語りたい この国信じて
投稿者: chottomato2 投稿日時: 2002/01/13 09:05 投稿番号: [130207 / 177456]
高橋めぐみ(26)ら日本の若者5人が、現地時間の12日、ハワイから米本土行きの旅客機に乗る。これからの1年をアメリカで暮らす。いやでも緊張感が募る。
同時多発テロを機に愛国ムードに染まる米国で、ヒロシマやナガサキの話に耳を傾けてもらえるだろうか ---- -。
◇ ◇ ◇
日本のボランティアが米国の学校を回り、日本文化や被爆者の体験を伝える「ネバーアゲイン・キャンペーン」は、核の廃絶を訴える市民運動だ。86年に始まり、これまでに43人が渡米した。
高橋は東京の商社を辞めて加わった。だが出発の6日前にテロが起き、渡米は延期になった。
10月、米軍はアフガニスタン攻撃を開始する。
「タリバーンは旧日本軍と同じ狂信集団。核兵器の使用を我慢しなければならない理由は何もない」。新聞は相次いでこんな論評を載せた。世論調査会社が調べると、54%が「対テロ戦争に核兵器は有効」と答えた。
「アメリカ人の何割かは、いまでも核兵器を最後の切り札だと信じて疑わない」。高橋らを迎え入れる哲学教授のドナルド・レイスロップ(67)は、米国人の核兵器観にため息をつく。
「わざわざアメリカ人の反発を買いに行くようなものではないか」。高橋は悩んだ。友達には「まだ行くつもりでいるの」と聞かれた。そんな中での出発だ。
◇ ◇ ◇
テロ後のアメリカは、偏狭な愛国心や排外的な空気に覆われた。
「文明を守る」と題した小冊子が、全米の大学に出回ったのは11月のことだ。学内の反戦集会や教授らの政府批判、はては「暴力の連鎖を断ち切ろう」といった学生の発言まで、115の事例が「愛国心に欠け自虐的」と列挙されていた。
「学問の自由と質の向上」を活動目的にしている学術振興団体が冊子を作った。チェイニー副大統領夫人が創設者に名を連ねている。
マサチューセッツ大学アマースト校も、やり玉にあがった。昨年9月10日、町の目抜き通りに新たに星条旗を掲げるかどうかを話し合う住民集会で、教授のジェニー・トラッシェン(45)は「星条旗は恐怖と抑圧の象徴だ」と意見を述べた。
翌日、世界貿易センタービルが崩れ落ちると、報道で発言を知った人から脅迫めいた電話と手紙が大学に殺到した。
「アメリカが大切にしてきた自由という価値が、こんなに簡単に置き忘れられてしまうのか」
オレゴン州のダン・ガスリー(61)も、そう自問した。動物学の教授から新聞記者になり、地方紙で7年間コラムを書いて人気を博していた。
そのコラムで、「最高責任者でありながらテロ後すぐにワシントンに戻らなかった大統領は臆病者だ」と書いた。
おびただしい数の手紙とメールが届いた。多くは批判だった。その直後、理由を告げられないまま解雇された。
「あなたは何を心配しているのか。この民主主義の国でそんなことがあるのか」。全米日系市民協会の事務局長ジョン・タテイシ(62)は、取材に来たアメリカ人記者に問いただされた。
テロを知って、タテイシはとっさに直感した。真珠湾攻撃後に日系人が経験した悲劇が中東系に降りかかる ---- -。
事態はタテイシが危ぐした通りになった。中東からの移民が射殺され、イスラム教徒が各地で嫌がらせを受けた。
タテイシは各地の支部に指示を出した。「日系人の経験を市民に話す場を設けなさい」。その動きを、多くの米メディアが取材した。
取材にはいつも、こう答えた。「何をすべきかはすぐ分からなくても、何をすべきでないかは歴史が教えてくれる」
◇ ◇ ◇
アメリカ社会はその後、偏狭な揺れを戻しつつある。この国の多様な文化や価値観が暴徒をくい止めたように見える。
テロから4カ月。
タテイシには年配の日系人から励ましの電話がかかってくる。「アメリカがおかしな国にならないよう頑張ってくれ」
高橋ら5人は11日、真珠湾のアリゾナ記念館を訪ねた。報復の連鎖を断ち切れるか。自信はないが、仲間で励まし合った。「アメリカには市民が政府を変える力がある。一人ひとりの正義を信じよう」
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以上、今朝の朝日新聞「アメリカアメリカ(シリーズ第12回)」より無断で転載。
同時多発テロを機に愛国ムードに染まる米国で、ヒロシマやナガサキの話に耳を傾けてもらえるだろうか ---- -。
◇ ◇ ◇
日本のボランティアが米国の学校を回り、日本文化や被爆者の体験を伝える「ネバーアゲイン・キャンペーン」は、核の廃絶を訴える市民運動だ。86年に始まり、これまでに43人が渡米した。
高橋は東京の商社を辞めて加わった。だが出発の6日前にテロが起き、渡米は延期になった。
10月、米軍はアフガニスタン攻撃を開始する。
「タリバーンは旧日本軍と同じ狂信集団。核兵器の使用を我慢しなければならない理由は何もない」。新聞は相次いでこんな論評を載せた。世論調査会社が調べると、54%が「対テロ戦争に核兵器は有効」と答えた。
「アメリカ人の何割かは、いまでも核兵器を最後の切り札だと信じて疑わない」。高橋らを迎え入れる哲学教授のドナルド・レイスロップ(67)は、米国人の核兵器観にため息をつく。
「わざわざアメリカ人の反発を買いに行くようなものではないか」。高橋は悩んだ。友達には「まだ行くつもりでいるの」と聞かれた。そんな中での出発だ。
◇ ◇ ◇
テロ後のアメリカは、偏狭な愛国心や排外的な空気に覆われた。
「文明を守る」と題した小冊子が、全米の大学に出回ったのは11月のことだ。学内の反戦集会や教授らの政府批判、はては「暴力の連鎖を断ち切ろう」といった学生の発言まで、115の事例が「愛国心に欠け自虐的」と列挙されていた。
「学問の自由と質の向上」を活動目的にしている学術振興団体が冊子を作った。チェイニー副大統領夫人が創設者に名を連ねている。
マサチューセッツ大学アマースト校も、やり玉にあがった。昨年9月10日、町の目抜き通りに新たに星条旗を掲げるかどうかを話し合う住民集会で、教授のジェニー・トラッシェン(45)は「星条旗は恐怖と抑圧の象徴だ」と意見を述べた。
翌日、世界貿易センタービルが崩れ落ちると、報道で発言を知った人から脅迫めいた電話と手紙が大学に殺到した。
「アメリカが大切にしてきた自由という価値が、こんなに簡単に置き忘れられてしまうのか」
オレゴン州のダン・ガスリー(61)も、そう自問した。動物学の教授から新聞記者になり、地方紙で7年間コラムを書いて人気を博していた。
そのコラムで、「最高責任者でありながらテロ後すぐにワシントンに戻らなかった大統領は臆病者だ」と書いた。
おびただしい数の手紙とメールが届いた。多くは批判だった。その直後、理由を告げられないまま解雇された。
「あなたは何を心配しているのか。この民主主義の国でそんなことがあるのか」。全米日系市民協会の事務局長ジョン・タテイシ(62)は、取材に来たアメリカ人記者に問いただされた。
テロを知って、タテイシはとっさに直感した。真珠湾攻撃後に日系人が経験した悲劇が中東系に降りかかる ---- -。
事態はタテイシが危ぐした通りになった。中東からの移民が射殺され、イスラム教徒が各地で嫌がらせを受けた。
タテイシは各地の支部に指示を出した。「日系人の経験を市民に話す場を設けなさい」。その動きを、多くの米メディアが取材した。
取材にはいつも、こう答えた。「何をすべきかはすぐ分からなくても、何をすべきでないかは歴史が教えてくれる」
◇ ◇ ◇
アメリカ社会はその後、偏狭な揺れを戻しつつある。この国の多様な文化や価値観が暴徒をくい止めたように見える。
テロから4カ月。
タテイシには年配の日系人から励ましの電話がかかってくる。「アメリカがおかしな国にならないよう頑張ってくれ」
高橋ら5人は11日、真珠湾のアリゾナ記念館を訪ねた。報復の連鎖を断ち切れるか。自信はないが、仲間で励まし合った。「アメリカには市民が政府を変える力がある。一人ひとりの正義を信じよう」
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以上、今朝の朝日新聞「アメリカアメリカ(シリーズ第12回)」より無断で転載。
これは メッセージ 1 (messages_admin さん)への返信です.
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