ユギオII - その72
投稿者: k_g_y_007_naoko 投稿日時: 2009/05/21 23:12 投稿番号: [55995 / 73791]
投稿者:拓
<その72>
カンが浴室から出てきた。
「カン君、明日、我々は北京へ行かねばならない..」
三枝の言葉にカンは目を輝かせた。三枝はカンが驚くと思っていたが、逆に飛び上がらんばかりに喜んでいる。
「なんだ、北京行きは君が要求したのかね?
いつ?」
「え?
ええ、今日、李大統領にです。胡主席に会いたいと..」
三枝は、「なんて大胆なヤツだ..」と思いながらカンをまじまじと見ているうちにハッとした。
「人民解放軍か?」
部屋の冷蔵庫を開けて飲み物を物色しているカンは、三枝の言葉に振り向き、
「ええ、背後に旧政権派の人民解放軍がいると思います..」
「そうか..」
カンはビールとグラスを二つ持ってきた。
「三枝さん、幸運を祝して少し飲みませんか?
お祖母様の前では飲めませんでしたから..」
三枝は、何とも度胸が据わった男だと思った。護衛艦に救助されたときのあのオドオドした姿は微塵もなかった。
ベランダに面した小さなテーブルを囲んで座った。夜窓からは薄明かりの庭の緑がボーッと浮かび上がっていた。
「三枝さん、実はとても大事なことをあなた様にお話していません..」
カンはグラスのビールを一気に半分ほど飲んだ。
「うまいですね。わが国ではめったに飲めません..」
そう言って、カンはグラスに残っているビールをめずらしそうに眺めた。
「朝鮮王家のことか?」
三枝は、思い切って聞いてみた。
「えっ?」
「君の素性のことか?」
三枝はたたみかけた。しかし、カンは飲みかけのビールに再び視線を落とすと考え込んでいた。やがて、
「三枝さん、もう少しお待ちくださいませんか?
いずれ、いえ、近いうちにあなた様にお話申し上げます。洗いざらいお話申し上げます。今はあなた様がご存知ない方が都合がよいのです..」
そう言うとカンは押し黙った。
「そうか、分かった。私は君の警護役にしかすぎないからな..」
三枝はわざとムッとした風に言うと、
「いえ、そういう意味じゃありません。今はその方がいいと思っているからです。我が国の大勢の人民の命がかかっていることですから..」
カンは、今までとは違った深い苦悩を顔に浮かべた。
「そうか、分かった。君が話してくれるまで待とう..」
そう言うと、カンは申し訳なさそうな顔をした。三枝はカンが先ほど注いでくれたビールを一気に飲み干すと、
「さて、私も風呂でも浴びるか..」
浴室に入る三枝の後ろ姿をカンはじっと見ていた。
<では失礼>
これは メッセージ 1 (may7idaho さん)への返信です.
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