「ロシアの旅」(13) 黒い歯の男
投稿者: k_g_y_007_naoko 投稿日時: 2009/02/08 21:59 投稿番号: [48967 / 73791]
「ロシアの旅」(13)
黒い歯の男
トマトを食べながら、お店を覗いて歩きました。熟したトマトの中身がこぼれ落ちそうになって、おもわずもう一方の手のひらで受け止め、口の中に入れたのですが、「あっ、みっともないことしちゃった」と思って、横を歩いている彼を上目使いに見上げると、彼は私のこの仕草をしっかりと見ておりました。
「歩きながら食べるからだよ」
「ごめんなさい...」
それでも彼は、やさしそうな笑みを浮かべています。
少し行くと、板張りの小さなスタンドにアクセサリーをところ狭しと並べているお店がありました。上からも様々なアクセサリーを鈴なりに吊してあります。中は、人が1人やっと入れるくらいの広さで、髭をぼうぼうにはやし、茶の長い髪をしっぽのように後に束ねた中年の男が窮屈そうに座っておりました。
トマトを食べながらお店を覗き込んでいる私と目が合い、男はニッと笑って立ち上がりましたが、思わず「あっ」と叫びそうになりました。なんと男の上の前歯の真ん中と右半分が真っ黒なのです。白い歯は片側に数本しかなく、他は黒く光るステンレスのような歯でした。そして耳、首、胸、手首、腰など、身体中いたるところにお店に陳列してあるのと同じような装飾品をまとっています。
男はロシア語で話しかけてきましたが、たぶん「いらっしゃい」とか、「買っていきなよ」とか言っているのかしらと思って、「ロシア語はわかりません」と英語で言っても、かまわず陳列してあるアクセサリーの一つを手にとって私にすすめてきました。
少し先を歩いていた彼は、アクセサリーの店で立ち止まっている私に気付いたらしく戻って来て、彼も店の中をのぞき込みました。そして突然、彼はまるで旧友にでも会ったかのように懐かしそうな声で男と話し始めました。そして、しきりに握手しています。ぼうぼうとした髭でよく分からなかったのですが、中年に見えた男は思っていたよりも若そうです。
「彼は僕の先輩さ。二、三年ぶりで会った。君が新しいガールフレンドかって聞くから、日本から来た高校生、今案内してるところさ、って説明しているところ...」
彼は、話しの途中で照れくさそうにそう説明すると、また男と話しています。男も話しの途中途中で私をチラッと見ては、あの黒い歯を見せてニッと笑っています。
やがて男は、おもむろに後の棚から何か取り出すと私に手渡しました。イヤリングでした。色とりどりに輝き、とてもきれいで可愛いのですが、ピアスでした。私はピアスをしていませんから、耳たぶを指でつまんで男に見せました。すると男は手で耳に穴を開ける仕草をして、またニッと笑います。
「私、まだ高校生だから...」
というと、男は怪訝な顔をしました。後で分かったのですが、特に中央アジアでは小さな女の子でもピアスをしています。日本のほとんどの中学・高校では、女の子のピアスはもちろん、リボンや髪飾りですら厳禁です。男は、今度は首飾りと腕輪を出してきました。どうやらピアスと3点セットのようです。試しに腕輪をはめてみましたが、とてもきれいで、眺めていますと、男はスタンドの中から手をのばし、真顔でピアスを私の耳にかざしてみたり、ネックレスあててみたりして、彼にロシア語で何か言ってます。
「君によく似合うって、その黒髪とジーンズによく似合うって、そう言ってるよ」
と、彼が通訳してくれました。
<続きます>
直子
トマトを食べながら、お店を覗いて歩きました。熟したトマトの中身がこぼれ落ちそうになって、おもわずもう一方の手のひらで受け止め、口の中に入れたのですが、「あっ、みっともないことしちゃった」と思って、横を歩いている彼を上目使いに見上げると、彼は私のこの仕草をしっかりと見ておりました。
「歩きながら食べるからだよ」
「ごめんなさい...」
それでも彼は、やさしそうな笑みを浮かべています。
少し行くと、板張りの小さなスタンドにアクセサリーをところ狭しと並べているお店がありました。上からも様々なアクセサリーを鈴なりに吊してあります。中は、人が1人やっと入れるくらいの広さで、髭をぼうぼうにはやし、茶の長い髪をしっぽのように後に束ねた中年の男が窮屈そうに座っておりました。
トマトを食べながらお店を覗き込んでいる私と目が合い、男はニッと笑って立ち上がりましたが、思わず「あっ」と叫びそうになりました。なんと男の上の前歯の真ん中と右半分が真っ黒なのです。白い歯は片側に数本しかなく、他は黒く光るステンレスのような歯でした。そして耳、首、胸、手首、腰など、身体中いたるところにお店に陳列してあるのと同じような装飾品をまとっています。
男はロシア語で話しかけてきましたが、たぶん「いらっしゃい」とか、「買っていきなよ」とか言っているのかしらと思って、「ロシア語はわかりません」と英語で言っても、かまわず陳列してあるアクセサリーの一つを手にとって私にすすめてきました。
少し先を歩いていた彼は、アクセサリーの店で立ち止まっている私に気付いたらしく戻って来て、彼も店の中をのぞき込みました。そして突然、彼はまるで旧友にでも会ったかのように懐かしそうな声で男と話し始めました。そして、しきりに握手しています。ぼうぼうとした髭でよく分からなかったのですが、中年に見えた男は思っていたよりも若そうです。
「彼は僕の先輩さ。二、三年ぶりで会った。君が新しいガールフレンドかって聞くから、日本から来た高校生、今案内してるところさ、って説明しているところ...」
彼は、話しの途中で照れくさそうにそう説明すると、また男と話しています。男も話しの途中途中で私をチラッと見ては、あの黒い歯を見せてニッと笑っています。
やがて男は、おもむろに後の棚から何か取り出すと私に手渡しました。イヤリングでした。色とりどりに輝き、とてもきれいで可愛いのですが、ピアスでした。私はピアスをしていませんから、耳たぶを指でつまんで男に見せました。すると男は手で耳に穴を開ける仕草をして、またニッと笑います。
「私、まだ高校生だから...」
というと、男は怪訝な顔をしました。後で分かったのですが、特に中央アジアでは小さな女の子でもピアスをしています。日本のほとんどの中学・高校では、女の子のピアスはもちろん、リボンや髪飾りですら厳禁です。男は、今度は首飾りと腕輪を出してきました。どうやらピアスと3点セットのようです。試しに腕輪をはめてみましたが、とてもきれいで、眺めていますと、男はスタンドの中から手をのばし、真顔でピアスを私の耳にかざしてみたり、ネックレスあててみたりして、彼にロシア語で何か言ってます。
「君によく似合うって、その黒髪とジーンズによく似合うって、そう言ってるよ」
と、彼が通訳してくれました。
<続きます>
直子
これは メッセージ 1 (may7idaho さん)への返信です.