を記憶にとどめる場を加害者の国に作ろうという運動は、1989年に東西両ドイツの(非ユダヤ系)市民の手で始まり、統一後は国がその実現を引き受けた。
現在再び政治の中心となった場所に記念碑を建設するという決断からは、過去の加害を直視しそこから学ぶことが現在のドイツの基盤を成す、という認識が伝わってくる。

  加害の記憶の一方で、第二次世界大戦から60年近く経って次第に顕在化してきたのが、犠牲者としての記憶だ。ナチ体制の中枢を支えた直接の犯罪者たちが死に、記憶の中心が空爆や引揚を体験した子どもたちの世代に移り、それとともに、犠牲者としてのドイツ人が浮び上ってきた。連合軍によって1945年2月13日から15日にかけて行われたドレスデン空爆や、旧ドイツ領のシュレージエン、ポンメルン(現ポーランド領)などからの引揚の物語が、ドキュメンタリーや小説で語られるようになった。これに対しては、ナチ支配を支えた人々とその犠牲者との区別が曖昧になってしまうという危惧が表明されている。

  ナチスの過去はもうたくさんだという声も、東西統一から15年近くが経ち、戦後60年を控えた今、再び高まってきた。連合軍によってドレスデン空爆を「爆弾ホロコースト」と呼び、空爆とホロコーストとを同等視し、ナチスによる組織的大量殺人を相対化した極右の国民民主党議員のザクセン議会での発言は、さすがに議会内でもメディアでも批判を浴びた。極右ほどあからさまではないにしても、加害の過去のみを突きつけられることに対する反発は、戦後から繰返して表面化してきた。1998年には、社会批判的と目されていた作家のマルティン・ヴァルザー(1927年-)が、つねにナチスの過去を突きつけられることに反発し、ベルリンのホロコースト銘記碑を「首都の中心をサッカー場の大きさの悪夢で塗り固めること」「恥辱の記念碑化」と評し、激しい議論を巻き起こした。加害から目を逸らそう、ナチスのテロルを相対化しようという主張は、けれども、1980年代に論争を通じて成立した、ホロコーストを未曾有の犯罪として記憶に留めなければならないという社会的コンセンサスへの反発なのであって、こちらが政治文化のなかで主流となっているわけではない。

  どの記憶をどのような形で残すべきなのか、政治でも、歴史学でも、芸術・美学でも、議論が活発に行われている。近過去をめぐる活発な議論や、各地の銘記碑を見るにつけ、今のドイツが記憶の上に成り立っていることを強く感じる。


写真:ヨーロッパの虐殺されたユダヤ人のための記念碑
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