対米全面テロ

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マイタウンUSA アサヒ・コムから

投稿者: arisugawahiro_0 投稿日時: 2002/07/13 22:37 投稿番号: [145036 / 177456]
男のコラム [ボツ   特派員メモ]

善意の国

  ニューオーリンズで、通りを歩いていたご婦人に郵便局までの道を尋ねた。その女性は説明し始めて、

「あー、ちょっと複雑ね。車で送ってあげるから乗りなさい」

  道は大して複雑ではなかった。車中、街の住み心地を聞くと、

「最近は治安が悪くなって大変。住みにくくて仕方ないわ」

  そう言う当の本人が、見ず知らずの東洋人を簡単に車に乗せてしまうのだから、のんびりしているというか、矛盾しているというか。

  米国に住んでいると、時々、日本の大都会では一生出会えないような、善意の人と行き交う。

  コネティカット州の田舎道で車がオーバーヒート、立ち往生していたら、何台も車が止まって、「大丈夫か?」と声をかけてくれる。ポートランドで夕方、駐車しようとパーキングメーターにコインを入れかけたら、かなり遠くの方から「今日はいらないんだ。金を入れなくても止められるんだよー」と叫んでくれた男性がいた。

  よく言われることだが、アメリカ人というのは、基本的に、善意の人たちの集合体だと思う。そんな「善意の国」が、特にテロ後、どんどん世界から孤立していくように感じる。

  戦争犯罪などを裁くため、国連に国際刑事裁判所(ICC)を設立する条約が7月、発効した。だが、ブッシュ大統領はずっとICCを敵視してきた。自分の国の兵士の行動が、国際裁判で裁かれたらたまらない。そういう危惧から、米国は主張が通らなければ国連平和維持活動(PKO)から兵を引くと脅している。これにはヨーロッパ諸国からさえも厳しく非難する声が出た。

  しかし、米国は欧州からの厳しい視線には気づこうともしない。リベラルとされるニューヨーク・タイムズに、こんなコラムが載った。

  「クウェートを侵攻したイラクに、ヨーロッパも経済的に従属させられるところだったのを、アメリカが救った。アメリカは、NATOのリーダーとしてセルビアを押しとどめた。ヨーロッパもイスラムのテロリストの脅威を受けていたのだが、実際に攻撃を受けたのはアメリカだった。そんなアメリカが、自国の兵士を(ICCの)目立ちたがりの訴追者から守ろうとするのは、過剰な注文なのか」

  これは傲慢、ではない。「善きことをしている」と腹の底から信じ切っているのだから。なぜ批判されるのか、まるで理解できないのだ。

  米国がいう自由、米国が説く民主主義を、まったく悪いと思っているのではない。僕がこわいと思うのは、「善きことをしている」ということへの、恐ろしいほどの確信だ。

  善きことをしていると確信している人は、自分の行動を疑ったり、反省したりはしない。崇高な目的のためには、手段を選ばない。国連決議を得ないイラク侵攻だろうが、民間人を巻き添えにするアフガン空爆だろうが、無差別大量殺戮の核爆弾投下だろうが、善きことのためには何だってやる。米国人が特殊なのではない。人間はみな、正義が絶対であると信じる時、視界が急に悪くなる。

  善意の人は、得難い宝だ。しかし善意を確信している集団の心理は、底暗い。

近藤康太郎/ニューヨーク支局

(7/12)
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