ユギオII - その57
投稿者: k_g_y_007_naoko 投稿日時: 2009/05/13 21:53 投稿番号: [55718 / 73791]
投稿者:チー
<その57>
門を入るとさほど広くはないが、庭になっており、椿の生垣にそって石畳が玄関へと続いていた。玄関から初老の女が小走りに走ってきた。カンはまだ妙子に抱きかかえられるように歩いていた。
「お嬢様、どうしたのですか?」
女は心配そうにカンの顔色を伺っていた。
「ばあや、心配しないでいいのよ。ちょっと頭痛がしただけ..」
そう言って、カンはニコリとすると妙子に寄りかかるのをやめた。
「そうですか..?」
それでも、ばあやと呼ばれた女は不審そうであった。そして妙子を見た。
「あのう、こちら様は..?」
「私の弁護士さん..」
しかし、女は妙子に怪訝な顔をした。
「お嬢様、総連の弁護士さんたちがお嬢様にどうしても会いたいと先程から表にいらっしゃいますけど..」
「ええ、わかっているわ..」
「お嬢様が、家にはどなたも入れるなとおっしゃいましたから、入れておりませんけど、これでよろしいんですか?」
「ええ、いいのよ、これで..」
家は瓦屋根の木造平屋建てで、建ててから随分経っているようである。軒下には盆栽が幾鉢か並び、庭には小さな池を囲むように、大きな庭石と松の木が配置してあった。
「爺と趣味が似てるわね..」
妙子は思った。
「妙子さん、どうぞお入りください。お茶でも入れますから..」
「え?
あ、ありがとう」
かなり時間が経ってからカンは用意ができたと言って、ばあやに手伝わせながら重そうに大きなスーツケースを持ってきた。妙子が「こんなに大きなスーツケースを..」と思っていると、カンはもう一つあると言ってまた奥へ入ると、さらに大きなスーツケースを持ってきた。まるで貴婦人が大名旅行にでも出かけるような荷物である。
「カンさん、当面必要なものだけでいいのよ。こんなに必要ですか?」
「え?
ちょっと多いかしら..?」
「ね、この半分にしましょうよ。もう一度よくチェックしましょうよ..」
カンがしぶしぶスーツケースを開けると、中から何着もの洋服に交じって韓服も数着入っていた。靴も何足もあり、6月なのにブーツまで入っている。おまけに大きな鏡やアイロンまで入っていた。
「これから行くところには、日用品はだいたいあります。足りないものは近所のお店で買えますから、必要なものだけでいいのよ」
妙子が選り分けると半分以下になった。小さい方のスーツケースだけで十分である。そばにいるばあやは、いかにも不服そうな顔をしている。
「そうそう、常備薬とか、他に大切なものはありませんか?」
妙子が聞くと、カンは思い出したように奥へ入って行くと、古びた小さなアルバムと錦織の小袋を持ってきた。
「ばあや、私たちが戻るまで、じいやとこの家を守っていてください。何かあったら、北村弁護士さんに連絡してください..」
ばあやは、涙ぐんでいた。
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