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ユギオII - その28

投稿者: k_g_y_007_naoko 投稿日時: 2009/05/08 22:58 投稿番号: [55315 / 73791]
投稿者:大介&直子

<その28>

「東京、世田谷」早朝

昨夜からの雨も上がり、榊原老人は雨に濡れて一段と映えた庭の緑に見入っていた。
「おじいちゃん、お電話よ」
休日で家にいる孫娘が呼んだ。
「ちっ、こんな朝っぱらから一体だれじゃ?   カンのことかな?」と、不機嫌そうに受話器を取った。
「ん?   だれじゃと?   北村..?   おおそうか、元気か?」
電話の主は、老人の公安時代の部下のひとりであった。一番若かったから、よくしごいたことを覚えていた。
「今は確か60を過ぎているはず。退官した者がワシに何の用じゃ?」
老人はいぶかしがった。近くの駅から電話していると言った。北村はまもなくやってきた。

「榊原先生、あのカン老人の弁護を私が引き受けることになりました..」
「ん?」
「退官後、今は小さな法律事務所をやっておりますが、カンが官選弁護人として私を指名してきました。カンが逮捕されたということで、総連の連中がすぐに弁護団を編成して面会を求めたそうですが、総連には迷惑かけたくないということで面会を断ったたそうです。それはそれでいいんですがね..、官選弁護人が私だということで、連中、今大騒ぎですよ..」
老人は、北村の話にしばらく考え込んでいたが、
「引き受けるがよい。カンには何か考えがあるんじゃろ..」
しかし、北村は榊原の言葉には驚かなかった。そして、
「カンは、誰にも会いたくないと面会も一切断っています。ただひとりを除いて..」
「ん?   ただひとり?」
「ええ、孫娘にだけは会うそうです」
カンの車椅子を押していたあの孫娘か、と老人は思った。

「ところで先生、先生のお孫さんの妙子さんの力をぜひお借りたいのですが..」
「なんじゃと?   ワシの孫娘の力とな?」
老人の孫娘とは、先程電話に出た娘である。
「妙子さんのお仕事はよく承知しているつもりですが、弁護士資格もお持ちですね..」
孫娘は国家公務員であるが、検察とはほとんど縁が無い職場に所属していた。
「昨夜、妙子さんの了解を取り付けてあります」
「ん、カンの差し金か?」
「それもありますが、内閣府からの依頼です」
「………?」

奥でまた電話が鳴った。妙子がうれしそうに「ブル様からです」と告げに来た。
「ブルとな..?」
ブルとはブルドックのことであり、ほほが垂れ下がったギョロ目の人物、武原首相のニックネームであった。
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