「ロシアの旅」(14) 髪留め
投稿者: k_g_y_007_naoko 投稿日時: 2009/02/08 22:07 投稿番号: [48969 / 73791]
「ロシアの旅」(14)
髪留め
腕輪がとても気に入ってしまいましたが、金属でできていて高そうです。こんなのを買ったら爺に何て言われるかわかりません。母へのおみやげにしては、若すぎます。それにお金は、爺からもらったお札の他には、母からもらった2万円と貯金から下ろしたわずかばかりのお小遣いしかありません。両替もしておりません。だから陳列してある安そうなヘアピンの中から可愛いのを手にとってみました。
私のこの様子をじっと見ている男の視線を感じました。男は、やおら後の棚から何かを取ると、店の裏戸を開けて出てきました。手には大きなサイズの美しくキラキラ輝く髪留めとくしを持っています。そして、私に後を向くようにといったジェスチャーをしました。私が後を向くと、今朝シャワーした髪を無造作に束ねていたゴムバンドをはずして私に手渡します。そして長く垂れ下がった私の髪をくしけずりはじめました。とてもやさしい手つきです。イワノフは、そんな私の横顔をジッと見つめております。
人々が私たちの周りに集まりはじめました。ひととおりくしけずると、男は私の髪を後にまとめ上げ、髪留めで止めています。止め終わると、今度は手鏡を二つ持ってきて、仕上がりを私に見せてくれました。「あっ!」と思うほど、まるで日舞の発表会に出るため美容院で結ってもらったような髪型です。髪留めが黒髪にキラキラ映えています。男の手が私のうなじに軽く触れるのがわかりました。
「ハラショー!」
男はそう叫ぶと、またイワノフと話し始めました。
「君の首筋がとても美しいと言ってるんだよ」
イワノフが説明してくれました。周りの人も一斉に私を見ています。たぶん、このとき私の首筋は、恥ずかしさで赤く染まっていたのだと思います。男は、そんな私をしげしげと眺めてから、それまで私が捨てようと思って手に握っていたトマトのヘタを取ると、またニッと笑って店の中へ入って行きました。店には、4、5人のお客さんが集まっていました。
イワノフがお札を出して男に渡そうとすると、男は両手で制止するような素振りで何か言っています。ロマノフも何か言いながらお札を受け取れとばかりにしきりに出しています。何度かやりとりした後、男はしぶしぶイワノフが差し出すお札を受け取って、今度は小さなお札を何枚もイワノフに渡しました。
「いくらですか?」
私がイワノフにそう聞くと、
「プラスチックだから高くないのさ」
そう言うだけで、値段をいいません。
「彼が半額にしてくれた。だからこれは僕と彼からのプレゼントさ」
男はまた「ハラショー」と言ってニッと笑っています。私は男にペコリとおじぎをして、店から離れました。
「ありがとう、イワノフ」
と言うと、彼は照れくさそうに、
「よろこんでくれてありがとう。君は本当にきれいだよ」
と言って、しきりに照れ笑いを浮かべております。
「彼の本職は、画家さ。芸術学部の先輩なんだ」
「ふ〜ん」
私は、芸術学部を出て警察官になっている彼を不思議に思っていると、
「僕には、才能がないんだよ」
そう言って彼は笑いました。
「あの耳飾りもリングも彼が造ったものさ、そう言っていた...」
「高いんでしょ?」
彼は少し考え込んでから、
「安くはないね、きっと...」
そのとき、彼を呼ぶ声がしました。声の方を見ると、制服の警察官が2人、私たちを手招きしています。イワノフは、私にこの辺にいるようにと言うと、彼らの方へと走って行きました。
<では、ごめんくださいまし。後日に続きます>
直子
腕輪がとても気に入ってしまいましたが、金属でできていて高そうです。こんなのを買ったら爺に何て言われるかわかりません。母へのおみやげにしては、若すぎます。それにお金は、爺からもらったお札の他には、母からもらった2万円と貯金から下ろしたわずかばかりのお小遣いしかありません。両替もしておりません。だから陳列してある安そうなヘアピンの中から可愛いのを手にとってみました。
私のこの様子をじっと見ている男の視線を感じました。男は、やおら後の棚から何かを取ると、店の裏戸を開けて出てきました。手には大きなサイズの美しくキラキラ輝く髪留めとくしを持っています。そして、私に後を向くようにといったジェスチャーをしました。私が後を向くと、今朝シャワーした髪を無造作に束ねていたゴムバンドをはずして私に手渡します。そして長く垂れ下がった私の髪をくしけずりはじめました。とてもやさしい手つきです。イワノフは、そんな私の横顔をジッと見つめております。
人々が私たちの周りに集まりはじめました。ひととおりくしけずると、男は私の髪を後にまとめ上げ、髪留めで止めています。止め終わると、今度は手鏡を二つ持ってきて、仕上がりを私に見せてくれました。「あっ!」と思うほど、まるで日舞の発表会に出るため美容院で結ってもらったような髪型です。髪留めが黒髪にキラキラ映えています。男の手が私のうなじに軽く触れるのがわかりました。
「ハラショー!」
男はそう叫ぶと、またイワノフと話し始めました。
「君の首筋がとても美しいと言ってるんだよ」
イワノフが説明してくれました。周りの人も一斉に私を見ています。たぶん、このとき私の首筋は、恥ずかしさで赤く染まっていたのだと思います。男は、そんな私をしげしげと眺めてから、それまで私が捨てようと思って手に握っていたトマトのヘタを取ると、またニッと笑って店の中へ入って行きました。店には、4、5人のお客さんが集まっていました。
イワノフがお札を出して男に渡そうとすると、男は両手で制止するような素振りで何か言っています。ロマノフも何か言いながらお札を受け取れとばかりにしきりに出しています。何度かやりとりした後、男はしぶしぶイワノフが差し出すお札を受け取って、今度は小さなお札を何枚もイワノフに渡しました。
「いくらですか?」
私がイワノフにそう聞くと、
「プラスチックだから高くないのさ」
そう言うだけで、値段をいいません。
「彼が半額にしてくれた。だからこれは僕と彼からのプレゼントさ」
男はまた「ハラショー」と言ってニッと笑っています。私は男にペコリとおじぎをして、店から離れました。
「ありがとう、イワノフ」
と言うと、彼は照れくさそうに、
「よろこんでくれてありがとう。君は本当にきれいだよ」
と言って、しきりに照れ笑いを浮かべております。
「彼の本職は、画家さ。芸術学部の先輩なんだ」
「ふ〜ん」
私は、芸術学部を出て警察官になっている彼を不思議に思っていると、
「僕には、才能がないんだよ」
そう言って彼は笑いました。
「あの耳飾りもリングも彼が造ったものさ、そう言っていた...」
「高いんでしょ?」
彼は少し考え込んでから、
「安くはないね、きっと...」
そのとき、彼を呼ぶ声がしました。声の方を見ると、制服の警察官が2人、私たちを手招きしています。イワノフは、私にこの辺にいるようにと言うと、彼らの方へと走って行きました。
<では、ごめんくださいまし。後日に続きます>
直子
これは メッセージ 1 (may7idaho さん)への返信です.