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日露戦争

投稿者: mokneybrain123 投稿日時: 2010/08/18 22:05 投稿番号: [12736 / 28555]
日本史をどのように解釈したり論じたりすることもできるが、ただ日本海を守ろうとするこの海戦において日本側がやぶれた場合の結果の想像ばかりは一種類しかないということだけはたしかであった。日本のその後もこんにちもこのようには存在しなかったであろうということである。

そのまぎれもない蓋然性は、まず満州において善戦しつつもしかし結果においては戦力を衰耗させつつある日本陸軍が、一挙に孤軍の運命におちいり、半年を経ずして全滅するであろうということである。

当然、日本国は降伏する。この当時、日本政府は日本の歴史のなかでもっとも外交能力に富んだ政府であったために、おそらく列強の均衡力学を利用してかならずしも全土がロシア領にならないにしても、最小限に考えて対馬島と艦隊基地の佐世保はロシアの租界地になり、そして北海道全土と千島列島はロシア領になるであろうということは、この当時の国際政治の慣例からみてもきわめて高い確率をもっていた。

むろん、東アジアの歴史も、その後とはちがったものになったにちがいない。満州は、すでに開戦前にロシアが事実上居すわってしまった現実がそのまま国際的に承認され、また李朝鮮もほとんどロシアの属邦になり、すくなくとも朝鮮の宗主国が中国からロシアに変わったに相違なく、さらにいえば早くからロシアが目をつけていた馬山港のほかに、元山港や釜山港も租借地になり、また仁川付近にロシア総督府が出現したであろうという想像を制御できるような材料はほとんどないのである。(司馬遼太郎『坂の上の雲』三、第六部、運命の海)
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