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NHK「シルクロード」への疑問

投稿者: uyokujanaimon 投稿日時: 2005/01/09 20:01 投稿番号: [42473 / 196466]
日本人の歴史観には、「中国・朝鮮半島からの文明の伝来」という過度の思い込みがあるのではないだろうか。人的物的交流で「海」の果たした役割にもっと着目しなければいけないのに、歴史教科書にしろ、一般的な歴史観にしろ、日本の歴史と文化・文明にとって「海路」を経由した人と文物の往来の役割を中心的なものとして位置付けていないのは、おそらく大変な誤謬なんだろうと思う。

少なくとも10世紀ごろには、世界は「海の時代」にはいっていたはずだ。東南アジアで沖縄人・日本人が活発に出ていくようになるのも、よく分からないが、一桁の世紀に遡ると推測するのが自然だろう。16世紀になるとフィリピンのルソンや、インドネシアの島々に、日本人がもうくっきりと明確な足跡を残しているし、16世紀の山田長政や、各地の日本人町のことはあまりにも有名だが、そうした日本人の海洋交易に関わる活動の前史は、もっと古く遡るはずだ。

たとえば稲の伝来にしてもそうだ。遺伝学的に中国雲南あたりの野性稲と関係があると言っても、現実の伝来ルートはおそらく南方から海路を通じてやってきたと考えるのが自然だ。

運搬の効率性・機動性から考えても、海洋交易のほうが陸路の交易より圧倒的に勝る。日本が外の世界と交流したのも、すべて海路を通じたわけだし、その海路が、朝鮮半島や中国大陸との間だけだったなどということがあるわけがない。

人や文物が、陸路を通じて、「大陸・朝鮮半島」ルートで、牛馬や人力でチンタラとやってきて、対馬海峡だけ海を渡るという想像は、どうみてもマトモではない。

東南アジアやポリネシア・メラネシア・ミクロネシアの航海術が非常に古くから発達していた(BCに遡る)事実に照らしても、そうした想像は、あまりにも貧困で不自然な想像というしかない。

たとえば百済から僧が日本にやってきたことが、日本の仏教史にそれなりに重要なインパクトを与えたにしても、その一つの事実をもって、もっと広範で大規模な人と文物の交流の歴史(おそらく南洋との交流の歴史)に優越すると決めてかかるのは間違いだ。

ところが、日本の歴史を「大陸・朝鮮半島からの伝来」で過度に語ろうとする偏狭なイデオロギーが歴史観のなかにあるように感じる。

そうした「大陸伝来イデオロギー」とでも呼ぶべき、あまりにも偏った歴史観がはびこりすぎた今の現実を作り出している原因の一つが、NHKがやたらと力を込めて(資金を投じて)やる「シルクロード」のようなテレビ番組ではないかと思う。NHKは、それ自体としてはなかなか面白い番組を作るだけに、それを喜んで見る多くの国民の中に知らず知らずのうちに、「歴史の源流」が中国大陸にあるかのような錯覚をはびこらせてしまうのだ。

NHKは「大陸伝来イデオロギー」をなくすためにも、「日本の文化史・文明史における『海』の役割、南洋との交流の役割」に焦点をあてた番組もちゃんと作れ。当然ながら、日本の歴史研究者にも、おなじことを言いたい。
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