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S54.09.06 第一小法廷判決 主文

投稿者: T_Ohtaguro 投稿日時: 2005/12/15 22:25 投稿番号: [13760 / 17759]
主      文

  上告人の請求中、
  姫路簡易裁判所が
  同裁判所昭和四九年(ロ)第八九七号支払命令申立事件
  についてした仮執行宣言付支払命令のうち
  金一五〇万円及びこれに対する昭和四九年七月三一日から支払ずみまで
  年六分の割合による金員の支払を命じた部分の認可を求める部分につき、
  原判決を破棄し、右部分につき本件を大阪高等裁判所に差し戻す。


理      由

  上告代理人辻武夫の上告理由について
  本件において被上告人が抗弁として主張するところは、
  被上告人は、
  訴外株式会社近畿工機から同会社に対する一五〇万円の売掛代金の支払方法として振出を受けた
  本件手形の金額が誤つて一五〇〇万円と表示されていたのにこのことに気づかず、
  これを金額一五〇万円の手形であると誤信して訴外Aに裏書したもので、
  右裏書は錯誤に基づくものというべく、
  上告人は、この事実を知りながら更に右訴外人から裏書を受けた悪意の取得者であるから、
  被上告人は上告人に対し、右裏書の錯誤による無効を主張することができる、
  というのである。
  そして、原審は、被上告人の右主張のとおりの事実を認定したうえ、
  その抗弁を採用し、本件手形金一五〇〇万円及びこれに対する昭和四九年七月三一日から支払ずみまで
  年六分の割合による遅延損害金の支払を求める上告人の請求をすべて排斥している。

  ところで、手形の裏書は、
  裏書人が手形であることを認識してその裏書人欄に署名又は記名捺印した以上、
  裏書としては有効に成立するのであつて、
  裏書人は、錯誤その他の事情によつて手形債務負担の具体的な意思がなかつた場合でも、
  手形の記載内容に応じた償還義務の負担を免れることはできないが、
  右手形債務負担の意思がないことを知つて手形を取得した悪意の取得者に対する関係においては、
  裏書人は人的抗弁として償還義務の履行を拒むことができるものと解するのが相当であり、
  被上告人の前記主張も、右のような趣旨に帰着するものと解される。
  そこで、被上告人は、錯誤によつて手形債務負担の意思がなかつたことを理由にして
  本件手形金全部の償還義務の履行を拒むことができるかどうかであるが、
  前記のように、
  被上告人が金額一五〇〇万円の本件手形を金額一五〇万円の手形と誤信して裏書したものであるとすれば、
  被上告人には、
  本件手形金のうち一五〇万円を超える部分については手形債務負担の意思がなかつたとしても、
  一五〇万円以下の部分については必ずしも手形債務負担の意思がなかつたとはいえず、
  しかも、本来金銭債務はその性質上可分なものであるから、
  少なくとも裏書に伴う債務負担に関する限り、
  本件手形の裏書についての被上告人の錯誤は、
  本件手形金のうち一五〇万円を超える部分についてのみ存し、
  その余の部分については錯誤はなかつたものと解する余地があり、
  そうとすれば、
  特段の事情のない限り、
  被上告人が悪意の取得者に対する関係で錯誤を理由にして
  本件手形金の償還義務の履行を拒むことができるのは、
  本件手形金のうち一五〇万円を超える部分についてだけであつて、
  その全部についてではないものといわなければならない
  (手形の一部裏書を禁止した手形法一二条二項の規定は、上記の解釈を妨げるものではない。)。
  しかるに、
  原審は、前記のように、
  被上告人は金額一五〇〇万円の本件手形を金額一五〇万円の手形と誤信して裏書をしたもので、
  上告人は右裏書が錯誤に基づくことを知つて更に裏書を受けた悪意の取得者である、
  との事実を認定したのみで、
  直ちに、被上告人は、本件手形の裏書全部が錯誤によつて無効であることを上告人に対して主張し、
  本件手形金の全部について償還義務の履行を拒むことができるものと判断しているのであつて、
  右判断には、手形行為の錯誤に関する法律の解釈適用を誤り、
  ひいて審理不尽、理由不備の違法があるものというべく、
  右違法が、原判決中、
  姫路簡易裁判所が同裁判所昭和四九年(ロ)第八九七号支払命令申立事件
  についてした仮執行宣言付支払命令のうち
  一五〇万円及びこれに対する昭和四九年七月三一日から支払ずみまで年六分の割合による金員の支払
  を命じた部分をも取り消して右部分の上告人の請求を棄却した
  第一審判決を維持した部分に影響を及ぼすことが明らかであるから、
  論旨は理由があり、原判決は右部分につき破棄を免れない。

  よつて、更に審理を尽くさせるため、右部分につき本件を原審に差し
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