「ソウル」 - 9
投稿者: k_g_y_007_naoko 投稿日時: 2009/02/18 19:59 投稿番号: [49952 / 73791]
投稿者:直子^^
「ソウル」 - 9
車内の雰囲気は、一気に明るくなった。
ヒョギョンは、好奇心旺盛で物怖じしない娘のようである。その後も矢継ぎ早に日本のことを儂に聞いてきた。母親が見かねてたしなめておったが、儂が「かまわん」と言うと、すぐまた話し始める。英語が自然と口からでてくるらしい。口数は多いが、よくみると可愛い娘である。息子のヒョクとは対照的であった。
「私にまたハラボジができてうれしい」
話の途中で、ヒョギョンが儂に言うでもなくそう漏らした。
「ん?」
「先生、娘は二年前に亡くなった会長をハラボジと呼んで育ったのです」
キムは、日本語で説明した。
「そうか、そうだったな。北村から聞いておる。その後、会長の息子さんが会社を引き継いだと聞いたが..」
キムは、この儂の問いかけにやや考え込んでおった。
「彼は、政治の世界に専念したいということで、それで私が引き継ぐことになったのです..」
キムはそう言ったが、わがままでえこひいきの激しい跡継ぎに他の親族と主な株主が反旗を翻し、K社グループを巻き込んだ大きな内紛に発展したとのことである。これを収拾するためキムにCEOの白羽の矢がたったことは、北村から聞いておった。そのときキムはCEOを引き受ける条件として、会長未亡人を名誉会長に推したそうである。このキムの義理堅い提案で、内紛は収拾したと聞いておるが..。
「先生、会長未亡人にぜひお会いしてくださいませんか?」
「そうだな、会わねばならんだろう。会長の墓前にもお線香をあげんとな..」
キムの表情が一瞬輝いたのがミラー越しに分かった。
「会長未亡人は、この日曜日に自宅で内輪のパーティをやります。ぜひ先生をお連れしてきてください、と言ってます。そうしてくださいませんか、先生..」
「ん、そうか?」
「ええ、先生。だから日曜日はゆっくりしていただいて、どうしてもお帰りになるのであれば、月曜にしてくださいませんか?」
なるほど、儂にどうしても韓国にきてもらいたいというキムの真意が分かったような気がした。まだ不安定な自分の立場を確固たるものにしたいのかも知れん。そんな思惑が見てとれた。そうであるならば、別に年老いた、第一線をとうに退いたこの儂でなくても、北村をはじめ、日本のN社の役員連中でもよさそうなものである。
儂は「韓国へいきませんか」という北村の誘いを断ったが、その後韓国から帰ってきた北村がまた儂のところに訪ねてきて、「どうしてもキムが会いたがっています。韓国に一度でいいから来ていただきたい、そう懇願しています」と言った。そんなに会いたければ、日本でも会えると思ったが、ま、一度韓国に行ってみても悪くはないと思い直し、N社社員二人の韓国出張に合わせて韓国に来たのである。会長未亡人には、明日でも、明後日でも会えるであろうに、儂が帰国する日曜とは、なにか理由でもあるのかな、そう思った。
「そうか..。わかった、そうしよう」
儂がそう言うと、キムの後ろ姿にやっと肩の荷が下りたような雰囲気が漂った。この雰囲気から察すると、どうやらまたキムのために一肌ぬがねばなるまいと覚悟した。
「この車は、家内の車なんです。ようやく月賦が終わったところなんです」
キムがふいにそう言った。(爺)
「ソウル」 - 9
車内の雰囲気は、一気に明るくなった。
ヒョギョンは、好奇心旺盛で物怖じしない娘のようである。その後も矢継ぎ早に日本のことを儂に聞いてきた。母親が見かねてたしなめておったが、儂が「かまわん」と言うと、すぐまた話し始める。英語が自然と口からでてくるらしい。口数は多いが、よくみると可愛い娘である。息子のヒョクとは対照的であった。
「私にまたハラボジができてうれしい」
話の途中で、ヒョギョンが儂に言うでもなくそう漏らした。
「ん?」
「先生、娘は二年前に亡くなった会長をハラボジと呼んで育ったのです」
キムは、日本語で説明した。
「そうか、そうだったな。北村から聞いておる。その後、会長の息子さんが会社を引き継いだと聞いたが..」
キムは、この儂の問いかけにやや考え込んでおった。
「彼は、政治の世界に専念したいということで、それで私が引き継ぐことになったのです..」
キムはそう言ったが、わがままでえこひいきの激しい跡継ぎに他の親族と主な株主が反旗を翻し、K社グループを巻き込んだ大きな内紛に発展したとのことである。これを収拾するためキムにCEOの白羽の矢がたったことは、北村から聞いておった。そのときキムはCEOを引き受ける条件として、会長未亡人を名誉会長に推したそうである。このキムの義理堅い提案で、内紛は収拾したと聞いておるが..。
「先生、会長未亡人にぜひお会いしてくださいませんか?」
「そうだな、会わねばならんだろう。会長の墓前にもお線香をあげんとな..」
キムの表情が一瞬輝いたのがミラー越しに分かった。
「会長未亡人は、この日曜日に自宅で内輪のパーティをやります。ぜひ先生をお連れしてきてください、と言ってます。そうしてくださいませんか、先生..」
「ん、そうか?」
「ええ、先生。だから日曜日はゆっくりしていただいて、どうしてもお帰りになるのであれば、月曜にしてくださいませんか?」
なるほど、儂にどうしても韓国にきてもらいたいというキムの真意が分かったような気がした。まだ不安定な自分の立場を確固たるものにしたいのかも知れん。そんな思惑が見てとれた。そうであるならば、別に年老いた、第一線をとうに退いたこの儂でなくても、北村をはじめ、日本のN社の役員連中でもよさそうなものである。
儂は「韓国へいきませんか」という北村の誘いを断ったが、その後韓国から帰ってきた北村がまた儂のところに訪ねてきて、「どうしてもキムが会いたがっています。韓国に一度でいいから来ていただきたい、そう懇願しています」と言った。そんなに会いたければ、日本でも会えると思ったが、ま、一度韓国に行ってみても悪くはないと思い直し、N社社員二人の韓国出張に合わせて韓国に来たのである。会長未亡人には、明日でも、明後日でも会えるであろうに、儂が帰国する日曜とは、なにか理由でもあるのかな、そう思った。
「そうか..。わかった、そうしよう」
儂がそう言うと、キムの後ろ姿にやっと肩の荷が下りたような雰囲気が漂った。この雰囲気から察すると、どうやらまたキムのために一肌ぬがねばなるまいと覚悟した。
「この車は、家内の車なんです。ようやく月賦が終わったところなんです」
キムがふいにそう言った。(爺)
これは メッセージ 1 (may7idaho さん)への返信です.