何故、嫌いな日本人に成り済ますのか?

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西郷と海舟

投稿者: rie2377 投稿日時: 2010/11/06 07:30 投稿番号: [5773 / 6355]
今回は久し振りに幕末物を

         西郷と海舟

江戸総攻撃を翌日に控えた、慶応四年三月十四日
海舟は単身、西郷のいる屯所へ乗り込んで行った

それは、江戸を戦火から救う最後の機会であり
一途の望みを賭けたぎりぎりの交渉であった

海舟と西郷は面識があり、互いに敬意を抱き
西郷さん、勝先生と呼び合っていた

まず、海舟が口火を切る

西郷さん、明日の江戸総攻撃は中止して欲しい
万一、江戸が攻撃されれば百万の民が塗炭の
苦しみを味わう事になる

それは君の本意ではないはずだ、頼む、西郷さん

勝先生、御言葉ですが江戸には新政府に
異を唱える幕府残党が、大挙して
集結していると聞き及んでおります

これらを一掃せずして、新政府は有り得ませぬ

西郷さん、それは私が責任を持って押さえる
どうか、この私を信用して欲しい

西郷は少し間を置き、条件を提示する

それでは、次なる三条は是か否か

一、直ちに江戸城を引き渡す事
二、武器弾薬を、新政府に引き渡す事
三、責任者を厳重に処罰する事

海舟は即答出来なかった、第一条はともかく
あとの二条は、江戸城に詰める強硬派が
納得するはずもなかった

暫く思案の後(のち)、海舟は口を開く

西郷さん、一条は了承した、但しあとの二条は
暫しの猶予を願いたい、時を掛けて必ず
成し遂げる

海舟は、渾身の力を込めて説得する

我等、今は互いに争って時ではない
江戸総攻撃となれば、火の粉は諸国に飛び火し
日本は応仁の乱さながらの大乱となるは必定

これを列強が見逃す筈がない、一挙に攻め寄せ
日本は彼等の軍門に下る事になる
西郷さん、これを救えるのは君しかいない

分かってくれ、西郷さん

今度は西郷が沈黙した、一刻以上無言の
ままであった   やがて意を決し海舟の
説得に応じる

先生、分かり申した、明日の総攻撃は
中止と致しましょう

そうか、分かってくれたか
よく決断してくれた

これで日本も救われた

海舟は西郷の手を握り、何時までも放そうと
しなかった

瀬戸際で江戸総攻撃は回避され、明治新政府は
この後散発的な戦いを除いて、ほぼ無血革命に
成功するのである

西郷は政府要人となったが、のちに野に下り
西南戦争で命を絶った、朝敵として汚名を
着せられた西郷の名誉回復に尽力したのが
海舟であった

海舟の働きもあって明治三十一年、上野に
西郷の銅像が立てられた

一方海舟は七十七歳の天寿を全うし、晩年
愛してやまなかった洗足池のほとりで
静かに眠っている

その傍らに碑が立てられ、碑文の中で海舟は
西郷に付いてこう語っている

君、十万の兵を率い東下す、江戸騒然となり
民穏やか成らず、我これを憂い君と談判に及ぶ

君よく我が意を容れ、江戸百万の民を
塗炭の苦しみより救えり

ああ君よ、よく我を知れり、而して君を知る
亦、我に若くは無し

君ほど私を理解している者はいない、そして私ほど
君を理解している者もいない

西郷と海舟、互いに立場の違いを越え
熱い絆で結ばれていたと言えそうである
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