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ユギオII - その16

投稿者: k_g_y_007_naoko 投稿日時: 2009/05/04 01:39 投稿番号: [55052 / 73791]
投稿者:拓

<その16>

「20xx年6月17日、早朝、東京、世田谷」

世田谷の閑静な住宅街の一角に盆栽好きの老人の家があった。一時期、日本政界の大物と騒がれていたが、今はすっかり隠居の身であり、訪れる人もまばらであった。古びた質素な木造一軒屋ではあったが、この辺りではひときわ目を引く見事な庭があった。老人は、朝から庭の盆栽いじっては、眺めたり、またいじっては眺めたりしていた。

「おじいちゃん、お電話よぉ」
孫娘の声であった。
「誰からじゃ?   今、忙しいと言ってくれ!」
老人は、楽しみを邪魔されたのか、不機嫌そうにそう言った。
「とても大事なお話があるんですって、昔、おじいちゃんに大変お世話になったって、カンさんって言う人..」
「カン?」
老人はしぶしぶ電話に出た。
「もしもし、ワシじゃが、榊原じゃが..」
「先生、お久しぶりです。カンです。覚えていらっしゃいますか?」
電話の相手の声は、相当の年齢のようであった。
「カン?   はてさて..」
「○○事件でお世話になったカンですよ。思い出せませんか?」
榊原老人は、記憶を辿るような仕草で天井を見上げた。
「おお、思い出したわい、あのときのカンか?   総連の姜(カン)か?」
「やっと思い出していただけましたか、あははは...」
「ところで、元気か?」
「ええ、ええ、おかげさまで..。ただ、今では車椅子のやっかいになっておりますが...」
カンは、老人と同い年であった。生まれた月も同じであった。老人が昔、公安警察に在籍していた当時、必死に追い掛け回した在日朝鮮人の大物中の大物であった。しかしその手口が巧妙で、とうとう尻尾すら掴むことができなかった相手である。
「ワシに何の用かな?」
「....実は、大変重要なお話があります。大勢の命がかかっていると申し上げたら、お分かりくださいますか?」
「大勢の命とな?   ほう?」
「ぜひ、内密にお会いしたいのですが..、それも大至急です…。時間がありません..」
カンはあせっているようであった。
「ん、今どこにいる?   なに?   目黒か?   なら、○○病院は知ってるな?」
「ええ、知ってます」
「では、車椅子の身なら病人でこれるな?   ○○科の受付で名前を言えばよい。話はつけておく」

カンとの待ち合わせは、午前10時であった。

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拓:今までは状況説明でした。これから本題の物語りに入ります。では失礼します。
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